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ゲーメストの発行元、新声社の思い出

このブログを読んでいる方なら、かつて存在したアーケードゲーム雑誌『ゲーメスト』の名をご存じの方は多いと思われます。

さて、ゲーメストが廃刊してしまったのは、その発行元である新声社が破産してしまったからなのですが、実はゲーメスト本体は採算がとれていたようです。それなのに何故破産したのかということを、新声社(主にゲーメスト以後)の歴史から見てゆきましょう。

零細出版社がアーケードゲームブームに乗る

新声社はもともとは学術参考書を販売していた神田の小さな出版社でしたが、1986年4月当時のビデオゲームサークルの手によって、当時商業誌としては全く存在しなかったアーケードゲーム専門誌『ゲーメスト』として創刊されます(正直このへんはよく知らんけど)。

この経緯もあってか、他の雑誌には見られない文字ばびっしりの攻略情報、そしてそれによって生まれる大量の誤字という独特のスタイル(?)を生み出します。その個性の強さ、そしてアーケードゲーム専門誌がこれ1冊しなかったというのもあり、零細出版社からの発行であるにもかかわらず、ゲーメストはその地位を築きます。

そして、1990年代初頭の格闘ゲームブームにおいてアーケードゲームの人気が沸騰した時、攻略や新作情報の他、技表やキャラの強さの情報(ダイヤグラム)などを求める声に対して、ゲーメストは確実に応えることで、人気を伸ばしてゆきます。

 

ゲーム関連グッズ販売に進出

ちなみに当時、アーケードゲームグッズを扱うマルゲ屋を神田にオープンし、グッズを売っていたのですが、当時このようなゲーム系グッズ、特にアーケード系を売る店が全くなかったので、かなり重宝しました。特にサイトロンのサントラは、ここに行かないと見つからないものが多かった。何せネットなんてない時代ですし。今持っているサントラの多くもここで購入したものです。あと、毎週のようにゲーム大会をしていて、私もたまに行ってました。

さて、ここらへんで格闘ゲーム自体の人気に加えて、アーケードゲームにもキャラ人気が発生してきます。当時、『サムライスピリッツ』の「ナコルル人形」というのを売り出したのですが、硬派ゲーマーの「そんなもの出すな!」との声に反して、これがどうもとてつもない人気だったらしく、これ以降新声社はグッズ展開に力を入れはじめます。そしてこれが悲劇のはじまりでもあったのです。

 

マルゲ屋をあちこちに展開

まず、マルゲ屋を各地に展開しはじめます。これは当時、同じくアニメやゲームグッズの人気が出てきたため、アニメイトがどんどん出店していたり、ゲーマーズが各地にオープンしていたのを受けて、マルゲ屋も同じようにしたのだと思われます。一時期は全国の主要都市はおろか、池袋やあまりゲームにもアニメにもなじみのない荻窪にも出店してましたし。ちなみに池袋はすぐ近くにゲーマーズやアニメイト、まんがの森があったりと、どう見ても競争が激しいところ。まあこのあたりで経営の下手さを見られればよかったのですが……

さらに、神田神保町に自社ビルを造ってしまいます。そして地下をマルゲ屋、1階をゲーセンにしたのですが、これも後に悲劇のもとになります。ちなみに当時、このあたりの古本屋でバイトをしていたのですが、近くに古いけど広くて50円でできるゲーセンや、メーカー直営店があったのに(しかも全国1位を出していたスコア強豪店)あの狭い店舗じゃあ……

でも、このあたりは後から考えてこうなだけであって、外からは順調に見えたのですよね。

 

ゲーメスト以外の雑誌創刊&休刊

あとは、ゲーメスト以外にも新雑誌を創刊します。それはファンロードタイプの投稿雑誌、『ゲーメストワールド』、漫画雑誌『コミックゲーメスト』、コンシューマゲーム雑誌 『ゲーメストEX』など。これらの雑誌も数年で休刊してしまいます。実は『ゲーメストワールド』と『コミックゲーメスト』については、当時これらの漫画雑誌で活躍していた人(主に同人出身の人。出世頭は吉崎観音氏かな)が、現在でも活躍していると考えると、全く無駄ではなかったと思います。

印象深いのは、本物のストリートファイターZEROシリーズで登場したの「かりん」は、ここで連載されていた中平正彦氏の『さくらがんばる』からのキャラですし、麻雀漫画『むこうぶち』で有名な天獅子悦也氏の餓狼伝説シリーズマンガにおけるギースのかっこよさですね。あと、『メタルブラック』の、ゲームデザイナー自らが描かれたマンガなんてのもあったのですが、4回で終了してしまって残念(このへん、ゲーメスト本誌で連載していた漫画とちょっとごっちゃになってるかもしれないです)。

ついでに、攻略本のようなものとして「ゲーメストムック」を大量に出していました。ただ、いいものはいいのですが、悪いものだとただの技の写真集&説明書でしかないものがあったりしました。でも、シューティング系のムック(『ダライアス外伝』『レイストーム』)はかなり重宝しました。

このへんで実は他社からもアーケードゲーム雑誌が創刊されます。主には『ゲーム必勝ガイド』(白夜書房)、『アーケードゲームマガジン』(ソフトバンク)などですね。ただ、前者は1年半程度、後者は7号程度で廃刊してしまいました。アーケードゲームマガジンは、セガサターンマガジンテイストでわりと好きだったのですけどね。

 

格闘ゲームの退潮と新声社の迷走

しかし1990年代も後半になると、だんだん格闘ゲームの勢いが落ち着いてきて、以前ほどの雑誌の勢いがなくなってきました(かわりに人気の出てきた音ゲーの攻略は消極的だったらしい)。さらには店舗展開もだんだんとライバル企業であるゲーマーズ等が伸びてきている反面、それに対抗できずに、どんどんと閉店してゆきます。このへん、情報ではどうもほかの会社からの提携話があったようなのですが、それをつっぱねていたようです。

さらに新雑誌をいくつか創刊したのですが、それも二番煎じもいいところ。『X-MARKET』は『じゃま~る』ですし、『デジタルミント』はありふれたアダルトゲーム雑誌。特に『ゲームNAVI』はひどく、狙いは当時出てきていた『じゅげむ』のような一般層向けゲーム雑誌だったのでしょうが、私が見たのはハードメーカーで配布しているただのカタログでした。

 

突然の倒産

そして、1999年9月、いきなり破産します。ゲーメストはその前号まで何事もないように発行されていました。原因はマルゲ屋店舗拡張による赤字、自社ビルの負債が原因となったようです。元凶は同族経営企業における放漫経営なのでしょうが。ゲーメスト自体は最後まで採算がとれていたようです。この後、新声社跡地を見に行ったのですが、全て閉鎖されて、管財人の張り紙がしてあったのが寂しかったです。

 

ただ、編集者やライターの方は多くが新しくアスキー(現エンターブレイン)で創刊された『アルカディア』に移籍したのは、ご存じの方も多いでしょう。

ともあれ、会社的には残念なことになってしまいましたが、この新声社、そしてゲーメストというのは一時代を築いたことは確かでしょう。そしてその魂は、アルカディアほかいろいろなところで引き継がれているのかもしれません。

 

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