携帯電話が急速な普及をし始めた2000年前半、ゲーム業界内で「これからは携帯電話のゲーム(iアプリなど)が、既存ソフトのシェアを脅かす」みたいな話が出ていたことがありました。まあ、そのころの携帯の伸び率は不況で下降線を辿ってゆくゲーム市場どころかすべての娯楽において、数少ない上昇株でしたからね。
しかし、携帯電話の普及率が90%近くになり、好調のDSよりも普及台数においてははるかに上の携帯電話でも、すごく売れて(ダウンロードされて)話題になったゲーム、というと……正直あまり思いつきません。あえて挙げるとするならば、『ドラクエ』や『FF』など、名作の異色作ばかり……それもまあ移植したことがすごいとニュースになりましたが、特にゲーム自体は話題にならなかったような(まあ単に移植ですからね)。
サイトとして見るなら、現在、『モバゲータウン』が話題になり始めている感があります。ただ、ここを見てもどうやらゲーム中心とうよりは、コミュニケーションサービスの1コンテンツとしてゲームがあるような状態と見受けられます。
◇参考・モバゲー潜入。『25歳以上♂禁止』とかにへこむ28歳。モバゲーのゲームはおまけだったのか。*ホームページを作る人のネタ帳
ま、携帯電話サービスにおいても、ここ10年、マスコミに持ち上げられたけどそれほど大きな流れとはならずに消えていったものというのがわりとある気がします。なんか今、Web2.0で似たような現象が繰り返されているような気がしてならないです。SとLがつくのとか。
ちなみに広告というのは期待値と注目値を上げますが、実際とかけ離れすぎていると「狼少年の心理」みたいなものが働いて、かえって次の売り上げを落とす、というのを思いつきましたが、これはまたそのうちのネタとして。
話がだいぶそれましたが、要は携帯ゲームには目立ったゲームがないんですよね。あっても移植作ばっかりで。既存ゲーム会社のサイトを見たのですが、昨日のずんずん教やトリパンみたいに「え?なんでこんなのあんの?」ってまであります。
たしかに『ワルキューレの栄光』みたいなのがオリジナルで出て一部で注目を浴びましたけど、あれは少数派かと思います。
さて、何でこのような状況になってしまったのでしょうか?
思うに、「携帯電話ならではのゲームを(時間、開発費などの事情で)開発できなかったから」ことから起因すると思います。
私もP903iを買ってから、調子に乗って容量の限界まであちこちのサイトでそのような移植ものゲームをDLしてきたのですよ。ただ、正直言って実機(移植元)より面白かったものは皆無でした。『もじぴったん』とかはそれなりに面白かったのですが、やはりGBA版とかと比べると、面数は少ないし、操作は片手なのでそれなり、って感じでしたね。
まあそれも仕方ないかもしれません。だって携帯電話はそもそも電話であり、アプリは1つのオプションなのですから。そのメモリは専門機である現在の携帯ゲームには及びません。
あと余談ですが、携帯電話のゲームって、時間制限があるものって向かないんですよね。例えばクイズゲームとかって回答時間がありますが、途中に電話が入ってきたら中断してそれに出なきゃいけません。しかしいつでも中断できたら、それはゲーム性を壊してしまうので、事実上ポーズが出来ない。ですので電話がかかってきたらそのままゲームオーバーとか。(ちなみにQMAmobileでの例でした)
さらに携帯電話アプリゲームにシェアが集まらなかった理由は、「思ったより対象となる市場が狭い」ことにあると思います。
携帯電話の「その1つのゲームが展開できる」市場ってのは意外と狭いのではないかと思うのです。というのは、まずDocomo、au、SoftBank、PHSも加えるとWillcomという4つのキャリアがあること。まあこれらは全部のキャリアに出してくるゲームも少なくないのですが。
しかしそれ以上に問題なのが、時代的に対応していないこと。つまり携帯は持っていても、最新のゲームが入れられるメガアプリ搭載なのを持っている人は思ったより少ないんじゃないでしょうか。ましてやゲームに興味ない人は最初からメガアプリを搭載していないタイプ(安い)買いそうですし。電車の中とかでも、古い携帯を使っている人ってけっこういるんですよね。なんだかmovaっぽいのとか。(画面を見たことはないからわかりませんが、白黒画面使っている人とかいるのかなあ……)Docomo限定で言えば、最近のゲームはメガアプリが多いですが、900シリーズでメガアプリ付携帯持っている人ってどれくらいなのかなあ……
となると、その狭い市場に突っ込むとなると、新規でゲームを作る金や人は割けない。となると移植コストだけで済む既存作が中心になると。既存作なら知名度もありますからね。でもって昨日のようなずんずん教みたいな、とても一部以外では受けなさそうなゲームも出てくるのではないかと思います。
つまり携帯電話のゲーム市場って、ローコストローリターン、たまに当たれば大もうけ市場になっていると思うんですね。
しかし前述のようにメモリ少ない、インターフェースが全く違うでは、ゲーム専門機にかないません。(そもそもアーケードの移植を家庭用にしたって文句が出ていたのに)。故にシェアは広がらない。だから回収できる見込みが少ないなら開発費は抑えられる。そしてそれなら……というスパイラルに陥っているのではないかと。
ううむ……「携帯電話ならではのゲームを(時間、開発費などの事情で)開発できなかったから」と前述しましたけど、できなかったからコストが削られたのか、コストが削られたからできなかったのか、卵が先か、鶏が先か……
さらに付け加えれば、携帯電話ゲーム市場の敵は既存ゲーム機だけではなく、同じ携帯のゲーム以外のコンテンツとも戦っている(娯楽時間の奪い合いをしている)と言えます。電話しながらゲームできませんし、音楽聞きながらゲームはしません、というか機能的にできません。
でも、一番の敵は買ったときにインストールされている「テトリス」(私の場合は「ぷよぷよ」)だったりして。それさえあればもうゲームは十分ってことで。
さて、こんなわけでなんだかもう携帯電話ゲーム市場ダメダメ、みたいに書きましたが、実はそう悲観ばっかりではないと思います。というのは、やっとそれなりのアイディアを詰め込める段階までハードが高まってきたと思うからです。例えれば、ファミコンからスーファミ時への時みたいに。特にメモりの問題が解決してゆくのは、必須だと思われます。(振って感知とか余計な機能はいらないので。もし出すならそれを最大限活用したゲームを開発してからにしましょうと)
あと、時が経つにつれ、携帯電話ゲームに最適化されたアイディアが蓄積されてきたというのもあると思います。
「通信」が常に出来るのは、携帯電話の他に勝る強みだと思うので、そこあたりから出てくるかもしれません。(実際、QMAモバイルはテンポと人の集まりさえ解決すれば、かなりいい感じかと)
始まって10年も経ってない市場なのですし、まだまだゆっくり動向を見ていく必要があると思います。まあ、爆発するにはどこかが本腰を入れて開発して、さらにヒットさせてくれるということが必要ですけどね。ポケモンみたいに。