『PCゲームをインストールしたまま中古に売るのはアリなのか』
ネットでこれについて書いているところがどこかにあるかと思って探してみると、意外と見つからない。その中で、ACCS(コンピュータソフトウェア著作権協会)のサイト質問ページに以下のようなものがありました
自宅で使っていたパソコンを破棄するので、このパソコンにインストールしていたソフトウェアをオークションサイトに出品してもよいか?
まず、そのソフトウェアの使用許諾契約書に記載されている「譲渡」に関する条項を確認し、他人に譲渡できるかどうかを確認してください。第三者に譲渡ができると記載されていれば、その条件に従えば、オークションに出品し譲渡することができます。
なお、プログラムの所有者がそれを滅失以外の理由で所有権を有しなくなったあとは、複製物(インストールしたもの)を保存してはいけないことになっていますので(47条の3 2項)、第三者に譲渡する際は、破棄するパソコンにインストールしていたソフトウェアは削除しなければなりません。
法的にはだいたいがここで解説されている通りと思われます(ただしこれはACCSの見解で、実際の法的な場に持ち込まれた場合、そのケース毎に異なる可能性もあります)。
これについて、もうちょっと詳しく書いてゆきます
※追記(2017/3/10):2008年当時のリンクがなくなっていたので、一部修正を加えています。
インストールしたまま中古に売るのは?
まず、「インストールしたまま中古に売るのはアリなのか」の部分への問いとしては『、プログラムの所有者がそれを滅失以外の理由で所有権を有しなくなったあとは、複製物(インストールしたもの)を保存してはいけないことになっていますので(著作権法第四十七条の三の2)、第三者に譲渡する際は、破棄するパソコンにインストールしていたソフトウェアは削除しなければなりません。』とあります。ちなみに第四十七条の三の2は以下の通り。
第四十七条の三
(中略)
2 前項の複製物の所有者が当該複製物(同項の規定により作成された複製物を含む。)のいずれかについて滅失以外の事由により所有権を有しなくなつた後には、その者は、当該著作権者の別段の意思表示がない限り、その他の複製物を保存してはならない。
もう少しわかりやすい詳細としては、以下の通り(リンク先が消滅していますが、わかりやすかったので当時の引用を残します)。
■c447 ソフトを売った後、バックアップを使うのは?(リンク切れ)
「プログラムの著作物の複製物の所有者による複製等」(著作権法47条の2の1項)で適法に複製したものをインターネットのオークションに出品すれば、複製権(著作権法21条)を侵害したものとみなされます(同49条1項3号)。
また、適法にコピーしたCDか、コピーの元になったマスターディスクのどちらかを頒布するなど、紛失以外の方法で所有権がなくなった場合は、そのソフトを所持することができなくなります(同条の2の2項)。使用の禁止ではなく、保存そのものを禁止している点に、ご注意ください。この保存も49条1項4号で複製権侵害とみなされます。
ちなみに第四十九条一項3と4は以下の通り。
第四十九条 次に掲げる者は、第二十一条の複製を行つたものとみなす。
(中略)
三 第四十七条の三第一項の規定の適用を受けて作成された著作物の複製物(次項第二号の複製物に該当するものを除く。)若しくは第四十七条の四第一項若しくは第二項の規定の適用を受けて同条第一項若しくは第二項に規定する内蔵記録媒体以外の記録媒体に一時的に記録された著作物の複製物を頒布し、又はこれらの複製物によつてこれらの著作物を公衆に提示した者
四 第四十七条の三第二項、第四十七条の四第三項又は第四十七条の五第三項の規定に違反してこれらの規定の複製物(次項第二号の複製物に該当するものを除く。)を保存した者
■以上条文:著作権法より
インストールしたままのものでも「複製物」とみなされる
つまり、HDDにインストールしたままのものでも、それは「複製物」、つまり焼いたディスクと同じく、コピーと同様のものとみなされるという見解のようです。つまりインストールしたまま出した場合、複製権の侵害になる可能性があります。
しかしバックアップの目的通り、マスターを紛失してしまった場合は、たとえ手元にマスターがなくてもバックアップを使うことには問題はありません。ただしそのソフトウェアの条項でそれらが禁止されていない場合に限ります。禁止されている場合は著作権法の問題以外にまたそちらとの条項での問題となりますのでご注意下さい。
■参考:c41 マスターソフトを紛失したので、バックアップを使っているのですが? (リンク切れ)
ただ、売る場合は「紛失」ではなく「譲渡」であるので、ソフトを所持することができないことになります。無償で誰かに渡す(たとえばコピーしたものをタダで渡す)場合も「譲渡」です。
アンインストールした場合は?
ではHDDに残ったものをアンインストールして、バックアップもすべて破棄して中古屋に売ったりオークションに出した場合はどうか。これは著作権者の譲渡権が消尽するため、基本的には合法です。ただし最初に書いてあるように、そのソフト毎の条項で引っかかる可能性もあるのでご注意下さい。
まとめ
以上のことから、複製物であるコピーをほかのディスクに焼いたりイメージとして残したり、同時にインストールされたものとしてHDDに残した場合は、それを破棄しない限り、売却、譲渡した時点で著作権法では違法となります。ただし、アンインストールして、コピーも破棄した場合はその限りではありません。しかし各ソフトの契約(約款)でケースは異なるので、その都度ご注意下さい。
ただ、現実的にアンインストールやコピー破棄をしているかのチェックを行うのは厳しいでしょう(何か問題起きた時にそれが違法根拠となる場合は十分ありますが)。故に、シリアルナンバー、アクティベーションなどを利用し、実際には中古販売に手間をかけさせる(解除するためには連絡が必要とか、事実上買い取り不可としてしまうとか)という手段で、それを統制する場合が多いようです。
このあたりの法律は難しく、中古ソフト裁判で見るように主張も全く異なるケースが多く、さらにその個別で事情が違うので非常に複雑わかりにくいのですよね。別にインストールしたまま売っている人も、それが違法と気づいてない人も中にはいるでしょうし(故意でやっている場合はまあ……)。
そしてさらに現在著作権法の改正が論議されており、このあたりにも変化を生じる可能性も否定出来ません。故に著作権法の動向には注目する必要があると思います。