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ゲーム体験版CDの希薄化と変質する存在意義

東京ゲームショウは過去最大の来場者数を記録した……という発表がなされましたが、実際は開催期間が4日に増えたからで、1日あたりの入場者数は減っているらしいです。

問われる「ゲームショウ」の存在意義 [任天堂ゲーム] All About

まあ今回に限ってはPS3、Wii発売直前の前回と比べる方が酷だと思いますが。今年は大きな話題もなく、行った人の多くが「見るべきものがなかった」と言ってますし。う~ん、でも昔はFFやDQのお披露目があったら注目が集まったけど、両ソフトもあまりに関連作が出過ぎたのもあって目新しさはないですし、もうそこまで引っ張れるものではないかも。

さて、そんな中、一番混んでいたのがレベルファイブ。しかしこれはレイトン教授の人気より、それの体験版CDを求めて集まった人の処理が出来なかったという皮肉なことであります。

 

 

しかし、思うのですがこの体験版、昔からこの手のイベントにはつきものでした。東京ゲームショウ初回(1997年)には、スクウェアが数万枚のFF7体験版を用意して、配りまくっていたのを記憶しています。そして他のメーカーも歩いていればコンパニオンの人が体験版を差し出してくるような状況でした。おかげで家にはそのころのPSの体験版が残っていたりします。

しかし、今は体験版CD(DVD)もだいぶ減りましたね。それこそ配っているのは大手数社のみで、それも時間を区切ってとか、試遊した人にのみとかの制限をつけているところが多数です。さて、何故こうなったのか。ここでは「物体として存在する体験版が何故無くなったのか」について書いてゆきます。

 

まず、今、やや不自然に「物体として存在する体験版」と書きましたが、それとは別の体験版が出てきたことにあります。それはすなわち、「データ配信の体験版」。つまり、Wi-Fi通信によるダウンロードや、インターネットからのダウンロードがそれにあたります。これらは今最も使われているDS、PSP、Wii、PS3、X360のどれでも(通信環境が整っていれば)可能ですよね。ということは、わざわざ行ってもらうまでもなく、そのソフトが家にいながらにして体験することも可能なわけですよね(体験版が始まっていないものも少なくとも理論的には。Wiiはメモリ問題があるかもしれませんが)。

CDやDVDで配布した場合、どうしてもその媒体のコストがかかります(プレス代、マニュアルの印刷代)。さらに、配布できる場所が人が集まるところと限定されているので、体験版のマスターアップを遅延させることは絶対できません。その結果、料金的負担&スタッフの負担が大きなものになります。

しかし、実際のものに触ってもらうパブの手段としてはそれくらいしかなかった昔は、それでも体験版CDを配ったでしょう。しかし、現在コストは比較的安く、多少遅延が出てもなんとかなるというデータ通信体験版が生まれた今、それをあえて配る必要性が急激に薄れたと思います。

これは、コンシューマよりもさらにネット接続率が高いパソコンではさらに顕著ではないでしょうか。
※追記……ぶっちゃけエロゲーですね。しかもこれらは体験版なりデモがネットで流される時、自社のサーバだけではパンクすることが想定される場合でも、ありがたいことにサーバを提供してくれる有志サイトさんが存在します。

 

さらに、これは体験版CDを配っている時代から思っていたのですが、そもそも体験版CDって製品の売り上げにどれだけプラスになるのでしょうか。

過去、アトラスのメガテンシリーズの関連作品、魔神転生シリーズに『RONDE~輪舞曲~』というソフトがありましたが、それの体験版CDを予約者に配ったら、あまりのアレな作りに予約者がキャンセルをしにきたという本末転倒な話を読んだことがあります(出典忘れたけど、たぶん『超クソゲー』あたり)。

体験版はほとんどの場合、未完成な状態で作られるものです。しかもたいていは序盤のみで、ソフトの魅力を伝えるのは難しいと思います。せいぜいそのソフトが口に合うか合わないかの判断をするくらいかと。まあよっぽど面白いソフトや注目されているソフトらな別ですが、そういうソフトは体験版を出さなくても口コミで売れそうですし(まあゲームは初動が命の所もありますからね)。

 

そんなわけで体験版のメリットが全くないとは言いませんが、多大なコストをかけてするほどか……となるとちょっと疑問かも。どっちかというと、店に対しての広報材、すなわち「このソフトに対してはこれだけ宣伝してます。だから売れるから受注してください」って意味が強いかもしれません。

ちなみにゲームにおいてデモムービーが増えたことも若干関連がありますが、これは長くなるので別の機会に。

以上のことで、かなり物体としての体験版の存在意義が低下してきたと思うのですが、それでもなお物体としての体験版を配るメーカーがあり、それを求める人が多いのはやはり物体だと「もらった」という充実感があるからではないでしょうか。つまり現在は中のデータより、そのモノとしての価値に重きを置かれているという(まあ昔から似たような傾向はありましたが)。つまり、木偶ストップアクセサリやハンカチやストラップみたいなパブアイテムと似た感じになっているのかなあと思います。あとゲーム機のネットインフラが完全整備されていないってのもあるかも。

 

今回のレベルファイブの大混雑は、「DSなのにデータ配信ではなくて、物体ソフトの体験版」というモノ的なレアさと、「人気ゲームの続編の体験版収録」というレアが重なってしまったうえに、起きてしまったものではないでしょうか(他にトラブルもあったようですが)。

ついでに言うと、他に見ることとがない時間つぶしのために、つい何かがもらえる長者の列に並んでしまった人がいるとも推測されます。

でも製品版が出ると、よほどそのディスクに体験版ならではのもの、例えば映像特典とか設定資料みたいなのがついていないと、ただの円盤になってしまうのですよね。私もそうやって大掃除の日に、大量にもえないゴミが出ましたし。

ゲーム業界では、新しくできたものの他になくなってゆくものが多数存在します。そういえば電話での情報サービスやFAXマガジンなんてのもありましたね。体験版CDも完全になくなることはないでしょうが、本来の意義、すなわち発売前のゲームの広報用という意味はなくなってゆくと思います。

 

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