さて、『ゲームにおける目立つ技術と目立たない技術~ムービーとロード時間』のエントリーについて、トラックバックでツッコミをいただきました。
■操作性統一のための努力
http://ameblo.jp/tidalbeach/entry-10027495876.html
読ませていただいたところ、全体として納得できるものでした。と同時に、自分の言いたかったニュアンスと微妙に異なって捉えられている部分もありました。というのは、別に「ここ10年、操作系が全く進化しなかった」というわけではないのですよ。もっとも、その前までにストレスを無くすための例としてロード時間の短縮を挙げてきたため、混同させてしまったかもしれません。今思えばこれらの事項は別のエントリーとして書くべきでしたね(その辺わかりにくくてすみません)。
そんなわけでまとめ直しということも兼ねて、ゲームの操作性の進化について書いていこうと思います。
あと、今日はかなり長くなってしまったのでそのつもりでお読みください。
■ゲームのコントローラの歴史■
まず、わりと古くからゲームファンだった人の中にはご存じの方も多いと思いますが、今でこそ正面両手で持ち、左手で方向キー、右手でボタン(2~6)、スタートボタン、そしてLRボタンやアナログキーといったコントローラが(Wiiを除く)全ハード共通となっていますが、ファミコン以前のハード……たとえば『ダイナビジョン』や『インテレビジョン』といったハードはそんなのではなく、片手でスティックをコントロールしたり、ボタンが電卓のようについていたりといろいろなものがありました。
『ぴゅう太』とか、キーボードが当たり前のようについているゲームも珍しくなかったですし。
■参考:オデッセイさん
http://www.ne.jp/asahi/cvs/odyssey/videogames/set_frame.html
しかし、『ファミリーコンピュータ』のブーム以降、前述の標準系は定着し、ボタンの増加や振動、アナログの追加などはあれど、20年以上もハードを超えてこの基本形が守られてきました。
■ファミコンコントローラの試行錯誤期■
で、当初はこのコントローラでの開発が行われてきましたが、中には「ポートピア連続殺人事件」などのアドベンチャーや、RPGなど、他ハードではキーボードがあって当たり前、というものの制作の際には、そのまま移植することが出来ませんでした。
補足をすると、当時のRPG(『ウィザードリィ』など)やアドベンチャーはキーボードに「ヒト」「ミル」みたいなコマンドを打ち込んでいくものでした。
しかしここで、『ドラゴンクエスト』に見るような「コマンド選択」というものが生まれました。それがファミコンにおけるRPGの元祖、そして基本となります。
■ゲーム操作の「成熟」■
そしてドラクエ以降RPGがいろいろと生まれました。そしてそのコマンド入力方法は、いろいろな面で工夫がなされてきました。
戦闘シーンで言えば、こんなのがあります。
これは『エストポリス伝記II』ですが、戦闘シーンでのコマンド選択は十字型カーソルになっており、↑+ボタンで魔法、↓+ボタンで必殺技、←+ボタンで道具、→+ボタンで防御、そしてニュートラル&ボタンで攻撃と、2回以上方向キーを押すことをなるべくさせない作りになっていて、ストレスが溜まりにくかったのを覚えています。
あと、前回紹介した『グランディア』の戦闘も、かなりグラフィック中心のコマンドで、直感的に操作できるようになっていましたね。
■ゲーム操作の「標準化」■
これらの工夫はゲームをする上での向上ですが、実は本質的な部分は変わっていないのです。それは「コマンドを方向キーを動かして(文字、グラフィック問わず)選択して、ボタンで決定する」という部分。
あとドラクエ以降、どのゲームでも「最初のカーソルのままボタンを連打してれば攻撃する」なんてのも標準になってますね。
これはどうして標準になったのか。それはリンク先でも言及されているように、ドラクエがあまりにも大きかったからだと思います。
ちなみに同じことは、アクションゲームにも言えると思います。すなわち「スーパーマリオ」の影響があまりにも大きくて(もしかしたら「ドンキーコング」かも)、今ではジャンプはA(たまに↑キーのもありますが)攻撃orダッシュはBなんて感じで。
他には落ち物パズルや美少女アドベンチャーも同じことが言えるかもしれません。
あと、ジャンルにこだわらなければ「決定はA、キャンセルはB」なんてものそうですね。
これらは別に誰が決めたわけでもなく、なんとなく標準化がされていったものだと思います。
リンク先には
ざっと流れをまとめれば、
1.ゲーム黎明期、「新しいことを模索」した結果、操作がバラバラでわかりにくくなっていた。 (混乱期)
2.ゲームの複雑化にそなえ、ここ10年で操作の統一や一本化、ルール化が行われた。 (統一期)
3.さらにゲームに親しみのない人を取り込もうと、新たな仕組み(DS,Wii)が現れた。 (革命期?)
