日本ゲーム市場の歴史の中で、外資系のメーカーが成功しているかといえば、殆どの場合NOでしょう。その原因は何か。多くの人がその理由として思いつくのは、その外資系メーカーがリリースするゲームが日本市場に合わないということではないかと。つまり、「洋ゲー」と呼ばれるものをリリースしたからといって、それは日本市場ではほとんど評価されないという感じ。
この指摘はたしかに当たっていまして、それこそファミコン、スーファミの時代からPS、SSを経て洋ゲーというものは大量にリリースされてきましたが、ごく一部のマニア以外はだいたい話題になることなく消えてゆきました(広告費が少ないとかも原因にあるでしょうが)。
ちなみに、海外では有名なソフトハウス外資系A社がA・JAPANという会社を作って日本で展開したけど、殆ど受けずに終わり、とある日に社員は全員集められて、「撤退するから今日で解雇」と言われたそうです。ゲーム業界でも外資系はシビアなようで。
さて、ここで最近のニュース。
さて、これを読んでどう思うか。いろいろ人によって言いたいことはあるでしょう。しかし、私は思います。「日本のゲームは世界一ではない」ではなく、「日本のゲームソフトメーカーは世界一ではない」となるのではないかと。作られるゲーム的、クリエイター的にではありません。それは主に資金的、経営的に。
現在、日本のゲーム会社は世界的に見れば、圧倒的な任天堂を除いて海外勢に規模で負けているというのはよく聞きます。特にアクティビジョンブリザード、エレクトロニックアーツは、スクウェアエニックスの2倍以上の売上高があるのです。
■参考:テクモ・コーエーは序の口、日本に押し寄せるゲーム業界の世界大再編 :IT-PLUS ※リンク切れ
これを見れば、日本のゲームソフトメーカーは世界一ではないというのは、わかるでしょう。そして、それ以外にも世界一ではない部分が存在します。
さらにもうひとつ。
■日本のゲームは世界一(島国大和のド畜生さん)
上のエントリーを読ませてもらうと、「なぜ、日本のゲーム業界は世界のリーダーではなくなってしまったのか」との問いにこう答えられています。
開発現場に金を落さないからです。
アメリカのゲーム業界は、体感で日本の2倍以上のギャラと言われている。
そもそもプロジェクトマネージャークラスは4倍で効かない。
実際のところはアメリカはプロジェクト制で、バンバン首切り可能な流動性の高い労働市場だから、一概にそれが良いとは言えない。
それでも単純にアメリカのビックプロジェクトと同じものを、日本の予算で作れ、というのは無理。というか、算数が出来てない。
大筋でそう思います。金というのはバカに出来ません。何もクリエイターの給料だけではなく(それも重要ですが)、制作に関わる人件費、広告費、その他諸々金があったほうが売れる要素は強まります。もちろん金があっても面白くなるとは限りませんが、金があるのとないのとでは、おもしろくなる確率はあったほうが上です。アイディアだって有能な人が多くいた方が様々ないいものが出ますし、デバッグだって1人でも有能な人が多くなった方が、多くのバグがとれて快適に遊べる可能性が上がりますし。この資金の差を見ないでを努力不足みたいに言うのは、体育会系根性論と大差ない気がします。
しかし、思うにこの資金力の差というのは、そのうち日本のゲームメーカーにのしかかってくるのではないでしょうか。それは主に人材的な面で。
昔、外資系の会社は日本で成功せず、撤退しています。しかし外資系はこのまま日本から手を引くか、というと、そうは思えません。しかし、さすがに「日本には洋ゲーは向かない」ということがわかったとは思うので、それをプッシュしてくるような戦略は練らないでしょう。しかし、日本のゲーム制作者を大量に囲い込む、もしくは有能なソフトハウスごと囲い込んで、そこで大量の資金によって日本にあったゲームを作らせるという可能性は、かなり否定できないのではないでしょうか。
理由はいくつもあります。それは日本で作られて日本でウケのよいソフトは、海外でも当たることが多いこと。
そしてもうひとつ、それを作った日本のクリエイターの待遇は、上記のように必ずしも良いとは言えないこと。つまり、外資系は日本に上陸し、そういった低額で雇われている有能な日本のクリエイターを高額で引き抜いて自社に入れるなり自分のとこ直属のソフトハウスにするなりしてしまうと。そうすれば、外資系メーカーでも、日本向けのゲームを作れることになります。近い未来、こうしてくる可能性は否定できません。それは日本のゲーム会社の待遇が悪ければその分だけ大きく。
いや、もうマイクロソフトは近年そういった動きを見せているといっていいでしょう。今はすごく成功しているとは言い難いですが、そのうちそれが根付いた時、どうなっているか……
ハードメーカーの場合もともと規模が大きく、ハードを持っているという強みもありますし、さらにご存じの方も多いように、自社直属のソフトハウス、所謂セカンドパーティーを大量に抱えていますから、それに対抗できる強みはあるかもしれません。しかし、サードパーティーは、それに真っ向から対抗しなければいけない可能性は高いのです。
ただ、これが本当にいけないことなのかとも。というのは、そのほうが結果的にクリエイターにとってはよいのではないかと。この前上のリンクのはてブコメントで、今回のようなことを書いたら「他の業界でも言えることですが、本邦資本で働いている日本人はみんな厳しい労働条件、もしくは海外の人たちというのと、海外資本で日本人がハッピーに働いている、どっちが良いかですね」というコールを頂いたのですが、まさしくその状況。
でも、思うのです。経済的なことはともかくとして、そこに日本人のアイディアがあれば、メーカー名なんてものは飾りではないかとも。海外で研究していた人も、ノーベル賞を受けると日本人の功績として言われるじゃないですか。なら、そっちのほうがいいのかもと。少なくとも、クリエイターを犠牲にするくらいであれば。
もちろん、日本のメーカーで活躍する日本人の作ったゲームが人気が出るのが、日本人としては嬉しいのですけどね。そうなってくれないかなあと思ったりする次第です。