ファミコン時代、ゲームを持っていないのに攻略本を買っていた思い出

ゲーム攻略本と呼べるものが登場したのは、ファミコンブームが起きた初期。それまでも雑誌の特集やページや『ゲームフリーク』などの同人誌は存在しましたが、商業出版として一冊の本で刊行されたのは1980年代中盤にさしかかる頃だと思われます。

その頃小学生だった自分は、ゲームを持っていないのによくゲームの攻略本を買うことがありました。その理由を当時の攻略本の状況、そしてゲーム情報などのことも含めて書いてゆこうと思います。

ファミコン神拳奥義大全書

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ファミコン時代のゲーム情報の少なさ

ファミコンブームが起きたのが1980年代中盤。しかしこの時代、インターネットは一般社会に影も形もない時代。そうなるとゲームの情報というものは限られており、その主な情報源はゲーム雑誌でした。しかし、当時のゲーム雑誌の刊行速度はほとんど月イチ(『ファミ通』の前身である『ファミコン通信』も週刊化は1991年)。故に当時のゲームユーザーは情報に飢えていたと思われます。しかも行動に制約のある子どもならば尚更でしょう。ゲーム誌ではない少年ジャンプにおいて『ファミコン神拳』のコーナーが人気であったのも、そういった需要が高かったからでしょう。

ちなみに当時のジャンプ編集部とファミコンのことについては当時担当だった鳥嶋氏の面白いインタビューがあったので以下に。

鳥山明、桂正和らを大物漫画家へと導いた伝説の編集者・鳥嶋和彦氏がゲーム業界に与えた影響は大きい。カドカワ会長・佐藤辰男氏との対談のなかで、さくまあきら氏や堀井雄二氏を引き連れゲームで遊んだ新入社員時代に始まり、『ドラクエ』『クロノ・トリガー』の誕生秘話から、今のゲーム業界に対して思うこと、編集者としての信念を語る。

ゲーム情報本として読んだ攻略本

しかし、ゲーム雑誌以外でも出ていたゲームの書籍がこの攻略本でした。つまり攻略本はゲームの攻略に使うだけではなく、ゲームの情報欲を補填する存在であったのです。

当時こういうふうに攻略本だけ買うのは自分くらいだと思っていましたが、ネットが広まり子どもの頃の思い出を聞くと同じことをしていた人がわりといたようです。それだけゲーム情報が渇望されていたということでしょう。

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安価だった攻略本

しかし、攻略本だけを買ったのには理由があります。それは安かったこと。たとえば少年ジャンプから出ており、ライター時代の堀井雄二氏も参加していた『ファミコン神拳奥義大全書』の価格は360円(当時消費税なし)。これは当時のジャンプコミックの一般的価格よりは高かったですが、それでもマンガ一冊分としての安さです。

しかしこれだけではなく、当時有名だったケイブンシャの黄色本、すなわちゲーム必勝法シリーズの値段は380円。徳間書店など他の出版社のものでも580円程度という、子どもにも十分買える値段だったのです。

ちなみに当時のファミコンソフトの値段は、基本的に4500円かそれ以上(例外的にnamcotの一部のみ3900円)。普通の子どもがしょっちゅう購入出来るものではありません。故にソフトの代わりに安価に入るそれを読んで楽しんでいた側面もあるでしょう。

初期はゲーム攻略本というより紹介本だった

ただ、当時のゲーム書籍は「攻略本」というよりは、「紹介本」、つまりゲームの攻略にまでは突っ込まずに、そのゲームを紹介するものも数多くありました。前述の『ファミコン神拳奥義大全書』もそうですが、ほかにも初期に刊行が多かった徳間書店の『ファミリーコンピュータ大図鑑』シリーズや、ケイブンシャの大百科シリーズの一部でもある『ファミリーコンピュータ大百科』などもそうです。ここでは複数のゲームがまとめられて掲載されており、攻略的な様子は薄かったですが、当時は面数が少なくループ方式で難易度が上がってゆくものが多かったですので、そもそも攻略を記事に書くこと自体が難しかったのかもしれません。しかしそのうち攻略に対する需要が生じ、それ専門の本が売られるようになります。

それらが攻略主体の本として一気にブレイクしたのは、史上空前のヒット作『スーパーマリオブラザーズ』であることは確実でしょう。これは多数の出版社から攻略本が出されました。ただ、個人的には『ドルアーガの塔』の攻略本の存在が大きかったと思います。だってアレなしで解くのは小学生には不可能な代物でしたから。

カオスなものも多数

しかしこの頃の攻略本は、まだゲームメーカーの管理体制が行き届いていなかった、また作るほうもノウハウがなかった時代というのもあり、かなりカオスなものも数多くありました。

たとえば明らかに間違っている攻略、重要なところが載っていないもの、ごまかしているもの、ファミマガのウソテクを流用しただろという記事が載っているものなど。特にバグじゃないと出て来ないようなものが載っている本もありました(ケイブンシャのボンバーマンなど。隠しと言うよりバグ面である51面以降)。あと、隠し情報まで書いて回収騒ぎになった件も攻略本(冬樹社のドラクエⅢ本)、雑誌(ハイスコアにおけるドラクエⅡ記事)ともに存在します。

ファミコンブームで出せば売れると言った時代、粗悪品も多くあったのですが、今見るとかえってそれが趣深いです。少し年月が経つとメーカーチェック体制がしっかりしてきてそういったものはあまり見られなくなるので。

ゲームの大容量化に比例してのページ数増加と高価格化

攻略本はファミコン時代を通して比較的安値で売り続けられました。それこそケイブンシャのシリーズは380円のままでしたし、その他の攻略本も500円前後と安価なものが多く、自分もそれだけを買うことがわりとありました。以下は当時購入した双葉社のゲームボーイ『ゼルダの伝瀬 夢をみる島』の攻略本。

双葉社『ゼルダの伝説夢をみる島 必勝攻略法』

しかしスーファミ時代になると、ゲームの容量が大きくなるのと比例してページや制作にかかる費用も増大したのか、定価も上昇してゆきます。それでも安価なものはありましたが、1992~3年くらいにさしかかると、多くが700円前後に価格になっていたようです。もっとも自分はその頃にはもう攻略本買いはしなくなっていて、金はマンガやゲーセンにつぎこんでいたのですけど。

その後の攻略本

その後PS、SS時代になるとすっかり攻略本は1000円を超えるのが当たり前になり、膨大なものになると数冊巻など容量も非常に大きくなりました。

しかし現在ではネットの普及と出版不況により、攻略本も限られたタイトル以外が出なくなった感じです(まあ格ゲー全盛期に技載せただけの本とかあったけどね)。

ただ、思い返すとこういう攻略本ってただ攻略を載せるだけではなく、ゲーム雑誌同様ひとつのゲーム文化だったと思うのです。それはいいもの、悪いもの両方含めて。