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ネット必須化によるゲーム史におけるアーカイブ断絶問題

昨日、以下のようなツイートをしました。

こちらは伊藤剛さんがガラケー向けの「ケータイコミック」について語ったことへのRTで書いたものなのですが、実はこのゲーム史におけるアーカイブの断絶問題については、去年の冬コミで出した同人誌『GAME MUSICについてなんかいろいろ書いてある本 2016 Winter』のほうで丁度触れていたところになります。

せっかくの機会ですので、その同人誌から一部(最初の項目)を引用してみます。

 

前文

ファミリーコンピュータが発売されてから30年以上が経過し、さらにアーケードゲームを含めると、ゲームというものがすでに歴史として語れるくらいの年数を経てしまいました。故に近年、ゲーム音楽の歴史的側面に着目されることが多く、そのような記事や特集も各種メディアで組まれることがよくあります。そして私自身もゲーム音楽の歴史をまとめてみたいと思って、少しずつ書いたりしています。こう書くとなんだか学術的というか仰々しいですが、要は「最近のゲームばかりではなく、昔のゲームについても注目が集まっている」という捉え方でよいでしょう。
しかし、近年のゲーム業界を振り返ってみると、今後ゲームを歴史的側面から捉えるにあたり、非常に問題となることがあります。具体的には、近い未来に過去のゲーム、つまり現在のゲームをプレイしたり研究しようとすると、その時それが出来ない、もしくは難しくなる、ということ。今回はゲームの歴史上におけるその問題について書いてゆこうと思います。

 

ゲームのネット必須化と終了する時の消失危機

今までは中古ソフトや配信がアーカイブとなっていた

ゲームというものは永続的に新品が売られ続けるものではありません。その期間の長い短いはあれど、必ず販売が終了となる時(新品のリリースが停止する時)がやってきます。コンシューマゲームならどんな長くてもそのハードの寿命が終わってしまえば終了となるでしょう(まあ最近でもファミコンやドリームキャストで対応ソフトが出ることもありますが、あれはメーカーも通してないので特殊例として)。
しかし、新品の販売が終了して、それを手に入れておらずとも遊ぶ手段というものは昔から存在しました。それは「中古ソフトの購入」というもの。中古ソフトはソフトを安く手に入れるための手段としてあるばかりではなく、そのように販売が終了したソフトでも遊べるように出来る仕組みという側面が大きかったのです。2000年前後で起こった「中古ソフト販売禁止裁判」において、中古禁止に反対の声が大きかったのは、そういう側面もあったからと思います。
さらにネット配信、据置機ならPS3やWii、携帯機ならDSiやPSPの時代になると、いわゆるネットでのゲーム配信における過去作品の配信が始まります。任天堂系ならバーチャルコンソール、PS系ならゲームアーカイブスなど。これにより、中古ではなくメーカーが一次販売するもので、昔のゲームをプレイするということが可能となりました。さらにコンシューマゲーム機の枠を飛び出し、パソコンでプレイする「Steam」で新作とともにそういった昔の作品が遊ぶことも可能になっています。

サービス終了するとプレイが不可能になるソーシャルゲーム

ここ数年ではコンシューマゲーム以上の存在感を見せているものがあります。それはソーシャルゲーム(ソーシャルゲームの定義はいろいろあるでしょうが、ここでは「ゲームプレイに通信を必須とする、スマホをメインとする携帯電話デバイスを利用してのゲーム」としてください)。携帯電話(ガラケー)、そしてスマートフォンの普及にあわせて拡大したソーシャルゲーム市場は、今ではコンシューマゲーム機を凌駕するほどのシェアとなっています。そしてソーシャルゲームのリリース数も非常に多くなり、新作が出ない日がなと言えるくらい、連日新しいゲームが開始されています。
それだけの数が出ているとなると当然競争も激しくなり、採算が取れないゲームが出て来ます。そうなるとそのゲームは終了するしかありません。この期間は短く、最近では1年未満どころから数ヶ月でサービスを終了させてしまうというゲームもかなり多くなっています。中には数日、というものも(まあそれは採算ではなく著作権問題とかほかの要因であるのですが)。

しかしこれらソーシャルゲームは通信を伴うゲームです。そしてゲームのデータの多くはローカル(ユーザー側のスマホなど)ではなく、ゲーム会社の持つサーバの方にあります。つまり、ゲーム会社がそのゲームサービスを終了してしまうと、プレイが不可能になってしまうのです。
前述のように、今までは過去のゲームをプレイしたいと思ったら、探す困難はあるにしても中古を手に入れることが可能で、プレイも出来ました。しかしながらソーシャルゲームの場合、たとえ過去のそれをプレイしたいと思っても、同じようにプレイすることは不可能なのです。何故ならそのゲーム自体が残ってないし、通信ゲームである以上中古市場も存在しないので。
つまり、将来においては、過去のゲームを研究したい、記録として残したいと思っても、ソーシャルゲームという、サービスが終了したらもうプレイが不可能で存在自体確認出来なくなってしまうものの性質上、非常に難しいことになるのです。

