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今、あえて『センチメンタルグラフティ』の長所を挙げる

ここ数日、何故かこのサイトで以下の記事のアクセス数が急に伸びました。

『センチメンタルグラフティ』って今考えると鬼畜ゲーだったよね
「空気を読まない中杜カズサ」のほうで、以下のエントリーを書きました。 要約すると、恋愛ストーリーは、主人公とメインヒロインが結ばれる話が大切なのと同時に、その恋愛にかかわってきた他の女性キャラをどう退場させるかが、後味の悪さを残さないかで重...
『センチメンタルグラフティ2』が目指したかったと思うもの
前回『センチメンタルグラフティ』って今考えると鬼畜ゲーだったよね』で『センチメンタルグラフティ』のゲームシステムにおける鬼畜っぷりに触れました。 そこの最後で触れた続編、『センチメンタルグラフティ2』について、今日は語ってみようと思います。

おそらくネット上で、『センチメンタルグラフティ20周年プロジェクト』というTwitterアカウントがいきなり登場したことによるものでしょう。

さて、この通り発売から20年が経過する『センチメンタルグラフティ』ですが、現在のネットではその当時のマイナスの面が多く書かれていますし、前述のこのブログの記事でもそのあたりをかなり書いています(もう10年前に書いたものだったので、今見ると、それちょっと違うって思うところもありますが、そのまま載せておきます。現在の見解は後述の文章にて)。

しかしそれを書いた10年前はまだポジティブな記憶も多かったのですが、今では記憶も薄れ、当時の評価としてネガティブな面だけが残ってしまっている感じがあります。なので、それらを踏まえつつも、この『センチメンタルグラフティ』の評価する面を書いてゆきたいと思います。

 

低評価の多くはビジネス上の問題からの起因

まず、以前(といってももう10年前)に書いた、『センチメンタルグラフティ』の伝説。主にマイナス面。

・発売前からの大幅なグッズ展開。
・『センチメンタルグラフティ ファーストウィンドウ』の異常な入荷率の低さによるプレミア化
・雑誌とのメディアミックス
・声優公募。
・『センチメンタルグラフティ ファーストウィンドウ』の回答数の少なさを見て多めに発注したら100%回答。必要以上の量が市場に(これについては、異論もあるでしょうが)。
・画面写真の背景が、実写加工。さらにキャラデザの甲斐氏の絵ではないもので、不安が走る。
・度重なる延期
・『暗黒舞踏』とも呼ばれる意味不明のOPムービー
・売れず&出荷数の多さから余りまくり。

まず、雑誌展開はメディアミックス展開として普通にありネガティブ要素ではありませんし、グッズ展開も少なくとも現代の展開から見ればビジネス上悪いこととは言えません。あと、声優は公募により素人で占められたと批判がありましたが、いきなり大舞台に上げられてしまった人なわけで、本人達が悪いということではなく、採用する側の問題であったと言えます(実際ここでの声優活動後、現在に至るまで活躍している人はいるわけで)。
これら多くの問題は、ゲーム制作から一歩離れた、ビジネス上の都合、手法から起因するものだったと言えます。

あの暗黒舞踏と揶揄される問題のOPムービーも、あれもセンスが当時としてもかなりどうかという問題はありました(その数ヶ月前に『サクラ大戦』が出ているのも)。ただ、当時のサターンのムービーを動かすスペックでは、かなり制約があったということも加味すべきかと思います。無理せず止め絵アニメで作っておけばよかっただろうになあとも思うのですが、当時ムービー神聖化の風潮もありましたし。

 

個々の素材自体は悪くなかった『センチメンタルグラフティ』

そしてゲームの内容ですが、これもゲーム中キャラ絵が「キャラクターイメージ」の甲斐智久氏の原画ではなかったり、背景が写真素材だったり、そして後味の悪いフることに遭遇してしまう鬼畜システムだったりする、というのはあります(あと全国移動をするものすごい体力の持ち主などのツッコミどころも)。

しかしながら、今思い返すと「実は個々の素材(パーツ)は当時のものとしてけっこうよいもの」なのです。
まず、キャラクターの絵に関しては、発売前以前のキャラクター展開が成功していたことから、非常に魅力があったというのは疑いの余地がないでしょう(ただ、裏ではかなりあったようですけども。キャラデザ甲斐氏のセンチメンタルグラフティ以前のオリジナル同人誌のキャラが勝手に流用されていたとかいろいろ。まあそのあたりは割愛)。

さらに鬼畜展開とは関係ない、キャラ個別のストーリー(ハッピーエンドに向かうもの)をとってみれば、これも決して悪いものではありません。大きな衝撃や感動はあまりないですが、少なくとも当時のギャルゲーとして、オーソドックスにまとまった良いシナリオくらいの印象は受けました(えみる語など、好みが大きく分かれるキャラはいたけども)。

