樹原凉子さんという方がいらっしゃいます。さてこの名前、ゲームミュージックのファンでも知っている方は少ないかもしれません。実際作曲担当作品は私の知る限り「俺の屍を越えてゆけ」と「リンダキューブ」の歌のみなのですから。
しかし、この方の曲は私の知るゲームミュージックの中でも5本の指に入るくらいです。
得てしてゲームの作曲&ボーカルをゲーム業界以外の作曲家の方とかアーティストに頼むと、イメージがかみ合わず曲が浮いてしまい、ゲーム音楽としては失敗してしまうケースが多々あります。しかし、この「俺の屍を越えてゆけ」も「リンダキューブ」も聴いた限りはゲームミュージックではなくポピュラー音楽としてラジオから流れていてもおかしくないイメージなのに、お見事なまでにゲームに合っています。もちろん、ゲームデザインの桝田省治氏の演出が巧いのもあるでしょうけど。
まず、「俺の屍を越えてゆけ」から。
テーマソングの「花」の歌詞が、「短い命を必死に生きる」というゲームの雰囲気にぴったりしていてオープニングから感動させます。もっともこれ、元々あった曲を桝田省治氏がこのゲーム用にもらったそうですけど。
ゲーム中BGMとしてはゲームの舞台が古代日本なので和風イメージのものが多いですが、突然中華風が混じったり(「雅」)クラシック風シリアスになったり(「百鬼」)、コミカルな曲が流れたり(「マンボ」「往来、All right!」)もします。あと、主題歌「花」の節がアレンジして利用されているものがあるのも特徴です。(「あがき」「花、決意」「昇天」)
余談ですが、ゲームの演出方法としてこの「メイン曲をアレンジ応用してあちこちで使う」という技法わりと好きです。(「レイディアントシルバーガン」とかでも1面の曲「帰還」の節が使われてますね)
さて「リンダキューブ」の方ですが、注目はボーカル曲3曲ですね。まあBGMも音源は少ないですが(初出がPCエンジンですので)、なかなかいい曲が揃っています。(「ジングルヘル」は有名なクリスマスソングのアレンジですが、ゲームをやってから聴くと「gingle Hell(地獄の鐘の音)」の意味がわかります)
ボーカル曲は「リンダの子守歌」「リンダのテーマ」「トライ・アゲイン」とあり、どれもいい曲ですが、特に好きなのは「トライ・アゲイン」です。
「旅立ちの日が、とうとう来たのね」から始まるこの曲は、これもまたゲームにぴったりと会わせて作られた曲で、未来に向かって羽ばたくイメージを受けます。ラストエンディング曲にぴったりです。イヤこの曲はほんとお気に入りで、iPodに入れて聴きまくってます。
ゲームですが、現在「俺の屍を越えてゆけ」も「リンダキューブアゲイン」(PS版)もPSザ・ベストが出ているので手に入れるのはわりと簡単でしょう。(ただ初代PSなので、「リンダキューブアゲイン」のほうは、中古屋でないとないかもしれませんが)グラフィックにこだわらなければ安い上に面白いので非常におすすめです。ただリンダキューブのほうにはちょっとサイコホラーが混じりますのでご注意を。何しろこれを出すためにPSの赤三角シールがはじめて用意されたってくらいですから。
しかしこれらの音楽CDの入手ですが、amazonで売っている「俺の屍を越えてゆけ」サントラはともかくとして、「リンキューブ」はちょっと困難です。
セガサターン版の「リンダキューブ完全版」に、同梱特典として「リンダキューブサントラ」がついているのですが、サターン末期に出たせいで、出回りがあまりよろしくありません。中古で売っていても定価くらいの高値がついていますので、サントラにはちょっと高いかもしれません。何かの機会があれば是非聴いてください。