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ゲーム史に欠かせない存在の功績と思想を記した『ゲームの父・横井軍平伝 任天堂のDNAを創造した男』

多忙なときに読んだ本を。

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ゲームの父・横井軍平伝 任天堂のDNAを創造した男 : 牧野 武文

 

横井軍平の功績

私が横井軍平さんの存在を知ったのは、任天堂を退社したあたりから。それまでは任天堂があまりクリエイターを表に出さない企業であったため(まあその時代のゲーム業界では、任天堂に限ったことではありませんでしたが)、退社した直後から数少ないまでもゲーム雑誌などメディアに出てきて、「ゲームボーイ」のみならず「ゲーム&ウォッチ」やそれ以前の数々の任天堂玩具、それに数々の有名ソフトにまでも関係してきた人がいるということを知り、衝撃を受けました。

その中で、特に横井さんのことについて書かれていた本が『横井軍平ゲーム館』という本。これはどこかで一度読んだだけですが、私に横井氏の功績のみならず、「枯れた技術の水平思考」という考え方において、強い衝撃を受けました。

しかし、その存在を知った後、横井さんは事故で帰らぬ人となりました。

 

横井さんが亡くなったのは1997年、私はその前にインターネットを始めたばかりで、セガBBSなど当時あったゲーム掲示板に入り浸っていました。まだ2chでさえ存在しない時代、Yahoo掲示板がギリギリあったかどうかという時代です。その時に横井さんの訃報が入って来て、その時にそれらに追悼の言葉が溢れました。露出の少なさから知名度が低い開発者だと思っていた自分は、潜在的に知名度が高いことに衝撃を受け、改めてその影響の大きさと、惜しい人を亡くしたんだなということを強く感じました。

その後、ネットの広まりと共に知名度やその功績、そして「枯れた技術の水平思考」という言葉も広まってゆきます。

あと、テレビ(おぼろげな記憶ですが、所ジョージが出演している番組で、隠れた偉人を紹介するようなものだった気が)でも紹介され、横井さんの知名度が上がったと思われます。
そして再び横井さんや「枯れた技術の水平思考」が目立ち始めたのは、かつて『バル-ファイト』などを横井氏と作った経験もある岩田総氏が任天堂の社長になり、そこに任天堂の思想として横井氏や「枯れた技術の水平思考」が出てきたあたりからかと。

■参考:Philosophy of Nintendo

■参考:後藤弘茂のWeekly海外ニュース 任天堂 岩田聡社長インタビュー(1)
マンマシンインターフェイスを直感的にすることがカギ

 

『ゲームの父・横井軍平伝 任天堂のDNAを創造した男』

前置きが非常に長くなりましたが、そんな横井氏の功績がまとめられたのが、この『ゲームの父・横井軍平伝 任天堂のDNAを創造した男』という本。この本は先述の『横井軍平ゲーム館』を横井氏と制作された牧野武文氏が書かれたもので、横井軍平さんの任天堂時代の経験や行動を書き記した本となっています。これには「ゲーム&ウォッチ」や「ゲームボーイ」、「バーチャルボーイ」などの開発時の話などが『横井軍平ゲーム館』でインタビューをされたときに御本人が話されていたことを含めて書かれていて、横井さんがその製品を開発したときにどのようなことを考えていたのかということが細かく書かれていて、非常に興味深い本となっています。

また、今まであまり出ていなかったような「ウルトラハンド」から「ゲーム&ウォッチ」の間に生み出された製品のこと、十字キーとボタンを逆に配置したゲームボーイのことなど任天堂時代のちょっとしたエピソード、それに『横井軍平ゲーム館』の後、任天堂を退社されて、株式会社コト時代にどのようなことを考えていたのかというのも書かれているのが読んでいて興味を引かれます。

余談ですが、自分が小学生のころ(もしかしたら幼稚園だったのかも)初めて買ってもらったゲームとも言えるのがゲーム&ウォッチの「ポパイ」で、当時これに熱中しまくったのですが、これ、宮本茂氏の制作だったのですね。初めて知りました。
最初に語ったように、横井さんはゲームの発展に大きな功績を果たした人ですが、その人の考え方や行動が御本人の口から語られたことなどからまとめられた本として、ゲーム史を語る上で貴重な書籍だと思います。ゲームの歴史が好きな人のみならず、ITなども含めて今のあらゆる「ものづくり」をする人にとって読んで全く損はないと思われます。

あと、先述の『横井軍平ゲーム館』のほうも、廃刊となり、一時期かなりのプレミア価格がついていましたが、この度復刻されるということです。既に予約しました(6/25発売)。

横井軍平ゲーム館 RETURNS ─ゲームボーイを生んだ発想力
横井軍平ゲーム館 RETURNS ─ゲームボーイを生んだ発想力

ちなみに書いていて、1997年あたりの横井さんがインタビューにわりと出てきていたあたりの雑誌の存在を思い出したので、ちょっと発掘してみようと思います(たぶん『ゲーム批評』あたりだったと思う)。

 

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