ゲームにおける「体験版」の歴史

ゲームの体験版は多くのゲームで存在します。今だとネットを介して簡単に手に入れられるものですが、自分が学生時代は体験版の入手が難しかったものでした。今日はそんなゲーム体験版の歴史について。

セガサターン体験版

体験版の概念がほぼなかった時代

「体験版」というものを「ユーザーが製品の一部が収録されたものを手に入れて自分のハードでプレイするもの」とするなら、ファミコン、スーパーファミコン時代にはないも同然でした。それは当時ソフトの主流だったROMが高価で価格的に体験版として配るには向いていなかったからです。

当時から試遊という形でゲームを体験させるものはありましたが、多くは製品が発売されてからのものでしたし、開発中のものを遊ばせるというのは商談会やイベントなどかなり限られた環境であったと思われます。

ただパソコンゲームにおいては、コンパイルの『ディスクステーション』のように、フロッピーの中に体験版を収録するものもありました(これを体験版と定義するかは難しいですが)。

光学媒体による体験版の登場

1990年代に入ると、光学媒体であるCD-ROMが急速に普及し、ゲーム機においてもメガCDやPCエンジンCD-ROM2といったものが生まれます。そこで体験版と言えるべきものが生まれます。たとえば1991年に出たPCエンジンCD-ROM2で『スーパーCD-ROM2体験ソフト集』というもの。これは注目度の高かった『天外魔境II』や『ドラゴンスレイヤー 英雄伝説』が収録されたもの。
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しかし体験版といえどゲームソフトとして購入するのもので、このソフトも1000円でした。当時はまだまだCDといえど製造コストが高かったことが大きいでしょう。

PS・SS時代、体験版は貴重だった

しかし1990年代半ばにさしかかり、プレイステーション、セガサターン、3DOといったハードが発売されると、個人向けの無償体験版が数多く出されるようになります。この時にはCD-ROMがかなり普及して、製造コストが安くなってきていたのも大きいでしょう。

しかしながら入手が簡単だったというわけではありません。いくら製造コストが下がっているとはいっても、無制限に配布することは出来ないので、限られた状況でのみ配布されました。たとえばゲームソフト店に配分されたものの店頭配布、そしてゲームイベント。東京ゲームショウなどのイベントでは体験版を配布することがわかると人が殺到し、少しでも知名度のあるようなものだったら長者の列が出来ることも珍しくありませんでした。体験版時代が価値のあるアイテムだったのです。

ほかにも当時の主なゲームメディアはゲーム雑誌でしたが、それら、とりわけ各ハードの専門誌には時折CDがついてきて、その中で体験版を遊べるということもよくありました。

プレプレ・フラッシュセガサターン

PS時代当時、SCEIは年会費5000円で「プレイステーションクラブ」というファンクラブを運営しており、そこで年に4~6回程度『プレプレ』というPS用CD-ROMマガジンを発行していました。当然PSで再生出来るものなのですが、そこには体験版はもちろんのこと、様々なコンテンツが入っているものでした。

プレプレ

ちなみに1年に1回程度、その年のSCEIのCMが収録されている号があったのですが、自分はそれが欲しいために入っていました。まだ動画サイトなんて存在せず、日本のインターネット自体も黎明期だったような時代で、自力で録画でもしていない限り過去のCMを見られる機会なんて滅多になかったので。

同じような体験版を含むコンテンツCDというのはセガサターン側でも出しており、「フラッシュセガサターン」というものが配布されたりついてきたりしました。下の画像は「おちかづき編」という白サターンについてきたものですが、そこで後に大ブームとなる『サクラ大戦』のOPムービーが公開されていました。

フラッシュセガサターン

体験版でも名を残す『ファイナルファンタジーⅦ』

体験版を語る上で欠かせないのが『ファイナルファンタジー7』です。

PSに移籍後初のFFシリーズである『ファイナルファンタジーⅦ』にはかなりのプロモーション展開が行われましたが、そこでは体験版もかなり重視されます。

まず、スクウェアが出した3D格闘ゲーム『トバルNO1』においては、FFⅦの体験版がつけられました。非常に注目度の高かったタイトルなので、この体験版を目当てにトバルを買うという例もかなりあったようです(ちなみにFFⅧでも武蔵伝で同じく体験版を付属)。

また、東京ゲームショウで体験版を10万枚も配った話も有名です。これらの広報展開も功を奏したのか、FFⅦはゲーム史に残る売り上げとなりました。

PCゲーム方面の体験版

PCゲーム方面でも1990年代後半からゲームの体験版をCDで配ることが多くなりました。当時の『テックWin』『コンプティーク』などパソコン雑誌には毎号CDが収録されており、体験版がついてきた時代がありました(この時代のコンプティークはあっちの方も)。一般パソゲーでは光栄系が多かった記憶。あとAOLとかインターQのプロバイダ契約アプリも付属していたり。

PC、とりわけ美少女ゲーム雑誌においてはCDを経て最近でもDVDで収録されています。けっこう歴史が長いです。

ゲーム配信の先駆けと言えるサテラビュー

ちょっと時代が戻りますが、スーファミでも体験版の配信は存在しました。それは衛星サービスであるサテラビュー。これは通信の時代に先駆けて放送(衛星データ放送)をゲームの配信に使ったものですが、そこでオリジナルゲームのほか、体験版も配信されていました。今では当たり前となった通信による配信の先駆けとなった存在でしょう

体験版は媒体から配信へ

PS、SS時代は盛んに作られ、配布されたCD-ROMの体験版ですが、PS2時代以降は減少してゆきます。理由は色々と考えられます。ひとつはDVD(もしくはドリキャス独自のGD-ROM)になり製造コストが上昇したこと。さらに体験版の主目的である販促が費用に対して効果が得られないと思うところが多くなったこともあるでしょう。実際に体験版でまずい感じのものを配布して予約キャンセルが相次いだという話もあるくらいですので。さらにこの時代になるとPSの頃のようなゲームバブルも一息ついて、そこまで資金をかけられるメーカーが少なくなったのもあるかもしれません。

それでもドリームキャスト、PS2の時代になるとモデムやLANコネクタ自体はついてはいるものの、まだインターネット黎明期で通信が一般的ではなかったのと、そして何よりディフォルトでは配信してもそのデータを収めるHDDがなかったため、体験版はROMとして存在し続けました。

ただ、DSやPSP、それにPS3の時代になると本体にwi-fiが備わり、公式からダウンロードをするのが当たり前に出来るようになります(まあDE初期はちょっと苦労したけど)。そしてそこでは当然体験版も配信されました。携帯機は元々ゲームのデータサイズが小さかったこと、さらにPSPはHDDがもともとついていたことが大きいでしょう。

このあたりからすでに光学ディスクとしての体験版はソフトの添付物や特典はあるとしても、コストのかかる配布型のものは相当減少したのではないでしょうか。ただ広報的目的で限定した場所で体験版を配るという例はあるようですが。

パソゲー(とりわけエロゲなど)では今でもROM媒体で体験版を配布することはありますが、これも今では同じものが簡単にDLできるので、イベントなどでの広報的な意味合いが強いと思われます。

体験版だし手軽に手に入る方がいいんじゃないかな

今では通信に繋げば手に入る体験版も、昔はこれほどまでに貴重なものだったのです。今は公式ショップで選べばすぐ手に入るわけで、かなり便利になったなと思います。

とはいえ体験版なのですからグッズ化するより、それを遊んで製品を待ってもらう方が本意でしょうし、コストにかかわらずそういう意味でも今のほうがいいのではないでしょうか。

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