ゲームの音楽というのは、当然ですがそのソフトにデータが入っています。もっとも、スーファミ時代までは主に内蔵音源を鳴らさせる命令、そしてメガCDやプレステ以降は容量の増加に伴い、そのソフトに入っている音楽データを鳴らすというものに変わりましたが。そしてソフトに音楽データが収録される形も、CD-DAから内部へアーカイブとして収録されるなど、今まで変化を遂げてきました(このへん、もっと細かく書きたいのですが、非常に長くなるのでそれはまた後日)。これコンシューマ、パソコンゲームともだいたい似ている傾向だと思います(アーケードはちょいと違う)。
さて、CD-DAの後、ゲームの音楽は内部にアーカイブされる形に変化しました。現在、多く使われているのはOgg Vorbisという音楽フォーマット(もっとも最近ではソフトの大容量化に伴い、無圧縮WAVデータをそのまま、もしくは独自のアーカイブ形式にして収録してしまうものも多くあるようですが)。然し、現在一般的に流通している音楽ファイルフォーマットといえば、MP3ですよね。では、何故これが使われていないのか。それは、mp3にまつわるとある事情があるからです。
MP3特許の主張
実はmp3、最近はあまり話題になっていないので知らない人もいると思いますが、実はこれは特許を持つ企業が存在しているのですよね。それで、一部の企業がその権利を行使して、ライセンス料を請求しています。
もっとも、普通の使用、一般ユーザーのエンコードに対して料金を請求された事例は存在せず、主にはそれを利用したソフトを作っているメーカーに対してのものですが。実際、Appleやマイクロソフトのアプリに搭載されているMP3エンコーダやプレイヤーは、その会社にライセンス料金を支払っていると思われます。
そしてこの請求が行われた時期(1990年代後半くらい)、MP3を使っている各ベンダー、そしてフリーソフト制作者にも、ライセンス請求が来るのでは? という恐れが広がりました。有名なMP3エンコードソフトに「午後のこ~だ」というものがありますが、これも一時期配布停止していたのは、この理由によるはずです。
ゲーム制作でも主張されうるMP3特許
これはゲームソフトでも例外ではありませんでした。実は、ライセンスにはそれについての記述もあったのです。
■Royalty Rates – mp3licensing.com
上記サイトを参考にさせてもらうと、ゲームの場合5,000本以上の場合にはUS$2,500.00を支払うように記載されています。ただし、MusicServiceの項を見ると、非商用活動においてはライセンスは必要ないとしているようです。収益が$100,000に満たないサービスについても同等と記載されているということ。
余談的追記:現在、同人ゲームにこれが適用されるかどうかわかりませんが、出来る限りゲームに使う場合はmp3を避けた方が得策でしょう。アドベンチャーゲーム制作ツール『NScripter』や『吉里吉里』など、多くのツールはoggに対応しているので。
Ogg Vorbisの存在
しかし、同人程度ならともかく、ちょっとしたゲームソフトならこの数字をクリアする可能性はいくらでもあります。その時にライセンス違反となり、万が一訴えられると、会社の存亡にかかわるような自体になってしまいます。故に、最初から払うか、もしくはMP3を使わないというどちらかの方法にならざるを得なかったわけです。
そこで同時期、このMP3ライセンス問題に端を発して、誰でも自由につかえることを目的としたフォーマットが作られました。その結果出来たのがOgg Vorbis。
これは使用に関して誰でもが無料で使え、圧縮率や音質もmp3に負けないものでしたので、こういったゲーム方面で広く使われるに至ったのです。
ちなみに昔、一部のパソゲーにあった、収録音楽をmp3データとしておまけにつけるというものを最近見ないのは、別にケチではなくてこういう事情があるのですね(かといってoggで配布したところで、PC以外ではあまり聴けるプレイヤーないし、WAVは重すぎるし)。
そういうわけで、oggへのプログラム対応技術も進んだ現在、ゲームの内部ではmp3はほとんど使われていないというわけです。まあ、普通にゲームをしている分には見えないところですが、mp3ライセンスの問題はゲームにも影響されていたということですね。
余談:そういえば、Wiiの写真チャンネルでは、バージョン1.0から1.1へのアップデートの際、MP3対応がなくなり、AAC対応になりますが、このライセンス問題と関係あるのかな?
■参考:MP3のライセンス問題はその後どうなったのか : Timesteps