『源平討魔伝』の隠れた開発者メッセージ

神様は死んだ
悪魔は去った
太古より巣食いし
狂える地虫の嬌声も
今は、はるか
郷愁の彼方へ消え去り
盛衰の於母影を
ただ君の切々たる胸中に
残すのみ
神も悪魔も降り立たぬ荒野に我々はいる
故深谷正一氏に捧ぐ

これは80年代ゲーマーには有名な『源平討魔伝』のエンディングで流れる文章です。ゲームを知っている方ならわかると思いますがこれは地獄より復活した平景清の亡霊が、悪霊に取りつかれた源頼朝を討つべく鎌倉に向かうという、名作の多い80年代ナムコ作品の中でも屈指の作品として語り継がれています。

しかしこれ、CDを引っ張り出してきたのですが、古代日本の雰囲気が漂う名曲で、今でもかなり聴けます。
さて、最初の文章に戻りますと、これはラスボス頼朝を倒した瞬間に景清もまた桜吹雪となり散ってゆくという演出の後に流れます。そして倒したもの、倒されたもの両方がいなくなり、その後にこの文章が表示されるというまさに平家物語の『諸行無常』を感じさせる名演出です。
しかしこれ、最後の「故深谷正一氏に捧ぐ」が気になる方も多いと思われます。実はこの文章、ゲームの雰囲気の裏に、開発者のもうひとつの意味がこめられていると言われています。(現役でプレイされたプレイヤーでしたら、ご存じな方も多いでしょうが)

だいぶ前に『ドルアーガの塔』『ゼビウス』といった同じく80年代ナムコの黄金時代を作り上げてきた立役者の一人である遠藤雅伸氏が2chに降臨した時のコメントが参考になるので、それを参考にさせていただきます。(情報元:はてな「源平討魔伝」の項

まず、深谷正一氏というのはナムコの80年代の名プログラマで、『キング&バルーン』『スーパーパックマン』などをプログラムされた方で、遠藤雅伸氏らナムコのプログラマからは『神』とあがめられていたそうです。

しかし、残念なことに31歳の若さで急逝されてしまいます。それを惜しんだナムコの開発者は、各ゲームのエンディングに追悼のメッセージを残します。Wikipedia「深谷正一」の項によると『モトス』、そして遠藤氏の『イシターの復活』といったものですね。

で、それの中でも明確なのが上記の『源平討魔伝』です。

しかし最後の言葉だけではなく、どうやらこの文章全体的に開発者の追悼のコメントが隠されているらしいです。
それは、前述の通り深谷氏が「神」と言われていたところから「神は死んだ」は深谷氏の死去を示しています。そして対の「悪魔は去った」ですが、ナムコには「悪魔」と呼ばれていた天才プログラマがもう一人いたようです。それが『リブルラブル』の黒須一雄氏。しかしどうやらこの時には遠藤氏はゲームスタジオを設立し、そこに黒須氏も移られていることからナムコを退社していたと考えられます。
ということで「悪魔は去った」はナムコを退社した黒須氏と考えることが出来ます。

そして「神も悪魔も降り立たぬ荒野に我々はいる」。ナムコにすでにいない二人の天才についての開発者の郷愁のようにも見受けられませんか?

(以上参考:http://game.2ch.net/gamedev/kako/1006/10061/1006184421.htmlの370-372あたり)※リンク切れ

余談ですが、この時代、プログラマがゲームデザインのみならず音楽やドットまでも兼任することが多かったことを付け加えておきます。

やや類推解釈な点もありますが、少なくとも深谷氏に対する追悼の言葉は含まれているのでしょう。
ちなみに『源平討魔伝』の開発中にスタッフが亡くなったという話が流れることがありますが、遠藤氏によるとそれはデマのようです(源平とかかわっていない&時系列的に違う)。

さて、このように作り手の意思が作品内に暗喩として示されるということは、ゲームだけではなく他のマンガやアニメ、そして小説や映画にも見られます。というか、そっちのほうがゲームより多いですね。

ちょっと違いますけど、まだマンガをバリバリ書いていた頃の冨樫義博氏は、『幽遊白書』の仙水戦の時に思いっきり荒れてしまい、『オレ達は、もう飽きたんだ。お前らは、また別の敵を見つけ、戦い続けるがいい』という中に血の叫びが入っていたと連載終了後の同人誌で告白したと言います。(参考:大泉実成『消えたマンガ家』「冨樫義博」の項)
とはいっても、これは全てに暗喩を含まれていらん解釈をプレイヤーにさせてしまうので自制する、もしくは入れても誰も気づかない(もちろん気づかせない場合も多々あると思いますが)ってこともあるので、あとに関係者がそれについて述べないと出てこないってところはあるでしょう。

ちなみにこれ、源平討魔伝のように綺麗にきまればかっこいいコトこの上ないですが、暗喩がヘタだと意味のないものになるか、はたまたもとの作品の世界観を壊すことになるので、やるとしたらかなりレベルの高い挑戦になる気がしますね。というか、どうしても訴えたいことの想いが先にないとキツイ気がします。

GAME SOUND LEGENDS SERIESシリーズ「ナムコ・ゲーム・ミュージック VOL.1」
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