スポンサーリンク

「見えない」企画が「見える」企画に負ける状況への危惧

興味深いエントリーがありました。

■企画書プレゼン主義の弊害

 ※リンク切れ

これは、おそらく会社や他者に出資してもらってゲームを作る立場の人は、必ず一度は味わう障壁のような気がします。つまり見える部分、それはグラフィックだったり今までで当たりが出たシステムだったりのウケがよくて、見えない部分、それは新機軸のシステムだったりバランスだったりは評価されにくいってことですね。

それを苦心して言葉で何とか説明しようとするわけですが(場合によっては試作版を作ったりね)、それで理解が得られることは希と言えるでしょう。

さらに、直属の上の人(例えば自分が平社員だとしたら、そのチームのディレクターやプロデューサー)はわかってくれても、その上の人までわかってくれるとは限らないんですよね。さらにその上の人が運良くわかってくれても、その更に上の立場の人……

 

でも、そういった「見えない部分」ってのが、実はゲームの人気、ひいては長い目で見た売り上げを左右しているように思えるのですよ。

今でも名作と呼ばれる『タクティクスオウガ』ですが、あれはストーリーや音楽が素晴らしいだけではなく、複雑なのにゲームバランスが絶妙というところが人気の秘密だと思います(トレーニングの面倒さが唯一の欠点だけど)。あとシューティングでは『斑鳩』や『レイフォース』はその絶妙なバランスが評価されています(『バトルガレッガ』はちょっと特殊だけど)。

さらに格闘ゲームで例を取ってみると、現在でも評価されているものというのは、ほぼ総じてバランスが取れているものだと思うのですね。もしくは多少能力差があっても努力でどうにか出来る範囲であったり。『バーチャファイター2』『スト2』はその典型でしょう(ダイヤグラム最下位キャラのザンギエフでも腕次第では勝てたし、意図的最弱キャラダンでもかなり上手い人なら勝てましたしね)。

しかし逆にバランスが悪くて、早々にゲーセンから姿を消した、もしくは改良版や続編がリリースされたゲームもありますね。『ヴァンパイア』オルバスのザリガニパンチあたりがその典型かと。というか90年代の格闘ゲームは続編ごとにバランス調整っていうのが当たり前になっていましたね。

でも、これらは結果論で、最初から評価されて出された、というのは全体から見ると相当レアケースなのではないでしょうか。

 

何でこうなったのかっていうのはいくつも理由がありますが、主なところはゲームソフトビジネスというのが「たった1回の失敗もできない市場」になってしまったからではないでしょうか。

現在、ソフトの開発にはたとえ億単位の金がかかると言われています。これは何もPS3だけではありません。広報費等も含めれば、他のハードでも億までとは言いませんが似たようなことが言えます。

ですので、例えゲームのことを理解している人でも、その「失敗できない」がプレッシャーとしてのしかかって、思わずわかりやすいゲームに走ってしまうのではないでしょうか。つまり自分では「これ面白くなるかも」と思っても、それがその上役まで通じるか、もしくはショップまで、ひいてはユーザーまで通じるかということを疑問に思ってしまうのです。しかしそれを強行して、もし失敗すれば責任を取らされるか金を失うという……

余談ですが、洋ゲーでやけにとがったゲームが多く、当たり外れも差が激しい(外れはバカゲー方面に行きやすい)と言われるのは、こういった土壌が違うからかもしれません。

 

故に、結局の所誰にでも説明が可能な「見える」企画が出され、通ってしまい、面白さが誰にでも見えるわけではない企画は、敬遠されるというわけです。

ま、正直ゲームに限った話ではなくて、アニメや映画、他の様々な企画で同じ現象が起きていると思いますけどね。

これを打開するためには、みんなが見えないゲームの面白さを察知する能力を身につけて……と言いたいところなのですが、そんなのはほぼ不可能です。たとえゲーム制作者、良くて偉い人までわかったとしても、それを売る問屋や店の人がわからなければそこでアウト(でも、店員さんのやっているあちこちのブログを見る限り、こっちの人の方が上の人よりも魅力とかをわかってるんじゃないかとか思うことがありますけどね)。

本当なら例えゲームのみえない部分がわからなくても、「やってみろ。これはワシが責任を取る!」と言ってくれるとカッコいいのですけど、偉い人にも株主とか出資元とかさらに上の存在がいますからね……前述のように高額の開発費かかる現状では尚更。

ただ、この類似問題は続編問題などとして大昔、それこそスーファミの時代から言われてきましたが、打開の傾向はあまり見えませんでした。それはやはり、そのような見た目のゲームが売り上げの主流になってしまったことからだと思います。

 

しかし、現在になってその状況が動き始めたように感じます。それがネットだったり同人だったり。

今はネットでどこからでもダウンロード出来る時代なのですから。例えばこれがタダだって数年前なら信じられなかったでしょう。

TOMOSHIBI.NET – SOFT – GAME – BraveGear ~ Tribute ~

 

さて10年後、既存のパッケージソフトは在り続けるとは思いますが、ただでさえ少ないパイをネットや同人に食われている、なんてことが起きうるかもしれません。ま、個人的には正直それでもいいんですけどね。面白いゲームさえ出来れば。あ、でもご飯が食べられなくなるのは困るなあ……

最後に、『レイディアントシルバーガン』からのメッセージを一つ。

Feel visible matter. (目に見えるものを感じよ)
Feel invisible matter. (目に見えないものを感じよ)
There is life everywhere. (いたるところに命は存在する)

 

タイトルとURLをコピーしました