人気マンガ、ヘルシングの最終巻が発売になりました。それもあるので、今日は作者の平野耕太氏ことヒラコーがらみの話題で。
平野氏は『ヘルシング』で有名ですが、ほかにも数本単行本が単発ですが出ています。で、全てが面白いのですが(『大同人物語』復活しないかなあ)、その中に『進め!!聖学電脳研究部』という作品があります。
これは1990年代中盤あたりで『ファミ通PS』に連載されていたマンガで、表面的には聖学の電脳研究部におけるメンバーたちのゲームを中心にした恋あり笑いありの物語ですが、そこはヒラコーというべきか、そう単純に話は進みません。この雑誌、PS専門誌なのに部長がレゲークソゲーマニアという設定のせいで、『夢幻戦士ヴァリス』やら『スーパーブラックオニキス』は出てくるわ、『いっき』のコスプレはするわとPS以外のものも大量に出てきます(アーケードゲームネタが多かったような)。そのネタでコアなゲームユーザーはがっちりハートを掴まれました。
ちなみにアスキー(当時)からは単行本化されず、新声社から単行本化されました。そして上の画像がそれ。しかしその後新声社が潰れてしまったのと同時に、『ヘルシング』の人気が高まってきたのもあり、一時期プレミアがついていました。現在は角川書店から復刊されたために、一応落ち着いています。
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あと、続編のようなそうでもないようなものが『ゲーマガ』や『コンプエース』で掲載されています。
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さて、この作品、一部では有名になっている最終回があります。それは卒業した部長が主人公の西新井護に対して部長交代のテストをする話。で、そのテストとは、目の前に『バイオハザード2』『ファイナルファンタジーVII』『鉄拳3』と、当時の人気ソフト3つを出されて、「選べ」といわれます。その結果……
西新井はSSソフトの『ギレンの野望』を懐から取りだし「今はコレです。」と返答。それに対し部長は「良くやった」「よく自分で選んだ」と返答します。さらにこの後には「自分で選べもしねーで流れに乗ってゲームを買う奴なんざ セングラでもやってろっての!!」という台詞もあります。
さて、これは受け取り方次第ではPS専門誌でSSソフトを勧めたというふうに受け取られかねません。しかし、真意はそこではないでしょう(実際、それ以前の回ではバイオを1話使ってまるまるリスペクトしてたし、『鉄拳』も話によく出てきていた)。
これはつまり、「周りの流行とか、人が『おもしろい』というゲームばかりをやるのではなく、自分で面白いと思うゲームを選んで、そしてプレイしろ!」という、ゲーマーに対してのメッセージではないかと思うのです。
この当時、ゲーム業界は盛り上がっていたのはよいのですが、逆にどんなに面白くても、必ずしも多くの人がプレイしてくれる事に繋がらずに「隠れた名作」になることがよくありました。PSはまだしもセガサターンでは今振り返れば非常に評価の高いソフトがいくつも出ていますが、それが必ずしも売り上げに繋がらないという現状が起きていました。『グランディア』の売上本数50万行ったからともかく、『カオスシード』や『サンダーフォースV』の5万以下』というのは当時ファンとして泣きたくなりました。「隠れた名作」というのは、逆に言えば「当時は評価を得られず、売り上げでは惨敗したゲーム」とも言えるのです。
このメッセージは当時からコアなゲーマーが抱いていたそんな状況を感じつつ、ハード云々ではなく、ゲーム好きのヒラコー氏が、ゲームをする人に送ったメッセージなのではないかと思うのですね。まあ、それを堂々とファミ通PS誌上で語ったのはある意味見事ですが。
では、現在はどうかというと、劇的に変わったとは言えないでしょう。やはり広報力のほうが面白さよりも前に出てしまいがちです。もちろん広報がなされてもおもしろくないと評価されないでしょうが、広報力がないとその土俵にも立てないと。
いや、これは何もコンシューマゲームに限ったことではないでしょう。PCゲー、マンガ、アニメ、映画等々、殆どの人に見てもらえない作品もかなりあるのです。
でも、現在はインターネットが普及して「この作品おもしろいよ!」とマイナーな作品を広く伝えている人というのは大勢存在します。それが出来る分、よくなったのではないかなと。たとえば『世界樹の迷宮』も販売してからインターネットなどの盛り上がりで伸びた感じがありますし。
だけど、そういって教えてもらうのもいいけど、「自分が好きなジャンルだ」と思うなら、ちょっとだけいつもは見ていないものに手を突っ込んでみるのはどうでしょうか。最初はワゴンで安く売っている物をとってくるのでもかまわないし、Wiuiウェアなどに気まぐれで手を出してみるのもよいでしょう。もちろんハズレを掴む可能性は、人に聞いて確実なものを手に入れるより多分にあります。だけど、そこから思いがけない発見をしたときの喜びは、相当なものですよ。
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