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昔、GD-NET(ESP)というものに寄せていた期待

※2014/7/2加筆修正。

 

判官贔屓と言われるかもしれませんが、私は小さいソフトハウスが持てる技術を駆使して作り上げた職人風のゲームが大好きです。もちろん面白いことが大前提ですが。(別に大メーカーが嫌いなわけでもないので念のため)

 

さて、そんな私が約10年前、当時買っていた「セガサターンマガジン」を見ているとある記事が載っていました。それは「GD-NET」というものを結成し、小さい規模のソフトハウスが集まって技術交換を行うというもの。

そして結成の理由も書かれており、それによると次世代機(当時で言えばサターンと初代プレステ)になり小さいメーカーはアイディアや技術はあってもそれを生かす環境がコスト的、人材的に追いつかなくなっている。だからそれらのメーカーが手を組み、資金調達、販売面は専門の1社に委託し、ソフトメーカーはゲーム制作だけに集中できるようにする、という主旨のものでした。

■【参考】GD-NET(クインテット公式ページ内) (リンク切れ)

 

スーファミ、メガドラ時代の優良ソフトハウスが結集

私はこれを見て、非常に期待させられました。というのは参加ソフトハウスがあまりにもスーファミ時代に私の好きなソフトハウスばかりだったからです。
例を挙げると

 ・ゲームアーツ……『シルフィード』『ルナ』シリーズ、『ゆみみみっくす』等
・クインテット……『アクトレイザー』『ガイア幻想記』『天地創造』(エニックス販売)など
・トレジャー……『ガーディアンヒーローズ』『幽遊白書』など
・アルファシステム……『リンダキューブ』等のプログラム
・スティング……『トレジャーハンターG』(スクウェアから)
・ネバーランドカンパニー……『エストポリス伝記』シリーズ、『カオスシード~風水回廊記』(タイトーから)

 

といった、スーファミ、メガドラ時代に下請けなどで良作を生み出してきたソフトハウスが集っていたからです。

そのうちGD-NETの販売部門を引き受ける会社ESPが設立され、当時のセガサターンマガジンでは、定期的にこれの特集をするくらい、ユーザーの期待は盛り上がっていました。

そして、ESPを販売元としてゲームアーツで開発された『グランディア』は、50万本以上を売り上げます。
この後もトレジャーからは『シルエットミラージュ』や『レイディアントシルバーガン』といった自社ものはESP販売になっていましたし、スティングから『バロック』、クインテットは『コードR』、ネバーランドカンパニーも『仙窟活龍大戦カオスシード』をそれぞれESP販売でサターンからリリースしました。

ちなみにここで『スレイヤーズろいやる』(開発はオニオンエッグ)、『魔法学園ルナ』(開発はスタジオアレックス等)といった、角川書店名義となっているソフトもESPから発売されます。(『ルナ2』は角川書店とゲームアーツの連名)

 

開発費の高騰と大メーカー主導時代

しかし、時代は『グランディア』の発売前からPS勢が有利となっており、サターン市場はだんだんと縮小し始めます。
実はESPの有力出資元はセガの親会社であるCSKであったためか、ほとんどのリリースはサターンソフトとして行われていました。そして『グランディア』こそはサターンのサードパーティーでは異例の一押しRPGだけあって成功しましたが、それ以降があまり続かないこととなってしまいます。

とはいってもこの頃のサターンのソフト全体(除く『YU-NO』などのギャルゲー)に言えることですが。
参考までに『サターンのゲームは世界いちぃぃぃ!』(ソフトバンク刊)のデータでは、『仙窟活龍大戦カオスシード』の売り上げは、1万9963本だったようです。そりゃ初回版にプレミアもつきますね。(まあ数回の延期と、それによってグランディアの翌月になったというハプニングはありますが)

 

「我々はもう一度、考え直すべきです。皆さんにもわかっているはずだ。」

そして、『レイディアントシルバーガン』が発売される頃、セガはドリキャスを発表し、サターン市場の収束に入ります。
その時発売された『レイディアントシルバーガン』の帯には、作品中に流れる一つの言葉が引用されていました。

 

「我々はもう一度、考え直すべきです。皆さんにもわかっているはずだ。」

 

