スポンサーリンク

古の音を今に生かしているゲーム音楽

ゲームの黎明期である1980年あたりでは、ゲーム音楽という概念自体がまだないに等しい時代でした。そこではゲームの音を専門に作る人がいるわけではなく、プログラマがそのハードで鳴らせる音を使って、音楽らしきものを作っていたようなことも数多くあったようです。しかしそこから「ゲーム音楽」という概念が認知されてくると、ゲーム音楽を専門に作る「コンポーザー」が生まれました。しかしその頃のゲーム音楽は殆どの場合そのハードの性能に依存されるものだったため、コンポーザーはそのハードで出せる音を掴んでいる必要がありました。

さらに時代が進み、ゲームハードの性能も進化すると、収録した生の音もそのまま使えるようになり、歌や生楽器の音もゲームの音楽として使われるようになってゆきます。

しかし最近、このようにゲームハードからそのハードの制約による音源やライン数などの独特な仕様がなくなってきたことで、ゲーム音楽が一般的な音楽と同化してゆき、「ゲーム音楽」というジャンルの個性がなくなってきているのではないかということは最近よく耳にします。つまり、独特な音源がなく、普通の音楽と同じような音で作られる音楽がゲームで多くなることで、「ゲーム音楽」というジャンルの特性がなくなってきたのではないかということ。

 

たしかに昔に比べて最近のゲームサントラはその知識なく聴いたら、ゲームの音楽かどうかわからないものというのは多くなっています。となるとこのままいくと昔あったような「ゲーム音楽」ならではの個性はなくなってゆき、一般的なBGMと同化してゆくのではないか、という考えが思い浮かんでも全く不思議ではないでしょう。

しかしそれらの認識は多くのゲーム音楽コンポーザーの方が持っているようで、最近、昔のハードで使用されたようなゲーム独特の音をあえて使うという試みが増えているように思えます。

代表的なのは、古代祐三さんの『世界樹の迷宮』シリーズではないでしょうか。

「世界樹の迷宮」オリジナル・サウンドトラック 「世界樹の迷宮II 諸王の聖杯」オリジナル・サウンドトラック
『世界樹の迷宮』はDSソフトですが、音楽はPC88のFM音源で制作したものをDSで使うという方法がとられています。そしてサウンドトラックではDS版とそのPC88音源のオリジナル版が両方とも収録されています。今までもいろいろなゲームに過去の音源は使われてきましたが、それは「過去の音」を演出するために一部だけ使われるような感じでした。しかしここではFM音源を、最新のゲームで使う音として、その個性を生かすために使われています。

さらに『アマガミ』のサントラでも、本編でメインで使われたものとは別に、FM音源で奏でられたクラシックBGMとして収録されており、かなりいい感じに仕上がっています。
アマガミ オリジナルサウンドトラック
また、上の二つのように直接FM音源を使っているのではありませんが、昔の音源風の音楽を一部の演出としてではなく、ゲームの雰囲気を構成するものとして使われているものもあります。それは『光の4戦士-ファイナルファンタジー外伝』。

この作品では昔のハードにおけるRPGの音楽をイメージして作曲されたようで、ゲーム全体を旧き良きRPG的雰囲気で包み込みます。
光の4戦士-ファイナルファンタジー外伝-オリジナル・サウンドトラック

 

このような昔の音源は、昔のゲームファンに媚びて使われているとする見方も出来るでしょう。しかし私はそうは思いません(もちろん昔のファンを喜ばせる要素はありますが)。これらの音源は、過去に向かって使われただけではなく、過去と未来、両方に向かって使われたように思うからです。それは、過去の音源を使っていても、その曲の構成は昔と同じものではなく、今の音楽としての中に活きていると思われるから。

上で書いてきたような旧い音源を使ったゲーム音楽も、たとえ昔の音楽通りに使ったら、懐かしさだけは覚えますが、今のゲームにすんなり馴染むわけではないと思うのです。でもここでは今のゲームに馴染むような作曲の方法をして、そこに古の音源を使うことで、違和感なく聴けると。つまりこれは過去の音源を使っていながら、今までになかったゲーム音楽であるとも言えるのではないでしょうか。ある意味、ゲーム音源における『枯れた技術の水平思考』なのかもしれません。

 

タイトルとURLをコピーしました