ハード末期の兆候として昔からよく言われているのにギャルゲーの大量発売というか、ギャルゲーがメインジャンルとなってしまい、そのハードがギャルゲーマシーンになってしまうのがあります。おそらく最初はPCエンジンで(それ以前はギャルゲー自体ほとんどなかった)、次にセガサターン(ルナ2が出た後位あたり)、PS(PS2発売後)、DC、そして今はまたPS2という流れでしょうか。ただ、DCの場合はその後にシューティングマシン化という特殊な流れがありましたし、PS2もギャルゲーが多いとはいっても、PS2やWiiへの完全移行がまだ行われていないというのもあるので、それ以外のジャンルも出ています。
まあ、何でそうなるかはよく言われていることなので簡単にだけ触れておきますが、結果的にギャルゲーだけ残るハードとなり(それ以外のものは、現役ハードに移ってしまう)、その流れで「ギャルゲーなら(そのハード)」という出来てしまうためと思われます。あと、競争機には統制していたハードメーカーの規制(特にPC移植もの)が緩くなるってのもあるでしょう。
そして、ギャルゲーの売り上げはハードの勢いに関係しない、というのが一番の理由だったでしょう。実際、サターンでは勢いを完全に落としていた1997年12月に『この世の果てで恋を唄う少女 YU-NO』が22万本(ちなみにほぼ同じ時期に発売された『仙窟活龍大戦カオスシード』は2万弱。名作なのに……)、98年4月の『サクラ大戦2』が53万本(まあサクラはちょっと特殊ですが)、そして98年10月の『Piaキャロットへようこそ!!2』も10万本の売り上げがあります。(以上『サターンのゲームは世界いちいいぃぃ!』(ソフトバンク)のデータより)
このように、ギャルゲーは良い売り上げを保障してくれるものとして、これ以降舞台を移しつつもかなりの量が出されました。特に売り上げが良かったのは、PCギャルゲーの移植作品。『サクラ大戦』のような例外や匹敵する『メモリーズオフ』系はありましたが、やはり移植はすでに付いているファンを巻き込め、さらに知名度も高くなっていることがかよく売れました。それにオリジナル制作側でもこのような売り上げを持つ「コンシューマ移植」というのが、一種のステータスのようになり、コンシューマ移植をすると大騒ぎになったものです。
しかし、それから10年経った今、移植に際して昔ほどのステータスやうみまがあるかと聴かれれば、正直NOでしょう。
まず、圧倒的に数が増えすぎました。それこそサターン末期は有名なPCゲーだけが選ばれて移植されていたのに、それ以降は目立った作品は全てくらいの勢いで移植が行われました。まあそれでも制作元が作り込んだ『ToHeart』はよく売れましたし、DCの『Kanon』『AIR』あたりは人気がトップクラスだったのもあり、かなり売れたみたいです。
しかし、ここ3年程度で、初週売り上げ(おそらくTOP30圏内)がわかったものをいくらか抽出すると
○サクラ大戦V ~さらば愛しき人よ~ セガ 118,284
・キャンバス2 ~虹色のスケッチ~ 角川書店 13,544
・CLANNAD -クラナド- インターチャネル 31,723
○Memories Off~それから again~ キッド 12,575
○キミキス エンターブレイン 54,214
○ギャラクシーエンジェルII 絶対領域の扉 ブロッコリー 16,973
・魂響~御霊送りの詩~ イエティ 3,967
・つよきす~Mighty Heart~ プリンセスソフト 22,654
・planetarian~ちいさなほしのゆめ~ プロトタイプ 8,170
・_summer##(アンダーバーサマーダブルシャープ) GNソフトウェア 8,216
・EVE new generation 角川書店 20,782
・Gift(ギフト)-prism- Sweets 8,604
・うたわれるもの 散りゆく者への子守唄 アクアプラス 91,415
・夜明け前より瑠璃色な~Brighter than dawning blue~ ARIA 22,247
といった感じ。○は、コンシューマオリジナルです。
初週の他ソフトの売り上げでデータが変わりますが、データがないランク外のものは、これより本数が低いと見て良いでしょう。ただ、『ToHeart2』がないのは不思議(他が強かった週?)。おそらく10万くらい行ったとは思いますが。あと『アルトネリコ 世界の終わりで詩い続ける少女』は、82,030本ですが一応RPGなので除外。
さてこうして移植ものを見ると、売れているソフトは10万近くいっていますが(TH2含めアクアプラス2作)、これは当時アニメ化が行われていたメディアミックスという点を考慮しないといけないかと。
となると、アニメ抜きでは売れて3万強、やや売れて1万程度、そしてランク外も合わせると数千止まり(5000以下もあるかも)というのの方が多いでしょう。逆に、雑誌のプッシュがすごかった『キミキス』の方が売れています。
ここでわかることは、昔、それこそサターンの時代は少なくとも万単位だったコンシューマギャルゲーの売り上げも、今ではどれもこれもがそうなるわけではないということ。それどころか、昔は決してPCゲームの売り上げはコンシューマに及ばなかったのに、今ではかなり近いところまで、場合によっては抜かすところまで出てきてしまったのではないかと。というか、調べると『夜明け前より瑠璃色な』のPC版はとっくに超えているようで(まあこれもキャベツなりいろいろ複雑な要因があったとは思いますが)。
1997年あたりというのは、まだネットどころかPCも普及しておらず、PCゲームを遊べない人間も大勢いました。しかし現代、PCは爆発的に普及し、また、ものによってはゲーム機(PS3)よりも安いという現象まで起きています。
このような状況で、移植ソフトの最大のメリットであった「PCを持っていなかったものが家庭用でも出来る」というメリットはかなり薄くなってしまったと言えます。さらに、ゲーム市場もいろいろあってかなり冷え込んできたというのもあるでしょう。
で、この先ですが、ギャルゲーを移植するマシンとして、今までも任天堂ハードではギャルゲーが少なかったのもあり、Wiiでの発売はあまり期待できないと思っている人は多いでしょう。とはいえ、PS3は開発費が高すぎます。となれば一番有力なのはX-BOX360ですが、この日本市場の狭さはご存じの通り。となると、現在も流れはPS2で止まっているわけです。しかしハードはだんだん収束に向かいます。そして上で述べたように、数が増えすぎてメリットが無くなっていくコンシューマギャルゲー、売り上げ的にも見込めなくなっている現状で、リリースは今までのように行われるのでしょうか。
まあ、なくなることはないと思います。しかし少なくとも、「ハード末期にぞろぞろ出る」ようなことは無くなるのではないかと。
中にはただエロシーンなくしてそのまま乗せちゃえみたいなひどいのもあったと聴きますしね。淘汰されて良い作品が残るのはいいことかと思います。
ちなみに私が今までで一番遊んだギャルゲーは、時間では『YU-NO』、回数では『ToHeart』のおまけシューティング「お嬢様は魔女」などのミニゲーム。あれはおまけなのによいものだった……