今日、ふと読んだこのあたりから、オープニングやエンディング、挿入ムービーではない「プレイヤーが操作をしている時の歌曲『ボーカル曲』が流れるものって何があるだろう」というのを考えてみると、いろいろ面白かったので書いてみることにしました。
ゲーム内ボーカル曲の隆盛は1990年代中盤
ゲームでボーカルつきの曲が流れるというのは、すでに1980年代のアーケードゲームからありましたが、増えてきたのは1990年代の中盤、PCエンジンSUPER CD-ROM2やメガCDの登場あたりから。それはソフトがCD媒体になったことなど、家庭用ハードの性能が歌曲を収録出来るだけのものになったのが大きいでしょう。この時代の有名なものとしてはメガCDの『LUNAR』シリーズなど。
そこからの次世代機とされるセガサターンやプレイステーションの時代に、それらは全盛となります。しかし歌曲がついているといっても、多くはオープニングやエンディング、挿入歌が主で、完全に音が主役となっている音ゲーを除けば、ゲーム中、プレイヤーがプレイをしている時に音楽が流れるというものは少数でした。
ゲームプレイ場面での歌曲が少なかった理由
それには大きな理由が考えられます。ゲーム中の曲はBGM、つまりBack Ground Musicであり、多くの場合ゲームのプレイと共に流れる曲として、その場面を演出し、プレイヤーに聴覚から何らかの効果(主に爽快感や感動など感情への効果)を与えることを目的とされます(音ゲーの場合はその音楽自体がゲームの主役なので”Back”ではないですね)。
しかし、人の声、つまりボーカル曲というのは印象的にかなり強くなりがちなもので、ゲーム操作中にボーカル曲を使ってしまうと、そっちに印象が引っ張られてしまいがちになる可能性が高くなってしまいます。ともすれば演出どころか、人の声が気になることで操作の邪魔になってしまうような危険性まで出てきてしまうのです。
さらに、ゲームプレイ中は多くの場合効果音(SE)が流れますので、それと混じってしまうことで雑音になりやすいというのもあります。顕著なのはボイス付のゲーム(例えばアドベンチャーゲーム)で、声が二種類重なって両方聞き分けられなくなるという事態も起こってしまいかねないのです。余談ですが昔アドベンチャーゲームのスクリプトを打った時、ボイスのあるシーンでボーカルつき音楽を指定したというのは、一回だけしか記憶にないです(それもかなり音量抑えた)。
故に、ゲームを操作していない時ならともかく、ゲーム操作中でのボーカル曲の使用はかなり限定されていると思われます。
ボーカル曲がプレイ中に流れるゲームの一例
しかし、ボーカル曲の強さを踏まえてあえて持ってきて、演出にしているというゲームも存在します。しかも前述のようにボーカル曲の強さを利用しつつ、その場の演出を最大限に盛り上げるという効果的になっているものが多数あります。
探せば結構あると思いますが、そのうち特筆すべきものについて見てゆきましょう。
『サイコソルジャー』(SNK・1987年)
おそらく有名なものでは最古のプレイシーンでのボーカルつき音楽(これ以前があるかどうかは調査中)。
当時としては非常に斬新で、リアルタイムプレイヤーのインパクトは大きかったでしょう。
正直今聴くとちょっとボーカルの流れるところは浮いている感じもしますが、全体がこんな感じではなく、一部なので、掴みとして使われたという印象かなと。
『ダライアス外伝』(タイトー・1994年)
これはボーカル曲というよりは声をサンプリングして曲にmixしているとも言えますが、演出の強さを語る点で特筆すべきものなのでここに。
最初のステージからいきなり女性の声で「Close your eyes」とか流れてきた時は、初プレイ時はむしろ戸惑ったくらいのインパクトでした。しかし慣れてくるとのめり込み、ゲーム全体の演出に非常に効果的になり、のめり込む一因になったのを思い出します。
人気曲「FAKE」でも声が流れますね(”いしみね”と聞こえる)。
『豪血寺一族』シリーズ(アトラス等・初代は1993年)
初期ニコニコで超有名になった『レッツゴー! 陰陽師』の曲はもともと格闘ゲーム『豪血寺一族』シリーズ(『豪血寺一族 闘婚』)の曲。このゲームシリーズ特徴として、格闘ゲームのステージ中にボーカル曲(しかもなんかヘンな感じなの)が流れるというのがあります(たぶん2が最初で、あとはシリーズ恒例で何曲か。闘婚が一番多いかな)。
この曲が、他の格闘ゲームとは違う独特の世界を作り出していました。
ちなみに今年春頃、シリーズ開発元のノイズファクトリーが廃業してしまいました。残念です(さらに同時期、シリーズ作曲を多く手がけていた田中敬一(でんちゅう)氏も作曲から転職されてしまったようです)。サントラショップは復活するらしいので、期待。
『ファイナルファンタジーⅦ』(スクウェア・1997年)
おそらくこのテーマでの一番有名な曲かも。使用シーンはラスボス曲である『片翼の天使』。どれだけボーカルつきの曲のインパクトが強いかというのを証明しています。しかしラスボス戦というゲーム中でも最高に盛り上がるシーンで使われたことで、最高の効果を挙げているでしょう。
究極戦隊ダダンダーン(コナミ・1993年)
コナミのアクションゲーム。あと当時のゲーメスト読者には別の意味で有名な(キャラのいる)ゲーム。
これもステージ最中で歌曲が流れるが、引退前の子門真人が歌っているのが有名。
豪血寺同様、世界観もキャラも濃厚なので、インパクトのあるボーカル音楽が負けておらず、相乗的な演出効果を産み出している。
ちなみに移植が全くないのだが、待ち望まれる。
『スプラトゥーン』『スプラトゥーン2』(任天堂・2015&2017年)
最後に思い出した、現役プレイ中のもの。
ステージ曲は、ボーカル曲ではあるのですけど、それ自体が個性を発揮しているよりもけっこう音楽に溶け込んでいる印象があります(どちらかというとサンプリングに近い印象)。しかしその絶妙なところが、弱すぎず、しかし邪魔したりせず、絶妙なところで音楽の演出効果を出している印象。でも単体で聴くとちゃんとボーカルソング的に聞こえるのも面白いです。
ただ、ヒーローモード最終曲である『シオカラ節』は、ボーカルソングとして聞こえ、最高の盛り上がりを演出している感じ。
その他
ほか、Twitterなどから教えてもらったもの
・『ツインイーグル』(セタ・1988年)
……シューティング。アーケード版で洋楽ロックのような歌曲が流れる。
■ツインイーグル / Twin Eagle ノーミスALL – YouTube
・『キアイダン00』(日本テレネット・1992年)
……PCエンジンスーパーCD-ROM2のシューティング。最終ステージで、古のロボットアニメ的な音楽が背景に流れる。
■PC Engine Longplay – Kiaidan 00 – YouTube
・『里見の謎』(サンテックジャパン・1996年)のラスボス曲
……ある意味で有名。ラスボス戦でボーカル曲。ただ、曲の良し悪し以前に、使われているシーンから浮いている印象は否めない。
■里見の謎(PS用ゲーム) part2 いきなりラスト – ニコニコ動画
ゲーム内で歌曲が流れるものがあったら注目してみよう
最初に語ったように、OPEDやムービーなど非プレイ時のボーカルソングは多いですが、ゲームプレイ中のボーカル曲はそれに比べるとそこまでは多くありません故にそれが使われていた場合、どんなシーンなのかというのを注目してみると面白いでしょう。けっこう名曲も多いと思うので。