とありますが、これの1~2期って感じですね。
1の時代には、たくさんの操作系があったでしょう。しかしそれは次第に標準化がなされてきます。
しかし標準化というのは、あえてマイナスと捉えれば、別々に開発していればその製品が他よりも勝っている部分を削ってまで、他のものと合わせるということでもあります(必ずしも良い機能の部分を削るとは限りませんが)。
もっともユーザーにとっては、たとえそこでちょっと性能が削られても、各機種の間で広く互換を持てた方がいいという方が多いでしょう。 ゲームにおいては、ユーザーにとっては「説明書を読まなくてもわかる」「他のソフトと混同しない」という利点ですね。
これ自体は非常によいことだと思いますし、そのお約束の範囲内で様々な改良が加えられ、進化してきたことは間違いないと思います。
■標準化されたものの限界点■
しかしながら、ファミコンから20年、ほとんどがそのお約束の枠の中ではこれ以上手を入れにくいほど完成してしまったのではないでしょうか。
しかしゲームは工業用品の標準化とは異なり、操作することへの「飽き」が生じてくる可能性があります。
しかし、その標準化を守っていたために、とがった方向への発展性は失われてしまったのではないでしょうか。
もちろん、わざとABボタンを逆にしろとか、使いにくい操作をしろというわけではありません。しかし、その標準にこだわるあまり、別の、もしかしたらそれよりも良い形になり得た操作方法を考える機会をも捨ててしまった可能性はないだろうか、と思うわけです。
しかしながら、それをソフトに言うのはあんまりかもしれません。というのも、家庭用コントローラはやはり標準コントローラ「両手で持ち、十字キーを左手の親指で操作し、右手親指でボタンを押す」から抜け出すのは不可能だからです。たしかにアイディアは生まれたでしょうが、その制約がある以上、かなり絞られてしまうのも仕方ないでしょう。
■Wiiコントローラは閉塞を打破する?■
私はWiiのリモコン型コントローラの試みをかなり高く評価しています。というのは、初代ファミコン(ことによるとゲーム&ウォッチ)以来、長く続いてきた操作系である方向(十字)キー+ボタンのコントローラを両手で持つという組み合わせから、脱却しようとしている点なのです。
20年以上前に横井軍平氏が中心となって作り出したインターフェイスは、20年間これを疑問に思わない標準の形となってきました。
しかし、このインターフェイスは完成され、既存の成熟したゲームを出すにはよいのですが、その先、飽きられないための新しい娯楽性を求めるのにはもう上が限られている、とも思えます。
そこで、20年間の蓄積を一度リセットして、あのような片手コントローラを作ったことは、この先に訪れるだろう閉塞感を予想して、天井が見えないところまで降りた、ということで、場合によっては、「パックスパワーグローブ」のような黒歴史的なものになるリスクを負ってまで、先を見据えて挑戦した点が素晴らしいと思います。
私が思うに、Wiiコンはよく、「ゲームになじみのない人でもわかりやすい」というコンセプトで言われていますが、その裏側には、すでに現在のコントローラで完成してしまったが故に閉塞状況に陥るかもしれない、もしくはすでに陥っている状況を打破するために開発されたものではないかと思うのです。
コンセプト的にはDSのタッチパネルも同じですね。
もっとも今のところ、まだ物珍しさの段階を出ていませんが(発売してまだ1クォーターしか経ってませんし)、これから先、今までのコントローラでは出来なかったような、予想も出来ない面白い操作方法が生まれるのではないかと期待しています。(もちろんパワーグローブはないにせよ、ジョイボールみたいになってしまう可能性もありますが。まあジョイボール嫌いじゃないんですけど、一般的には売れないだろうなあ…)
ちなみに、それまでの完成されたものを捨てきらなかった(クラシックコントローラ)のも、営業的な面はあると思いますが、私はいいと思います。世界史のなんとか王朝ではあるまいし、過去を否定しなくても未来は構築できるのですから。
さて、かなり長く書いてしまいましたけど、こんな感じですかね。しかし今の時代(厳密にはWiiより前)を操作性の成熟と見るか、はたまた停滞と見るかは、個人の主観によってかなり異なると思います。
私はとがった製品が好きなので、昔の操作性が独特なゲームも好きなのですが、これは人によりそうなので何とも言えません。
ちなみに私が小学生時代からアーケードのビデオゲームにも、「ループレバー」(『怒』)「トラックボール」(『サイバリオン』)さらに昔は「2レバー」(『空手道』『クレイジークライマー』など)「ボリューム」(『アルカノイド』系)なんていうとがった操作性のものが多くて、そういうのを触るのが好きでした。『ストリートファイター』も、一番最初は感圧の大きな2ボタンだったんですよ。
そんなわけで、せっかくとがった変化をみれそうな昨今、どんな工夫が成されるかに期待したいと思います。