 

ガラケーゲームなどですでに影響が出ている

しかしこれはソーシャルゲームだけに言えることではありません。ネットを利用することでゲームを成立させているものには全て言えることです。すなわちMMORPGやブラウザゲーム。そしてガラケー時代のゲームといったもの。これらも通信を利用して、サーバのデータを利用してプレイすることが主体となるものですが、ソーシャルゲーム同様サービスが終われば遊ぶことはほぼ不可能になります。
そしてこれらのゲームは現在のスマホにおけるソーシャルゲームより以前から存在していて、サービス終了したものもかなり多く、しかも終了してから時間も経っています。そして作成した会社自体がすでになくなっているところもあります。

特に困難になっているのが、2000年代前半まで隆盛を誇っていたガラケーに配信されたアプリのゲーム。すなわちiモードなどキャリアのサービス経由で配信されたゲームや、ガラケーのみでサービスが行われたソーシャルゲームの類。現在では既にガラケーの市場自体が急速に縮小しており、これらのサービスも多くが終了、もしくは終了の方向に向かっています。したがってそれらで配信されたゲームの多くはプレイ不可能となっています(ローカルのみで出来るiアプリゲームなど例外もありますが)。

さて、そうなるとこの時代のゲームはどんなだったか、と調べたくなっても、それをすることがかなり難しく、ゲームによっては不可能になっているのです。
ガラケーゲームの他には、mixiのブラウザゲームがあるでしょうか。こちらも2000年代前半に『サンシャイン牧場』とかがブームになりましたが、現在は当時あったほとんどのmixiゲームは終了しています。これらもあの手の育成ゲームでは大きな存在ですし、ある意味現在大人気の『モンスターストライク』と歴史的繋がりがないとは言えませんので歴史の経緯を示す時には必要と思うのですが、プレイは不可能なのですよね。

 

でも根本的解決は非常に難しい

このように今主流となっている、ネットが必須のゲーム(とりわけゲームデータの大半がサーバ側にあるゲーム)というものは、その性質上サービスが終了してしまうとユーザーにはプレイが不可能になってしまうわけです。
最初に語ったように、現在は最新のゲームだけではなく、時間が経った過去のゲームにも注目されることが多くあります。しかし、この時代はあとからそのゲーム内容について研究をしようとしても、かなり難しくなることが予想されます。何故ならそのゲームを実際に遊ぶことが不可能なため。今だとまだ10年経っていない位で多くの人の記憶に新しいところですが、これが20年、30年と経ってしまうと、それらのゲームがどういうものだったのかは記憶から薄れ、またプレイした事ない人には内容を伝えるのも難しくなってしまいます。

となると現在のゲームはその性質上ゲームが残せないため、ゲームの歴史という連続的なものを辿った時に大きな穴になってしまう可能性があります。これは何もゲームの歴史研究とかの問題だけではなく、もっと単純に「昔遊んだあのゲームが懐かしい」と思い、またプレイしたいと思うことがあっても、もう二度と出来ないということでもあります。

この問題は、多分もう少しすると顕在化することでしょう。しかしこれを完全に解決するのは残念ながら現在のところかなり難しいと思われます。第一の理由はそれがメーカーにとって利益にならないから、そのわりに負担が大きいので。故にそれこそゲームメーカーがこの問題を重視し(それがまず難しいですが)、その後総動員でアーカイブシステムを作成するくらいの大規模なことをしない限り。しかもそれでさえ権利問題が複雑に絡んでくるので困難です。それこそ本の図書館のように、国単位の主導でやるレベルじゃないと不可能なのかもしれません。

 

以上『GAME MUSICについてなんかいろいろ書いてある本 2016 Winter』P5~P7より。

 

ちょっと同人誌&夏コミの宣伝

同人誌の方ではこの後同じ特集テーマの中で、『レトロゲームの再発売や配信に存在する壁』『ゲームプレイ動画は後世の貴重な資料となるか』『ゲーム音楽のアーカイブについても考える』というのを続けて書いております(あとほかにゲーム音楽関連のこと)。

次の夏コミ、8/11(金)にツー59a『中杜D報告書』で出ておりまして、新刊と共にこちらを書いた既刊も若干数持ってゆくので、興味のある方はよろしくお願いします。

中杜D報告書の詳細 | Comike Web Catalog

また、DEEP@アキハバラ様でも委託しておりますので、そちらでも。

GAME MUSICについてなんかいろいろ書いてある本 2016 Winter | TinyBEEP

今回の新刊の内容はまた後ほどこのブログで書きます(これ書いている途中で刷り上がった分が届いた)。

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