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ゲームソフト史上最大の商業的失敗作と言われるソフト『E.T.』

皆さんは「ゲーム史上で一番商業的損失を被ったソフト」というと、何を思い浮かべるでしょうか。こう書くと、日本ではⅠとⅡでのべ70億かけて作られたと言われているドリームキャストソフト『シェンムー』あたりを思い浮かべるでしょう。ですが、そんなのは甘いです。実際、セガは潰れていません(その後数々の幸運もあったのですが)。

しかし、業績がわりと好調だった会社を一発で傾けることになった作品が存在し、今でも多くの人に「ゲームソフト史上最大の商業的失敗作」と言われている散々なものが存在します。しかもそれはなんとファミコンの誕生以前、1982年に登場しているのです。もし海外ゲーム史にも詳しい人がいたら、ピンときているかもしれません。そのソフトの名前は『E.T.』。
Atari E.T. Dig: Alamogordo, New Mexico
Atari E.T. Dig: Alamogordo, New Mexico / taylorhatmaker

 

アタリ『E.T.』

この名前、ゲームファンならずともご存じの方は多いでしょう。そう、1980年代はじめにスピルバーグ監督が制作し、そして大ヒットをとばした映画『E.T.』と同じですね。そう、これはその『E.T.』のゲーム化作品なのです。

 

移植されたハードは、当時アメリカでトップハードだったアタリ2600(VCS)。しかしアタリ2600も1982年あたりになると、発売からだいぶ経っていたのと、ライバル機の登場で勢いが落ちてきたのもあり、更なる人気作望まれるようになります。そこで当時、大ヒットとなっていた『E.T.』のゲーム化権を買い取り、出すことになりました。ちなみにその版権の金額は2000~2500万ドルとも言われているようです。

 

しかし、年末に発売されたそのソフトは、とてつもない大失敗となります。ただ、ここがポイントで、実はこのソフト、売れてはいるのです。その売れた数は150万本。でも、そのソフトが製造された数は500万本。しかもアメリカではゲームソフトの返品制度があり、ショップで売れなかったソフトはそのままメーカーに返ってきます。つまり150万本売れても、残りの350万本の在庫を抱えてしまったため、そして先程の売れることを見込んで払った版権料が重くのしかかり大赤字となってしまったのですね。ちなみに500万という数字は、それまでに売れていた本体の数値よりも大きいのですから、それだけ『E.T.』に期待して、そして大コケしたかというのがわかります。
参考までに、発売日に超行列が出来て話題となった『ドラゴンクエストIII』の売上本数は、約380万本でした。『E.T.』の製造数は、それよりも多かったことになります(もっとも国内市場とアメリカ市場、それに数年の違いがあるものを単純比較は出来ませんが)

 

伝説のクソゲーと言われる『E.T.』

さて、この『E.T.』ですが、ゲーム内容はどうだったかというと、実は現在でも酷評されているようです(一方で評価する向きも少数ながらあり)。
■参考:ビデヲゲーム研究室: E.T.(1982) (Atari 2600)
ただ、どうしてこうなったかというのは、開発者のせいにだけはできません。というのはこのゲームの開発は、最初の版権取得で大いにとまどってしまい、開発期間がかなり短かったこともこのゲームが酷評されるような出来になってしまった大きな要因としてあるようです。

 

 アタリショック

ともあれ、数々の失敗が積み重なり、『E.T.』はとてつもなく大きな失敗となってしまったのです。
さて、このゲームの失敗でアタリはその年のクリスマス商戦で大失敗し、翌年1983年の赤字は5億ドル以上にもなってしまい、その結果倒産、会社はアタリゲームズとアタリコープに分割されてしまいました。
この時の一連の流れは、後に『アタリショック』として語られますが、日本での使われ方は微妙に違い、つまらないソフトが粗製濫造されてユーザーが離れ市場が壊滅したというので使われていますね。しかし実際はまだその時はゲーム史上は生きていて、少なくともソフトを買う人も150万人はいるような市場であり、このクリスマス商戦でいきなりユーザー離れが起きたのではなく、アタリが壮絶な自爆を遂げたと言ったほうが正しいでしょう。

■参考:ゲーム会社の「アタリ」はそれからどうなったのか : Timesteps

任天堂文脈でのアタリショックと史実のアタリショック
このようなエントリーがありました。 ■ソーシャルゲーム業界は「アタリショック」のように崩壊するのか? - デマこいてんじゃねえ! さて、「アタリショック」という言葉は最近ではゲーム業界のみならず広く使われるようになり、個人のみならずメディア...

 

砂漠から『E.T.』発掘

ちなみにこの時に余ったソフトは夜中にトラックで運び出され、ニューメキシコ州の広大な土地に埋められた、という都市伝説まで出来ましした。

それらは長い間都市伝説として真偽不明だったのですが、最近それを掘り起こすというプロジェクトが実際に行われました。その結果、本当に掘り出してしまいます。


都市伝説は本当だった、ニューメキシコ州の「Atariの墓」から最悪のクソゲー『E.T.』カートリッジが発掘される | Game*Spark – 国内・海外ゲーム情報サイト

そしてそこから発掘された『E.T.』はスミソニアン博物館に収められたとのこと。サクセスストーリー?

砂漠から発掘された伝説のクソゲー、スミソニアン博物館に収められる – ITmedia ニュース

 

 

必ず売れる保証のあるゲームなんてない

このようにゲームが商業的に失敗するというのは、そのソフトがどうこうよりも、経営的な側面における失敗のほうがはるかに大きいのですよね。この事例の場合、人気映画のゲーム化なら売れるという見込みの甘さや開発期間の短さなどが大きな原因としてあるでしょう。
近年はゲームの開発費が上がっています(特に据置機)。先述の『シェーンムー』を超えて、今では約100億円の開発費がかかるソフトもあるということです(『グランド・セフト・オートIV』)。こうなると絶対に外せない、外したら会社が傾く可能性があるわけで、気をつけないと『E.T.』似たようなことがまた起きてしまうのかもしれません。

■参考:E.T. (アタリ2600) – Wikipedia

■参考書籍:それは「ポン」から始まった-アーケードTVゲームの成り立ち

それは「ポン」から始まった-アーケードTVゲームの成り立ち

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