「空気を読まない中杜カズサ」のほうで著作権侵害の非親告罪化について書いていたのですが、その時にふとこの問題とゲームミュージックについても関連があることに気付きました。
■著作権侵害の非親告罪化では、著作権者と取り締まる側も被害を被る可能性がある – 空気を読まない中杜カズサ
それはもちろん許諾なくアップロードされているゲームミュージックの取り締まりというものもありますが、それは他のコンテンツでも同じことが言えます。しかし、ゲームミュージックが持つ特性が、それとは別の形でこの法律と密接に関わってくる可能性もあるのではないかと思ったのです。
その特性とは、ゲームミュージックの権利登録形態。
以前もちょっと書きましたが(参考:アニメ化の際、何故ゲーム音楽はアニメで使われないのか )、ゲームミュージックには著作権の管理方法がポピュラーミュージックなどと異なる場合が多いです。それはJASRACのような著作権管理団体に全てを委託しているわけではないということ。いや、BGMに関しては委託してあるもののほうが少ないでしょう。それは、JASRACのシステムがゲームミュージックを使用する想定と合わないからでしょう。すなわち、自社での再使用の可能性が高く、他であまり使われることのないゲームミュージックは、いちいち許可を取るよりも自社で管理したほうがいいと。そうすれば続編ゲームで使ったりする時にもいちいち手続きをする手間が省けますしね。
まあ利便性と著作権管理を委託して得る利益を天秤にかけた時、利便性が上回っているということでしょう。
しかし、JASRAC登録していないにもかかわらず、ゲーム音楽はテレビなどで放送の際に使用されることが多くなってきております。それはゲーム音楽の音源が発達して、普通のBGMとして使用しても違和感なく、むしろ上質なレベルに達するようになったことがあるでしょう(ちなみに昔の音源を否定するわけではなくて、テレビのBGMに合うかという点で)。
厳密に言えば、ゲーム音楽を使用する際は、その制作元なり著作権を持つ人に許諾を得る必要がありますが、現在は一部を除いてほとんど無許可のまま行われているのが現状でしょう。実際知っている会社の音楽が使われていたことがありますが、ここに問い合わせが来たと聞いたことはないので(これが例外という可能性もありますが)。
ですが、特にそれが問題になったということは聞きません。まあゲーム会社も特に損害を被るわけでもないので、事実上黙認状態になっているというのが正しいところだと思います。
しかし、この著作権侵害の非親告罪化では、そういったものも法律を厳密に解釈すれば引っかかることとなります。たしかにこれまでの通り放送する側も著作権者も別に気にしてなければいいはずなのですが、ここで悪意の第三者が、両方ともOKなのにもかかわらず、「これ、著作権侵害の放送をしてますよ」と言ってくる
まあ実際そんなのはごくごく少数だとしても、「そういうことが起こりうる」という恐れがゲーム音楽を使うということを躊躇させてゆくのではないかと。
まあたしかに各メーカーに許可をもらえば放送できますが、そこまで手間をかけるなら、あらかじめあるライブラリからとってくるほうが早そうですし。
これがゲームミュージックにとってどう作用するかというのは不明です(現状でも著作権料は支払われていないわけですし)。でもGM好き視聴者の立場では「なんだかつまらんなあ」と思いたくなるでしょう。それよりも、放送する側がたいへんです。BGM素材が大幅に減るのですから。それに、過去放送でOKだったものもこの法律が施行されると引っかかるかいちいちチェックしなければならないので、負担はかなりものになると思います
つか、この法律、最初のリンク先でも触れましたけど、誰も得をしないような気がするのですよね。
あと、ゲームミュージックに関して言えば、PCゲームのメーカーでは、二次創作(アレンジ)に関してはOKを出しているところもあります。しかしこの法律が施行されると、そういうところも本当は合法なのに違反をしていると見なされる可能性もあるのですし、そこも問題になりそうな気がします。
とにかく、この法律の動向には注目してゆきたいと思います。
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