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ゲームビジネスと狼少年の法則

さて、最近自分の中で「狼少年の法則」というのがブームになってたりします。ことゲーム業界においてもこの「狼少年の法則」ってものがあるんじゃないかなあと思ったわけです。
さて、「狼少年の法則」ってのは何なのか。まあ私が勝手につけた言葉ですが(というか多分哲学か心理学とかで似たような言葉あるよね)、つまりは「嘘をつく者の発言は信用されなくなる」ということです。そのまんま狼少年(ケンのほうにあらず)。
まあはてなの方ではそれを利用して真実を嘘に見せかける、ってな話をやったわけですが、本来は「嘘をつくと信じてもらえない」の方ですな。

で、ゲーム業界においてどこか「狼少年」なのか。それは「前評判」と「実際の面白さ」の差にあると思います。
「前評判」は何によって作られるのか。人為的なものではまず「パブリシティ」でしょう。ここのパブリシティは広義の意味で、単なる広告宣伝だけではなくて、雑誌社に紹介してもらうとか口コミをしかけるとか、そういう展開全てを含みます。
ことゲームはやってみるまでは内容がほとんどわからない媒体です。故にこれら購入前の情報が、購買意欲を決定するに当たって重要なものとなります。
しかし、これを読んでいる方々も各種広告を見て面白そうだと買ったものが、実は……という経験が1度はあるのではないでしょうか。その時に思うことは「騙された!」。
まあパブリシティというものはどんな手を使っても購入させることが目的ですので、そこに嘘(明確な嘘ではなくても、それと錯誤するようなもの)が混じっていることがあります。しかしそうでなくても、「その人にとって合わない」という場合、それはやはりその人にとっては「騙された!」ということになってしまいます。
さて、この「騙された!」と思った人の取る行動は?それは狼少年で言えば「まだ本当かもと思って羊小屋に”行く”」か「もう嘘だと思って”行かない”」の2通りでしょう。それをさっきのゲームに当てはめると「買う」「買わない」の2通りになると。
さて、今までの現象は別に珍しいことではありません。しかし、困ったことにこの現象は何もパブリシティ、つまり発売側が起こした販売促進行為だけで起こるものではないのです。
例えば、面白いと評判だったゲームがあります。そしてそれの続編が出るとき、すでにそのゲームは「狼が来たぞ」と言われているわけです。つまり、「○○の続編だから面白いに違いない!」バイアスがかかっているというわけですね。(逆に言えば、それだけ注目を最初から集めているので続編ゲームが出やすい、と言えるのでしょうが)
本当に狼が来ていれば、つまり面白ければ何の問題もないのですが、そうはいかない場合もあるでしょう。その結果どうなるか。買う人は多かったけど町の中古ショップにはそのソフトが溢れて、買い取り価格は下がり、販売はワゴン行き……よくある光景ですね。
ま、あと続編ってのは前作とどうしても比較されますから、それ以上のものを生まないと評価されない、というハンデもあると思います。でもそう簡単に超えるアイディアは出ない。故に技術の進歩を前面に押し出す、なんてことが多いでしょう。
しかしこれ、何もクソゲーでなくてもこうなる可能性はあります。
あまり万人受けしないけど合う人には面白いゲーム。口コミで評判を集めてしまったが挙句、そのシリーズが大きく注目される。だけどもともと万人受けするタイプのゲームじゃないので、多くの人にとっては期待はずれとなってしまい、そのシリーズ自体を滅ぼしてしまう、と。別に誰が悪いというのではなくて、偶発的な悲劇ですね。
あと、続編じゃなくても大会社の場合、「メーカー期待値」なるものとかも出てきてしまいますね。だから今任天堂やスクエニは、やけにとがった(万人受けはしないけど、面白いゲーム)ゲームを作るのが難しくなってきている、というジレンマを抱えているのかもしれません。
ちなみにその狼少年とは、何もその商品のみではなく、それを紹介した媒体にも少なからず影響を与えると思います。まあ最近で言えば過剰な広告のわりにまわりでやっている人が誰もいない「セカンドライフ」あたりでしょうか。さて、これの「狼少年」はセカンドライフ以外に誰がなるのやら。
それでもつまらない商品が売れないのは仕方ないでしょう。しかし困ったことに、それの影響はすでに売ってしまったその商品よりも、それに関係するあとの商品が被ってしまいがちなことなのです。
漫画とかの場合、その影響はその商品そのものに表れます。逆も同じで、もしその本が期待値以上に面白かった場合、増刷が行われてそのままベストセラーになることも多々あります(全部が全部そうではないですが)。しかしゲームの場合、そうなることはまだ少数です。
ご存じの通り、現在のゲーム市場の大半はまだ初回発注が全てという傾向です。つまりどんなに人気が出ても、リピートが必ず行われるというわけではない、よってゲームの人気があっても品切れのまま入手不可能って事もある。その辺は昔『ゲームにおけるリピート生産の幻想』あたりで触れましたね。

ゲームにおけるリピート生産の幻想
SFCから次世代機への移行期、PS、SS陣営からCD媒体の利点として様々なものがアピールされ、それがよくゲーム雑誌などに載っていました。一番大きなものは「大容量化」と「ソフトが安価になる」というところだったでしょう。 さらに「即時のリピート...

 
かつて、「たけしの挑戦状」という伝説的クソゲーがありましたが、タイトーではその後で「たけしの戦国風雲児」というソフトを出しました。『人生劇場』シリーズを長年出し続けたタイトーですし、そのソフトもファミコンのボードゲームソフトとしてはかなり出来のいいものでした。しかし売り上げはかな~り悪かったようです。それは、前作の「騙された!」心理が類似名のこのソフトに直結してしまったためと思われます。
それと逆のパターンは、「続編が待ち望まれる隠れた名作」でしょうか。
つまりもし1作ごとに面白い、つまらないを繰り返すメーカーがあったら、みんなはつまらないものばかり買って、面白いものは買われないと、そんな現象が起きるかもしれないのです。というかもう起きているような……
もしかしたら、人気作を出したメーカーは次のソフトが普通以下の出来だった場合、「狼少年」にならないために、もしかしたらわざと広告を打たずに期待値を下げて、次の次の売り上げを下げないようにする……なんてコトをしている可能性もあるかもしれませんね。
しかしこれらの問題、ずっと昔から問題になっているような気がしますが、未だに解決されていないのが現状だと思います。
ネットダウンロードで序盤だけでも体験することが当たり前になれば、少しはこの現象は変化するのでしょうか?まあどれはどっちかというとメーカーの努力というより、受け取り手の面白いゲームを見逃さないという意欲や貪欲さが必要な気がしますけどね。
広告だけで多くが決まる業界になってほしくない、というのが私の思いです。

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