ちょっと前に『『源平討魔伝』の隠れた開発者メッセージ』のエントリーで、『源平討魔伝』に隠されたエンディングメッセージがあるというお話をしました。
今日はそれの最後で予告した、もうひとつの作品。それはトレジャーのサターン最後の名作シューティング、『レイディアントシルバーガン』。
名作シューティング『レイディアントシルバーガン』
この作品、シューティングの内容よりも「サターンのプレミアソフト」として有名になってしまっています。しかしそれはあまりの出来に対して需要が少ないからというのもあるでしょう。
このゲームのすばらしさは7つの武器、コンボパワーアップ要素、パターンなどシューティングとしてのすばらしさはもちろんですが、その演出も大変素晴らしいものとなっています。
それではその演出のすばらしさを個別に見てゆきましょう。
崎元仁氏の素晴らしい音楽
音楽は崎元仁さんが担当され、ゲームの魅力を殺すことなく何倍にも増大しています。それに、いわゆる無駄な曲が一切ないのですよ。これはすごい。
しかも、その使われ方のタイミングも絶妙。ディレクターの井内ひろし氏は『斑鳩』のディレクターでもあるのですが、このゲームでも同じように音楽にぴったりと合わせた絶妙な演出がなされています。
■参考
ペンタ(主人公達の母艦と同型機)が攻撃を仕掛けてきたときにはじまる『-PENTA -第5部隊-』の盛り上がりっぷりは最高です。
個人的には崎元さんの曲の中でも1、2を争うくらい好きです。ちなみに『-EVASION -回避-』はよくテレビのBGMでも使われるほど。
音楽以外の演出もすごい
音楽以外でも演出がすごい。シューティングでは会話シーンなどのストーリーを途中で入れるとテンポを悪くしますが、それが自然な形で入れられています(スキップも可能ですが)。
しかも、ストーリーがまた痺れるほどすごい(なんかすごいの連発になってるけど)。さらに、道中ボス毎にメッセージが表示されるのですが、これが遊び心を含ませたものとなっています。2面ラストではまるでワイヤーフレームのゲームみたいになる(母艦からレーダーで主人公の自機を見ているという設定)のですが、これがまた面白いし感心させられます。
さらにストーリーが想像を超えるすばらしいもの。特にSF系の話が好きな人間なら、関心させられることしきり。
ちなみにけっこうハードな話なので、キャラデザに合わないって声をたまに聞きますが、サターン時代あたりのトレジャーっていったらこの絵じゃないとしっくりこないのは私だけ?
このへんの素晴らしい演出については、以下のサイトさんで詳しいので、興味のある方は是非見てくださいませ。(※2015/12/25 リンク修正)
■Treasure Box : RADIANT SILVERGUN(レイディアントシルバーガン)(Fragments 内)
レイディアントシルバーガンのラストメッセージについて
はい、ではここからが本番。
このゲーム、(サターン版の)ラストステージにおいて、『斑鳩』でもおなじみ「石のような物体」というラスボスが出てきます(ちなみにラストステージはSTAGE1。これの意味はやってみればわかります)
このボス、『斑鳩』や一部のシューティング(「東方妖々夢」でもありましたね)でおなじみの、「一定時間攻撃できずに避け続け」が出てきます。(このゲームがたぶん元祖)
で、その際背後にメッセージが流れるのですが……
さきほどのページにてそれの詳細が書かれております。
読んでいただけるとわかると思いますが、これには、ディレクターである井内ひろし氏のメッセージがこめられています。
とはいっても、あまりに巧妙に演出をされているので、この文章を読まなければ裏にメッセージが隠されているとは見えませんよね。どう見ても人類の原罪みたいなのとしか。(まあおそらく誰も気づかなかったのは、『メタルブラック』が似たようなコンセプトでラスボスの演出をしていたからかも)
さて、隠された内容はゲーム業界に対してのこと。
「わたしのこと、愛してる?」
当時のゲーム市場は今になって思えば「この金を生む業界は我々の為にあるのだ」という人が跋扈していた時代でもあったように感じます(今もいないとは言いませんけどね)。そしてそんな状況でソフトの濫発が始まり、「この最悪の市場を見てみろ、これが自業自得の現状なんだよ」となってしまいました。実際この頃から、小中ソフトハウスの撤退というのが多くなっていたように感じます。そして売れるのは、開発力、広報力があるメーカーがほとんど……
そしてそんな業界に愛想をつかして去っていった人も。「ここには夢や希望なんてない…」。その人達には「ゲームそのものが楽しいと思っていた頃の感覚はなくなってしまった」のかもしれません。いや、好きだったのにそうせざるを得なくなってしまったとか。
そしてその楽しさがなくなってしまった感覚は、ユーザーにも伝わってゆきます。
そんなみんながゲームから離れてゆく状況で「これからは視野を広く、ライトユーザーを中心としたゲーム作りが必要なのだよ」。言われてましたね。「ライトユーザーを~」という言葉が幾度となく。だけどそれが何なのかはほとんどの人が理解しないまま。
そして「我々はもう一度考え直すべきです。皆さんにもわかっているはずだ」。
この頃、それまで上り調子だったゲーム業界の衰退は、ここから数年後に始まり、ソフト累計売り上げなどでだんだんと現れてきます。
付け加えれば当時はサターンは末期、このソフトもドリキャスへの移転過程で制作され(まあ一応アーケードが先ですが、セガST-V基盤でってっことで、サターン移植前提と言えたでしょう)、そしてサターン市場は多くのソフトが開発を中止し、終了同然でした。また、シューティングは冬の時代と言われ売り上げがゲーセン、家庭用とも下がり調子といった時期だったことを付け加えておきます。
一部では、このメッセージにあるように、ゲームに対する袋小路のようなものが感覚的に予測されていたようにも思えるのは、今だから言えることなのでしょうか……
「わたしのこと、愛してる?」
このセリフ、誰に向けられたものなのでしょうか……おそらくはすべての人に……
◇当ブログ内関連エントリー
2015/12/25追記
長年サターンのプレミアソフトでプレイも入手も困難でしたが、今はXBox Liveにリメイクして存在してます。
難しいですが、家庭用なので難易度もどうにかなりますし、ともかくXBox360をお持ちの方はプレイすることを強くオススメ。