今から10年以上前、ゲームサントラの発売元においての一大勢力がありました。その名はサイトロン。このレーベル名は様々に経営状態を変えながらも最近まで引き継がれていました(現在はバンダイ系列のハピネットに吸収されて、ゲームレーベルとしては事実上の停止状態)。
■参考:サイトロン・レーベル – Wikipedia
さて、この1990年代前半あたりでのサイトロンレーベルの目玉は「1500シリーズ」というシリーズでした。これは文字通りひとつ、もしくはふたつくらいのゲークが入っているサントラを1500円で売り出すというもの(ちなみにあとから2000シリーズも登場)。アーケードゲームのサントラリリースが中心で、数々の名作をリリースしました。一番売れたのは、2D格闘ゲームブーム時のSNKもの(餓狼伝説、KOFシリーズ)ではないかと。そのほかにもセガやタイトー、ジャレコからビデオシステムなどの中小メーカー、それに一時期はナムコもリリースしていましたね。
当時はCD全盛期で、ポピュラーCDアルバムの値段は殆ど3000円くらいでした。よって、このサントラの値段は非常に安く感じられました。ゲーム好きな人の中にはこの安価な点が理由で、CDを買いあさった人もいるのではないでしょうか。
ただ、この1500シリーズ、SNKの大人気シリーズ以外では町のCD屋に置かれることはほとんどなく、だいたいはその当時まだ少なかったゲーム、アニメ系の専門店(アニメイト、神田時代のマルゲ屋など)まで行って購入していました。
さて、何故これら1500シリーズが置かれなかったのか。それは今までゲームサントラが当時マイナーな存在であったからと思ってしました。そしてそれはたしかに正しいでしょう。しかし今思えば、もうひとつ付随要素があったように思えます。それは1500円だったから。
当時はまだまだポピュラーCDが売れていた時期……というより、おそらくは最盛期だったでしょう。ミリオンヒット、ダブルミリオンなんてのも珍しいものではなかったように思えます。しかし店の棚は有限です。あと、仕入れにかかる金額の上限もあります(まあCDには再販制というものはありますが、それでも無限に仕入れをできるわけではないので)。ならどれを置くかとなると、売れる確率が同じでも、店に入る利益の問題で3000円のCDのほうが好まれたのではないでしょうか。つまり、同じ掛け率だったとしたら、1500円より3000円の方が店の利益が大きいわけなので、そっちで棚を埋めた方がよいと。
もちろん当時は1000円程度のシングルCDもありましたが、そっちは非常に売れることが前提でした(アルバムより売れているものも多かったはず)。となると、ますますサントラの居場所がなくなっていったということです。
また、サイトロンレーベルなど各種レーベル自体もその棚に置かせるための営業力が弱かったというのもあるでしょうね。もちろんそれは前述のようにまだサントラがマイナーだったために、そこに費用、人員を割いてもらえなかったという点が強いでしょう。
このように、安さがかえって町のCD屋に置かれない原因となってしまった面はあると思われます。
でも、この安さがゲームファンにとっては間口を広くして、町には置かれなくても専門店まで買いに行くというファンをそれなりに増やしたとは考えられないでしょうか。そうだとすると、この1500シリーズの功績は大きいと思うのです。