『空気を読まない中杜カズサ』のほうで、以下のようなのを書きました。
そこでゲーム業界のことについても、その下請けに負担がゆく構造じゃないかと書きました。
この構造のままうまくいくと考える人はそれほど多くないでしょう。いつか破綻がくるはずです。産業界との大きな違いは、こういったスキルが必要なクリエイティブ系の多くは下流工程を潰してしまえば安易に他に変える、ということが出来ず、そのまま親元を潰してしまいかねないということです。もしくは、圧倒的な人材不足で獲得合戦が起こり、超売り手市場となるでしょう(しかもかなり有能なクリエイターは限られているわけですし)。いや、産業でも同じでしょうか。現に今、情報処理系の現場ではSE、PGの人材が圧倒的に不足しているみたいですしね。おそらくはこの先、いくつもの企業で獲得合戦が起こり、負けたところは潰れてゆくでしょう。
こう見ると、数年後のゲーム業界には未来がないように思えます。いや、こればかりではありません。現在、任天堂のブームに追随するように、知育ものや実用ソフトがあふれ、オリジナリティのあるゲームが少なくなりました。それこそ前に書きましたが、一度見放されかけたPSPのほうが野心的なゲームがある感じです。それ以外でも、続編もの、シリーズものの多発が目立ちます。たしかに続編は多かったですが、最近では輪をかけて増えてきている気がします。
もちろん、ゲームが売れていないので、費用を削らざるを得ない面はありますし、続編なら売れるのは確かです。でも、おそらく数年後には、業界全体が、そうでなくても会社によっては続編のコマや人材が切れ、危機的な状況に陥る可能性は推測できます。ならどうして、先を見据えた行動をしないのか。それは会社にとって「する必要がない」からではないかと思ったのです。もっと言えば、今の経営陣にとって。
ここ20年で、ゲーム会社の株式上場が相次ぎました。しかし、株式市場は資金を容易く集められる一方、すぐ結果を出さなければ経営陣の責を問われるということがあります。現在のゲーム業界のほとんどは、雇われ社長であり、業績が悪ければすぐに解任されてもおかしくありません。なら、そこですぐに業績を上げるための一番の方法をとるはずです。それはすでに前評判がある続編のリリース、それに人件費の削減。おそらく一番効果的な方法だと思います。
しかしながら、前述のようにこれはあくまでカンフル剤で、効果が切れる時というのはやってきます。しかしその時、育ててきたものがないとどうなるでしょうか。もしくは人が酷使しすぎて離れていった場合どうなるでしょうか。予想するのは容易いと思います。
もちろん、どこかで新しいものを生みださないといけないとは思っている人もいるでしょうが、今の業績を犠牲には出来ないため、問題を先送りにしてしまっているのではないでしょうか。ひどいことを言ってしまえば、たとえ自分の退任後に業績が下がろうと、それは責任を問われるケースはないでしょうし(まあ山一証券みたいに明確な責任があれば責を問われますが、ゲーム業界での人材や環境育成不足は口で非難されても、損害賠償に持っていくのは困難でしょう)。
このように、すぐに結果を出さないといけない株式市場は、長期を見て育てないといけないゲーム市場は相性が非常に悪いのではないかと思ったのです。いや、ゲーム業界だけではありませんね。おそらくどの産業でも現在、育てることを忘れている会社ってのは多いと思います。
とはいえ、それでも上手くやっている会社は存在します。それは株を会社や創業者など、理解のある安定株主が握っている場合。
前にも書きましたが、任天堂は創業者一族と会社で20%近くの超安定株主となっています。故に外部から経営に口を出すのは困難です。だから、昔からかなりリスキーな勝負も出来るのではないかと思います。おそらくゲーム&ウォッチもバーチャルボーイも、任天堂でなければ出るはずもなかったかもしれませんしね。こう考えると、ゲーム業界では同族経営ってのは悪くないことだとも思えますね(そういえば、出版社の多くも同族経営、株式非公開なんだよなあ)。
たしかに業績は大事ですが、それはウロボロスの蛇よろしく、自分の尻尾を食っているようなものです。しかしウロボロスと違ってゲーム業界は不死身じゃないです。……いや、もしかしたらそれでも今が良ければいいと思っていますか?