これはそんなセガハード、というかゲーム業界の状況に対する、隠れたメッセージとも言われています。急なハード移行は、それまでそのハードに対して蓄えてきた技術を一度0にすることなのですから、小さいソフトハウスの負担はいかばかりだったでしょうか。
さて、セガサターンでのリリースを終えたESPのソフトは、その後、ドリキャスだけでなくPSからも『グランディア』『バロック』のPS版を皮切りにリリースが始まります。

 

ESP下火に

しかしこの頃、CSKでは創業者の大川功氏の死去に伴い、経営状態の芳しくなかったセガをCSK本体から分離する動きとなります。
出資者のひとつを失ったESP、この頃から正直存在がよくわからなくなります。
たしかにこの時期からもPS2では『暴れん坊プリンセス』『はじめの一歩』、ドリキャスでは名作と言われる『ロードス島戦記』などが発売されます。しかし昔と異なり、制作メーカーとの連名ではなく、ESP単独、もしくは角川書店かバンダイのみの表記となります。(例外は『斑鳩』くらいでしょうか)

手元にはドリキャス『ロードス島戦記 邪神降臨』のチラシがあるのですが、(c)にも制作元であるネバーランドカンパニーの名前は載っていません。せっかく良作と言われているのに……
データが余りにも少ないので以下はあくまで予想でしかないのですが、おそらく大口出資者を失ったために、ソフトハウスへの資金提供が不可能となり、大手パブリッシャー、というか主に角川書店の開発下請け、というかソフト開発の仲介役的なものになってしまったのではないでしょうか。実際、次に出る『餓狼伝 Breakblow Fist or Twist』も、発売はD3パブリッシャーですし。

 

そして、その後初期のソフトハウスは、ESP経由ではなく他の大手(スクエニ、セガなど)から連名、もしくは名前の出ない下請け出すことが多くなり、『グランディア』も3作目以降はスクエニ(当時のエニックス)から出ることとなりました。そして現在に至ります。
最初の志とはかなり違った方向になってしまったようなESP。残念ですが、しかし、21世紀に入ってからのゲームが売れない時代を、小さいソフトハウスが生きていくためには仕方のなかったことかもしれません。おそらく見えないところで金がなくて潰れたソフトハウスは、山のようにあるのですから。
それに、親元のゲームアーツ自体も、現在はガンホー・オンライン・エンターテイメントの連結子会社となっています。

 

※2014/7/2追記

現在、トレジャーはSteamなどにも配信したりして活動中。アルファシステムも普通に活動中。スティングも『ユグドラ・ユニオン』シリーズなどの開発をして現役。ゲームアーツは上記のようにガンホー子会社として活動中。

ですがクインテットはHPも消滅し、行方がわからなくなっています。断片的な情報によると、2012年くらいにはすでに倒産してしまったという話。そして値等ネバーランドカンパニーは性器式に楽年11月に活動停止を公表。破産手続きに入りました。

ネバーランドカンパニーが本日付けで全事業を停止。近日中に破産手続き開始の申し立てを行う予定であることが明らかに – 4Gamer.net

 

 

ゲーム史に存在した小ソフトハウスたちの試みとして

さて、こんなことでかつてGD-NETから始まったESPというものの歴史をざっと見てきました。

残念ながら、大成することは出来なかったものの、志は注目するに値するのではないでしょうか。

 

 

思えば、小さいソフトハウスの連合体というものは、ハードメーカーの「セカンドパーティー」というものによく似ているかもしれません。ただし、ハードに縛られると、ソフトメーカーの立場は弱くなることがあります。それから抜け出そうとしたのがGD-NET、そしてESPだったのかもしれません。(まあセガのセカンドパーティーに見えなくもないですが)

 

ただ現在、ハードメーカーと大手ソフトメーカーが力を持っている現状で、小さなソフトハウスの影響力は小さくなってゆく一方です。このような小さいけど面白いソフトを出せる実力のあるメーカーが力関係に流されないでゲームを作れれば、現在のゲーム業界に必要な、新機軸の面白いゲームが出てくる可能性もあるのかも、と思うのですけどね。

 

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◇その他参考にさせていただいたもの

『Somewhere in Time』さんScinario B 「DOG」と「ESP」より

http://review-site.net/scenario/

 

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