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ゲームにおける目立つ技術と目立たない技術~ムービーとロード時間

前にはてなのほうでこんなエントリーを書きました。

目立たない技術の方が難しいのに、アピールポイントにならないということ – 空気を読まない中杜カズサ

要約すると、実は携帯電話の表面的な目立つ機能を向上させるよりも、通信速度やバッテリーといった目立たない(広告的アピールがしにくい)もののほうが向上させるのが難しい。しかし目立たない故に販売的な面からそれらは置き去りにされてしまうという話です。

 

これは携帯電話のことなのですが、途中、同じことがゲームにも言えるんじゃないか?と思い、ちょこっとだけ書いておきました。それは以下の通り。

 このへん、ここ10年のゲーム機と構図が似ているような気がします。ムービーとかは一時期かなり流行ったけど、ロード時間を感じなくするほど短縮するためには10年かかったというところが。

ここ10年というのは、PS~PS2時代となるでしょう。

この時代、「ムービー」というものが大幅に発展しました。いかにもCGという綺麗なものは、PSの『ファイナルファンタジー7』付近でしょう。これはCD媒体化に伴う大容量化も大きかったでしょう。

しかし、CD媒体化は副産物も生み出しました。それが「ロード時間」。ちなみに一番最初によくネタにされたのは、NEO-GEO CD(等速読み込みCD、今の1/48程度の速度と思っていただければ)のNOW LOADING中に出てくるサルでしたね。ラウンドの区切りごとにこのサルが出てきて長いロードに入ったことに殺意を覚えたユーザーもいると思います。あと初期の頃のRPGも画面が切り替わる度にNOW LOADINGでしたね。

しかしスペック的にメモリがないので、ロードを縮めることは困難でありました。

 

そこでメーカーがとった手は主に以下のようなものと想定されます。

NOW LOADING中にグラフィックを表示させる

これはNOW LOADINGのパターンをいくつか用意しておき、そこでイラストを見せてプレイヤーを惹きつけておく方法ですね。おそらくこれがポピュラーな対策だったと思います。
ただ、残念ながらこれはすぐに慣れてしまうので、飽きてしまうのも早く、根本的な解決にはなりませんでした。

NOW LOADING中にゲームを入れる

ナムコのPSロンチタイトル『リッジレーサー』ですね。裏を返せば、当時はゲームが出来るほどにロードが長かったとも言えます。さすがにこれから先はゲームをさせるほどは長くロードしませんでしたが。

NOW LOADINGをストレスにならないところで(分散して、もしくは一気に)読み込ませる

地味ですが、かなり効果的です。小容量の読み込ませではロード時間は短くなるので、例え場面の途中ではこれを使い一瞬ですませ、ユーザーが一息つくような区切で一気に読み込ませることで、ぶつ切りになるストレスを極力感じさせないようにするということ。
ただ、プログラマがよほど練り詰めないと、絶妙なタイミングは難し買ったと思うので、これはプログラマの腕次第だったでしょう。

読み込ませているように感じさせない

おそらく一番難しいですが、効果的です。これは例がありますので。

これはサターンの『グランディア』ですが、初めて見る方は何ともないと思われるかもしれませんが、当時はかなり切り替わりが早かったように感じました。

戦闘に入るときには一応短い読み込みはしているのですが、画面を動かし続け、音も鳴り続けることで断絶を感じさせず、スムーズに切り替わります。おそらくこれも難しいものだったでしょうが、ゲームアーツの技術の高さが伺えます。

ちなみにPSでも『FF7』が同じように演出をしてかなりストレスを省くように頑張っていたように思います。(ちょっと資料がなかったので…)

 

さて、こんな対策をとってきたのですが、残念ながらこれらの技術というのは手間もかかり難しいわりには地味で目立つものではありません。

そして、ロード時間を短くしたところで、雑誌にはわかりませんし、かといって店頭でのアピールも出来ません。つまりそれを頑張ったところであまりアピールポイント(売り)にはならないのです。今こうやってムービーを交えてやっと説明できるくらいですから。

したがって当時のゲームで最も多かったロードに対する対策は『あきらめる』、つまり、NOW LOADINGを「あってしょうがないもの」と割り切ってしまうことですね。

その結果、多くなっていたのが「ムービー」すなわち、見た目衝撃も多くて、写真や実際の店頭でもアピールしやすく、尚且つ一定の金を出せばゲーム専門ではないクリエイターにも投げられるため、安全パイとして使われていったのでしょう。

 

ムービー自体も立派な演出の一つですのでもちろんあっていいと思います。しかしゲームにとって問題だったのは、あまりにもそれに頼りすぎてしまったことではないでしょうか。一時期流行りましたよね、あまり意味ないムービーが途中で挿入されるゲームとか。(しかもキャンセル不可)で、CMや店頭デモではそればっかりが流されて、ゲーム画面はあまり出てこないというのが。

 

考えてみれば、ロード時間だけではなくて、このような「地味だけど大切なもの」というのが、この10年のゲームの進化の過程で置き去りにされてしまったのではないか……なんて考えも浮かんできてしまいます。例えば操作。RPGでは方向キーでコマンドを選択し、ボタンで決定するというのが当たりまえになりましたが、模索していくともっと有効な手段はあったかもしれません。スーファミ末期には『エストポリス伝記』とか『スターオーシャン』『テイルズオブファンタジア』なんかでそのへんの操作性でかなりチャレンジブルになっていた感じはあるのですけどね。

さらにハードにまで話を伸ばせば、「右手でボタンを押す」とか「左手で方向キーを押す」以外に、もっと革新的な方法があったのかもしれませんが、10年……いやそれ以上の論議はほとんどされてきませんでした。(もちろんファミコンの時点でのコントローラが完成されすぎてしまったとも言えますが)
画期的な機能である「アナログコントローラ」や「振動」でさえ、広義的には今までのコントローラに付随したものでしかありません。

DSのタッチパネルやWiiコントローラはそんな状況から脱却するために、あのようなものを作ったのかもしれません。(それが成功か否かはまだ判断出来ませんが)

この10年で進化したものは、ムービーやハード性能以外にももちろんあると思いますが、その反面、何かが「失われた10年」になっている可能性もあるのではないでしょうか、と思ったわけです。それが何かは、現在となっては「進化したかも」という私の想像でしかなくなってしまいましたが。

 

さて、現在はハード能力が進み、どの機種でもほとんどロード時のストレスを感じることはなくなってきました。しかし、もし過去のようにわかりやすいアピールばかりされていたら、そのうち何かが失われたまま過ぎ去っていかないでしょうか。
そのために、メーカー、そしてユーザーは、地味なことでももっと評価してあげるべきではないかと思います。

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★追記

本文で書く隙間がなかったのですが、任天堂があくまでも64でROMにこだわり続けたのは読み込みストレスの問題が大きかったからという説があります。また、ゲームキューブでディスクに移行したのは、その読み込みストレスがやっと感じなくなる段階に来たからだと。
そんな目立たないことを昔から認識し、対策していたのでしたら、たいしたものだと思います。

★追記2

グランディアの動画見てて思いましたが、3Dものでの「カメラワーク」なんてのも地味だけど重要な技術ですね。

 

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