今でこそ当たり前のように出来るセーブ&ロードですが、私が子供のころ、つまりファミコン時代のコンシューマゲームハードは今のように簡単にできるものではありませんでした。それは、本体にハードディスクやメモリ記憶領域を持っておらず、且つ現在のメモリーカードのように外部記憶媒体もほとんどなかったためです(一部にはありましたが)。しかしそのうちハードなどの進化によって、ソフトに記憶領域がついたり、周辺機器、そしてハードに記憶領域がつくことになります。
その歴史を見るときに、一番参考になるシリーズがあります。それが国内でもっとも有名なRPGである『ドラゴンクエスト』シリーズ。
今日はその歴史に沿って、データ保存の歴史を振り返ってみようと思います。ちなみに今日はとある意味で刺激が強いです。
ファミコンの誕生時のソフトは、多くに「データを保存する」という概念がありませんでした。故に、電源を切ったらハイスコアも表示も消える、といったものがほとんどでした(というかアーケードは比較的最近までこれだったような)。故に、雑誌のハイスコア募集などでは、写真に撮って送っていたりしていました。
しかし、そのうちゲームによってはデータを引き継ぐ必要性というのが出てきました。そこで生まれたのが「パスワード」。それを一番有名にしたのは、初代『ドラゴンクエスト』でしょう(パソゲーRPGとかではすでにあったかもしれませんが)。この時の文字数は20文字。しかし濁点などで書き間違えて、前の日のプレイをパーにしてしまう子供は多数いました。今ならビデオとかに録画しておくのでしょうが、そんなもの当時ほとんど普及してませんでしたからね(おそらくビデオ端子もないテレビを持っていた人が多数じゃないかと)。それからテクモの『キャプテン翼』やバンダイの初代『桃太郎伝説』など、多数のゲームにこのパスワードは使われるようになります。しかしながら、ゲームの拡大とともにそのパスワードの文字数も増えてゆき『ドラゴンクエストII』では最大52文字となり、この写し間違いで泣いた子供は数知れず。
ちなみに現在では、このドラクエIもIIもおパスワードは解析され、面白パスワードが出てきているようです。ちなみに(「くわた きよはら しのづか なかはた はら いしい」がわかる人は25歳以上)。
しかし、ここまで来るとパスワードによるセーブにも限界が来ます。そこで生まれたのが『ディスクシステム』。これは当時としては画期的でした。というのは、書き換えが出来るのもありますが、データがそのままセーブできたから。おそらくコンシューマゲームで「セーブ」という言葉が広まったのは、ここらへんからかなと思います。そして同時期にPCエンジンでも『天の声2』という、外部記憶媒体が登場します。全部ではありませんが(ここから先もパスワードは存在し続けたため)、だんだんとパスワードの必要がなくなってきます。しかし、ファミコンでは相変わらずパスワードでした。
しかし、ここで「バッテリーバックアップ」という技術が登場します。これは、ソフトの中に電池を持たせて、そこに記憶させるというもの(ちょいと雑な説明ですが)。これで、ファミコンでもセタのソフトを皮切りに、徐々に採用されてゆくようになります。あの1作目の『ファイナルファンタジー』でも採用されました。
そして、すでに購入に大行列を作るまでのソフトとなった『ドラゴンクエストIII』がファミコンで登場します。そこでもバッテリーバックアップが採用されたのですが、非常に不思議な仕様でした。というのは、電源を切る時の動作が「リセットボタンを押しながら電源を切る」という動作が必須だったこと。そしてこれを守らないと……
……と、データが消えることがあります。これがトラウマになった人は、かなりいるのではないでしょうか。実際、私もこの動画見てかなりドキッとしましたし。
ちなみに、リセットを押しながら消さないと、データが消える理由ですが、バッテリーバックアップ – Wikipediaによると、
ファミリーコンピュータはバッテリーバックアップを考慮していないプラットフォームだった。すなわちCPUとカートリッジのメモリ空間がCPUのバスを通じて直接接続されており、さらに一定容量以上のカートリッジは、カートリッジ内にメモリ空間を拡張するための制御回路(MMC, Multi Memory Controller)を搭載しバンク切り替えを行っている。このため単純に電源を切ると、電源を切断して回路の電圧・電流が低下した瞬間に、CPUやMMCが誤動作する可能性がある。カートリッジバス上のメモリ空間にSRAMが見えている(あるいはMMCが誤動作した瞬間に見えてしまう)最中にこのような状況が発生すると、SRAMのデータ化けを起こす確率が非常に高くなる。ファミリーコンピュータ用のカートリッジについて「リセットボタンを押したまま電源を切る」という操作を要求されるのは、リセットボタンを押している間はCPUの動作が完全に停止する為である。
ということみたいです。
だけど、たしかにFF1ではデータ消えた覚えはないのですよね。これはやはり天才プログラマ、ナーシャ・ジベリ氏の腕によるものなのかな?
しかし次の『ドラゴンクエストIV』では同じくバッテリーバックアップながらやや安定したのか、データ消失はIIIほどではなくなりました(こっちのほうはAIのバカさのほうが問題になったような)。
そして、ハードをスーパーファミコンに移したV、VIは、普通にスーパーファミコンのバッテリーバックアップが使われました。ただ、そろそろ電池が切れている可能性も高いのではないでしょうか。
これから先は、VIIでPSのメモリーカード、VIIIでPS2のメモリーカードと比較的最近なので割愛します。
しかし、こうやって見てみると、ドラゴンクエスト、特に勇者ロト編の歴史というのは、RPGの歴史の中核であるのと同時に、データ保存の歴史、そしてトラウマの歴史でもあるのだなあと感じさせますね。
ハードがこれまでと変わり、次にDSで出る『ドラゴンクエストIX』のセーブシステムは、我々に何かを見せてくれるでしょうか。