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昔、ゲーム音楽コンポーザーはハード技術者にも近かったという話

今日は先日の予告に沿う形で「現在のゲーム業界におけるとある変化が、ゲーム音楽に影響を及ぼすのではないか」ということを書こうとしたのですが、その前の前提として書いておかなくてはいけないことがあると思ったので、そちらを先に。

とりあえずこのエントリーより先に書いた以下のふたつのエントリーと微妙に繋がるので、まだの方はそちらを読まれた方が理解しやすいかもしれません(このエントリーだけでも大丈夫ですが)。

古の音を今に生かしているゲーム音楽
ゲームの黎明期である1980年あたりでは、ゲーム音楽という概念自体がまだないに等しい時代でした。そこではゲームの音を専門に作る人がいるわけではなく、プログラマがそのハードで鳴らせる音を使って、音楽らしきものを作っていたようなことも数多くあっ...
曲がゲーム音楽として作られる際の音源以外の個性
前回は、現代における昔のゲーム音源を使用して個性を出す試みが行われていることを書きました。 でも、ゲーム音楽の個性は音源であり、他の個性はないのかというと、それはNOだと思います。というわけで今日はその話を。

 

ここ近年、ゲームメーカーのサウンドチームからは、大勢の人が独立しています。例えばタイトーのZUNTATAは、昔は20人以上のメンバーがいたみたいですが、今は4名程度みたいですし、他のメーカーでも縮小気味なのは同じようです。中小メーカーや制作会社の中には、すでにサウンドの担当者を持たないところもあるようです。

このように、ゲームのサウンド部門は近年縮小傾向にあることは否めません。しかしそれはたとえゲーム市場が不況ではなく、それなりの売り上げを保っていたとしても、サウンド部門は縮小に向かっていったのではないか、と思うのです(もしずっと右肩上がりだったら、もちろん話は違っていますが)。

 

では何故そう思うのかというのを、今と昔のゲーム音楽の違いから考えてみましょう。

昔のゲーム業界ではサウンド部門の人数が多くいたというのは、ZUNTATAに限ったことではないでしょう。少なくとも多くのメーカーでは、バンドが組めるくらいの人数はいた感じですし。しかしそれは景気が良く、ゲーム業界が好調だったことや、ソフトのリリース数が多かった以外にも理由があると思います。それは、ゲームコンポーザーの仕事は単純に音楽を作るというもの以外にもいろいろあったから。それはもちろん音楽以外の業務もあるでしょうが、ゲームの音楽を作るという作業自体も、今よりももっと複雑でハード寄りだったからとも言えます。

先日書いたように、90年代までは、ゲームの音楽はハードに依存していました。そこでゲーム音楽を作る人はただ(普通の曲の)作曲が出来る人が揃っているだけではゲームの曲は作れなかったでしょう。何故なら、ゲームのおんがくを作曲する場合、そのハードの特性を掴む必要があったと思われるので。つまり、そのハードで鳴らせる音を知り、それをふまえた曲作りをしなければいけなかったわけですね。時には曲のために、サウンドドライバを構築したりなど、ハード自体にも手を入れる必要があったでしょう。また、容量の問題から、音楽をそれにあわせて削ったなんて話も聞いたことがあります。

たしかに昔のゲームの曲数は今よりも少なかったかもしれませんが、今よりもかかる手間はかなり大きかったのではないでしょうか。それはどちらかというと、曲を作る前の段階で。

 

すなわち、ゲーム音楽のコンポーザーというのは、ある意味ハード技術者的な役目もあったのではないかと。実際、ゲームの発展期にはプログラマなど他の技術者(プログラマだけとか限らないのでちょっと修正)として入社したけど、そのままサウンド担当になったという方もかなり多いと聞きます(知る限りではめがてんさん、Yack.さん、SHADEさんあたりがそうだったはず)。

そしてそれ以外の仕事もあるので、必然的にサウンドチームは人数が多い必要があった思われます。しかし、その携わる人間が多いことが「ゲーム音楽」を発展させる要因となっていたのではないかと。

 

しかし近年、ゲーム音楽はハード性能が上がってゆき、外で作った音楽をそのまま取り込むようにできるようになってきました。そうなるとそれらサウンドチームがハードに携わる機会はなくなってきます(ちなみにDTMでも同じ事が言えるのではないでしょうか。昔はPC98で自分でいろいろハード的な方面を弄くっていた人が多かったけど、最近ではソフトがあれば特に弄らずに出来るという感じで)。

こうなると、会社が経営難で人員整理をする場合、内部で大勢のサウンド部門を持たなくても、必要なときに外注に頼めば、と考える経営者がいても不思議ではありません。曲を作るだけなら、外部にも頼める人がいっぱいいますから、わざわざ高い人件費をかけてまで、内部でかかえる必要はない、と考える経営者がいてもおかしくはありません。その結果、人員整理の中でまずサウンド部門が縮小されることになりやすいのではないかと思われるのです。

これらの点がゲーム業界の縮小とあわせて、サウンドチームの縮小に繋がっているのではないでしょうか。

 

しかし、この考えはゲーム音楽にとって、非常に危険と思うのです。たしかに多くのコンポーザーはその会社を退社されても、同じゲーム業界で作曲をする事が多く、同じ会社で仕事をされる場合も多々あります。見方によっては独立したことで、仕事の幅が広がってよかったとも言えます。しかし、問題はもっと根深いところにあると感じるのです。それは、ゲームに音楽を組み込めるスキルのある人が、外に出て行ってしまうことによる危険。それと同時に、ゲームのための音楽を作れる人が育成されなくなる危険。

 

次回、やっと最初に書こうとした(長かった……)「現在の業界再編におけるゲーム音楽の危機の可能性」について書こうと思います。

これからのゲーム音楽に訪れる危機の可能性について
今まで3回続けて書いてきましたが、最初に思いついたのは今日書くことでした。その前段階の話もまとめておく必要があったかなとおもったのでそちらから書いてゆきましたが、やっと本論にたどり着きました。とりあえず今日のエントリーだけでもよいのですが、...
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