さらに、実質的にこの作品シリーズのアニメ化となっている『センチメンタルジャーニー』のアニメが好評であったこと、そして『センチメンタルグラフティ』の展開自体も、この時点ではまだある程度人気が続いていたように記憶しています(CDかなりの枚数出てたし。アイマスシリーズ以外では、現在でもシリーズ最多かもしれない)。
実質的なこのシリーズの収束は2000年の『センチメンタルグラフティ2』、さらに『センチメンタルプレリュード』の大幅な開発の遅れによるもので、1発売後しばらくは十分盛り上がっていたと言えます。

すなわち、キャラクター、個別ルートというギャルゲーにおける根本の素材自体は、当時のものとしては結構評価出来るものだったと言えます。また、声優も素人と言われることはあれど、ユーザーの期待に見合うものが提供されたと言えるでしょう(実際声の批判は少ない)。

 

システムも発想自体はよかったので、練り上げてほしかった

さらに、ツッコミどころの多かった全国移動システムですが、これも「日本全土を舞台として、そこに住んでいるヒロインに会いに行く」という発想自体は決して悪いものではありません。ただ、それに無理にゲームシステムを合わせてしまったので、学生にしてバイトで全国を不眠不休で回る主人公という不自然な展開になってしまったと言えます。

もし、あれを最初からワンルート(ワンヒロイン)を最初から決め打ちにして、そこでの交流(ゲーム性を持たせたい&全国の素材を使いたいなら、全国を一緒に旅するなど)とかにしてしまえば、12股主人公との批判も、フる時の後味悪さもなく、かなりいい感じになったのではないかと自分的には思っています。

 

チューニング次第ではもっと面白くなっていたはず

自分としては、『センチメンタルグラフティ』の欠点の多くは、ビジネス的都合、すなわちフッズ展開や広報、もしくはしがらみによるものや、必要な素材(原画家の絵や背景)不足が大きいと思われます。

つまり、個々の素材を生かしつつ増強し(たとえば現在では当たり前の、複数原画分業など)、さらにシステムも上手い具合にチューニングすれば、かなりおもしろいものが出来たと思っています。
『センチメンタルグラフティ』は前述の通り『センチメンタルジャーニー』を通してその後2発売あたりまでけっこう人気が持ったのは、そういった「可能性への期待」が大きかったのではないかと思うのです。

もちろん歴史にIFはありませんし、可能性を言い出したら多くのソフトが名作になってしまいますが、やはり後で思う分にはそういう惜しいところが多かったと思います。

 

『センチメンタルグラフティ』はギャルゲーのお約束が生まれる前の作品

それに、忘れてはいけないのが、これが1998年の誕生ということ。この時代、「ギャルゲー」というジャンルはまだ黎明期であり、その大成者とも言える『ときめきメモリアル』が1994年とまだ4年前(しかも、口コミ拡散型だったので、実際の盛り上がりはもっと後)。『サクラ大戦』が1996年9月でつい数ヶ月前(実際は同時期の制作進行だったと思われる)という時期。
さらにエロゲ方面でその大成者となった『ToHeart』の登場が1997年(PS版は1999年)、Key系列では『Kanon』(1999年)どころか『ONE 輝く季節へ』でさえ、この作品の数ヶ月後です。
つまり、「『ギャルゲー』というもの自体がまだ黎明期で、今では当たり前とされる手法(お約束)でさえもその当時にはほとんど、もしくは全く存在しなかった」ということは留意しておくべきでしょう。

前述の通り、ムービーやシステムなど、かなりネタにされるところはありますが、それまでの前例がなかった状態から手探りでやっていた時期であったということを考えれば、そういうものだと納得も出来ます。
少なくとも完全に文法やシステムが整った上で作られた、それ以後のギャルゲーと比較し、それらが不安定だったと単純比較するのは不公平でしょう。

まあただ、制作体制がちゃんと整っていれば、当時としてももっといいモノは出来たのではないかとも思ってしまいますが。

 

20周年で何が出てくるのか

正直なところ、現在、コンシューマのギャルゲー市場はかなり縮小してしまい、エロゲーなどからの移植ではないオリジナルに関しては、輪をかけて小さな存在となっています。アルケミストなど、それ系を扱っていたメーカーもかなり潰れるなり停止するなりしてしまいましたし。

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そこで、いきなりの20周年で何か起きるとの報道。センチファンではなかった人でも、注目はしたくなるでしょう。

ゲームが作られるとは限りませんが、今の手法が確立され、スペックも整っているギャルゲーにおいて、当時のポテンシャルで、且つチューニングを施し、十分な体制で新しく作れば、どんなものが出来てくるのかという想像はしてしまいます。

 

余談

『センチメンタルグラフティ』の販促として、当時は全国に多数あったゲームソフトショップのうち、舞台となった12都市のソフトショップを応援店として、交流の場というか今で言う聖地的にしようという企画があったのですが、それについては10年後くらいまでは一部存在していたことが『幻の未発売ゲームを追え! : ~今明かされる発売中止の謎~』にありました。
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幻の未発売ゲームを追え! : ~今明かされる発売中止の謎~

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