今日買い物ついでにゲームショップに寄ってきたのですが、売り場面積がPS2とDSで逆転しているあたり、DSもソフトの本数が増えたなあと感じました。
で、DSのソフトを見たのですが、目立つのは脳トレ以来のいわゆる実用系、知育系ソフト。任天堂の『がんばる私の家計ダイアリー』やら『しゃべる!DSお料理ナビ』は言うに及ばす、最近ではサードパーティーでもこの手のソフトが大量に出ています。もはや主力にしているメーカーもあるといっていいくらいに。
まあよく言われていることなので今更書くまでもないですが、これらのソフトが大量に出た理由は、任天堂が脳トレ以来切り開いた層(ライトユーザー)にアピールできる上、開発期間、人員、費用がそれほどかからないといういいこと尽くめだった(とソフト製作会社には見えた)からでしょう。そして英語やら日本史やら教育系のソフトはおろか、今ではスクエニの「DS:Style」における『ワインのはじめかたDS』や『あなただけのプライベートレッスン DSではじめる ティップネスのヨガ』、はては『バーテンダーDS』『anan監修 女ヂカラ緊急アップ!DS』など、もう思いついたところは全部みたいな感じになってしまっています。
しかし、正直この鉱脈というのは、今までのRPGなどとは異なり、「一度その分野から出たら、次はいらない」という、2匹目のドジョウはいないところだと思うのですね。つまり、料理系のソフトが出たら、それ以上は続かない。同じように英語系のソフトも前のより上回ることはないと。まあ、どう考えても学習するという目的が同じ以上、似たようなソフトしか作れませんから。おそらくこれはメーカーもわかっているようで、それだからこそ「英語」という需要がかなり高い鉱脈以外は、あまりジャンルが重なりません。よって前述のようなワインなりバーテンなり女ヂカラなりといったニッチもいいとこのソフトが出てくるわけです。
まあ、それでもそういったソフトが売れていればよかったのですが、どうやら最近の売り上げを見るに、残念ながらさすがに売れてはいないようです。
ゲームソフト年間売上ランキング2007の8月までを見てみると、大量に出た知育、実用系の中でベスト100に入っているのは任天堂を除けば『TOIEC TEST DSトレーニング』と『財団法人日本漢字能力検定協会公認 漢検DS』『財団法人日本漢字能力検定協会公式ソフト 200万人の漢検DS』くらい(『平成教育委員会DS』と『脳内エステIQサプリDS』は番組タイアップなので、また別の意味合いを持つと思いますので省略)。ちなみに100位が6.6万本なので、それ以下となります。
あと、今年6月から9月までを調べてみたのですが、売り上げが分かる順位まで上がっていたサードパーティー製は、『聞く!書く!ことばをふやす!はじめてのえいごトレーニング えいトレ』の3万本のみでした。
つまり、少なくともここ3ヶ月では、これらの知育・実用系ソフトは任天堂のものを除くと今年前半でも6.6万本以下、6月以降では3万本以下しか売れていないわけですね。まあこのジャンルは他と比べて初週売上率が低いですが、それでも似たソフトがどんどんリリースされている現在、脳トレみたいに延々売れ続けるとは思えないので。
もはや漢検みたいに当たればバンザイ、外れてもダメージ低いし、採算取れそうだからいいや的な市場になっているのではないでしょうか(余談ですが、「漢字」というジャンルは残っていた金脈だったのだなと思いました)。おそらくよほど目新しいものがでない限り、この傾向は続くと思います。そして広報などいろいろな面で別格だった任天堂も、これからはその例外ではなくなってゆく可能性もあります。
さて、これが知育・実用系ソフトだけならばまだいいのです。しかし、脳トレやお料理ナビ以来、これらがDSの普及にひと役買っていた……どころか層によってはかなりの影響を及ぼしていたとすると、これらが飽きられることによって、DSソフト全体の売り上げに影響を及ぼさないでしょうか。
つまり、これらを目的でDSを買った層、いわゆるライトユーザーがこれらをつまらないと感じた時、DSはおろかゲームをすること自体やめてしまうのではないかということです。簡単に入ってきた層は簡単に抜ける可能性も高いのですし(まさにEasy come easy go)。すると、その人達にとっては知育・実用のついでとして売れていた他のアクションなどのソフト(『Newマリオ』など)も、売り上げを下げてしまうのではないでしょうか。
まあ、任天堂自体今までの売り上げは異常だったと言っているわけですし、これを織り込み済みで次に打てる手段があればそれほど深刻なことにはならないでしょう。まあパソコンが物置台になっている高齢者の家庭のように、置きっぱなしになるDSが多少増えるかもしれませんが。
ただ、これに対して次に打てる手段がなかったとしたら、この知育・実用系ソフトの衰退の流れは他のDSソフト、いや、下手をするとゲーム業界全体の売り上げにまで影響を及ぼす可能性というのはないとは言えないような気がします。というのもネット上のゲーム店員さん系ブログを見ていると、なんだかあまり売れている流れではないなあという感じがしないのですね。
■参考:Wii失速で見えてきた据置ゲーム機衰退の可能性
手をすると、知育・実用系ソフトもやるユーザーでも、それほどヘビーでない人は衰退の流れに乗ってしまうこともあり得るかもしれません。まあ、今のところそうなるためにはかなりのことを(悪い方で)クリアしなければいけないので可能性は低いですが、下手をすると昔から任天堂が最も恐れていたものが襲来する可能性もあるかもしれません。