最近のゲーム業界では、コンシューマやPC問わず発売日が一度告知されたのに、後になってそれが伸ばされること、すなわち『発売延期』がよく行われます。ある意味当たり前のようになっていますね。しかしこの延期、たとえ数が多くなってきたといっても決してあって良い存在とは言えません。それはもちろん期待をしていたユーザーに待ちぼうけを食わせるだけではなく、あらゆる方面に迷惑をかけるからです。
では、発売日を延期することでどのような影響があるか、それをポジション別にまとめてみましょう。
ユーザーに対して
まず、前述のように期待していた人に待ちぼうけをくらわせることになります。それに、延期の情報が周知されない場合、わざわざ発売日に店まで行って、無駄足を踏ませることもあります。それが近くの店ならまだしも、電車に乗って行かなければいけないようなところなら、交通費まで無駄にさせてしまうのです。
場合によっては予約金を払ってしまった場合もありますよね。それが製品のない状態で預けっぱなしになるわけですから、それの不安を持たせることにもなります。店が潰れないとは限らないわけですし(実際、1年以上延期したソフトの全額を先に払っていた人がいたなあ……)。
マスコミ(雑誌・サイト共)に対して
ゲームではほとんどの場合、発売告知を雑誌で行いますが、延期によってそれらの媒体では当然修正が必要になります。
あと、よっぽど注目の大作でもない限りは、「露出のタイミング&スケジュール」というものがあります。せっかく特集を組んでも、それが発売されるまで時間が出来てしまうとなると、期待のボルテージが勢いが持たないのですよね。それがメーカーに跳ね返るのは自業自得ですが、せっかく作った誌面の意味が薄くなってしまう雑誌やサイトも少なからず迷惑を被ると思います。
小売店・流通に対して
発売が延期することにより、それを買うための代金が前払いだった場合、売る商品がないのに金がないという問題を起こします。売っていないので金が手に入ってない、故に次の仕入れの量(幅)が狭まる、そして下手をすると機会損失を引き起こしてしまう可能性もあります。
かといって代金が後払いだったとしても、迷惑を被ります。まずはその延期を告知をする手間ができてしまうこと。特に予約をしていたユーザーに対しては、前述のような無駄足を踏ませないためにどうにかして連絡をしなければいけない場合もあるでしょう。また印刷物を作っていた場合は、それの修正もしなければいけません。
発売元(この場合自社)に対して
これは自業自得ですが、ユーザーや店に与えたデメリットがそのまま跳ね返ってきます。つまり、ユーザーや雑誌社、小売店や流通にもたれた不満がぶつかってくる感じ。
それに雑誌社のところでも触れましたが、「販促スケジュール」というものが狂います。一つの商品はよほどの期待ゲームでもない限り、いつまでも注目してくれるとは限りません。ですので発売日に合わせて、雑誌社に採りあげて貰う、広告を打つ、店に販促をお願いしてグッズを配るなどします。しかし延期はそれを壊してしまうのです。長くなれば長くなるだけ尚更。
さらに、延期は内部の士気をぐんと下げます。マラソンで言えば42.195キロ走ってゴールだ、と競技場に入ってきた瞬間、「あと10キロね」と言われるようなものですから。ですので、おそらくは開発期間をマスターアップ前のスピードで計算して延ばしても、間に合わないケースは出てきて「再延期」などということになる可能性も高いと思います。
たまにでないソフトを『延期商法』などと言われるものがたまにありますが、以上の損失を考えるとそんなことをするメリットは全く見あたらないと考えます(まあごくごく一部、計画的な場合もあるかもしれませんが)。
何故延期が起きるのか
これだけのデメリットがあるのに、何故延期が起こるのか。それはもちろん誰かがはたらかなかったというのもあるでしょうか、主原因は管理体制のミス(不測の事態に対しての対処も含む)、もしくは『ゲーム制作と決算の非常に微妙な関係~年度末のソフト発売ラッシュに思うこと』でも少し語ったように、最初からスケジューリング自体にミスがあったと考えます。
本当なら発売日が狂いようがない、ソフトが出来てから発売する形が一番いいのでしょうけど、今のゲーム業界でそれをするのはごくごく一部です(その話はまた今度)。
まとめ
ともかく、延期はこれだけ迷惑がかかるということを再認識する必要があるのでは、と思います。そして目には見えないけど、確実に信用を失っているということも。
それをしないためには、確実なスケジューリングをして、不測の事態にも備える確実な開発体制を整えるという、管理面での耐性が重要ではないでしょうか。まあ言うは易しかもしれませんが。
さて、私は締切に遅れないように仕事しないと。