こんなニュースが。
■オリコン史上最悪の1週間、トップ20は2位以外全て歴代最低売上枚数!
これが、何故騒ぎとなるのか。それはオリコンウイークリーランキング(CDセールスランキング)というのものが、音楽市場においてそのまま順位につながるほどの広い範囲をカバーしていたからでしょう。すなわちここ数十年の間は、オリコンランキング、つまりCDの売り上げランキングというものは音楽セールスの面では圧倒的な範囲をカバーしていた、強力で最も説得力のあったランキングだったのです。その市場が落ちてきたということは、やはり全体の売り上げが落ちてきたように見えてしまうので、まるで全体が下がっているように見えてしまうのだと思います。
これはCDが昔より売れなくなってきたということを表してはいるでしょう。しかし、イコール音楽市場における売り上げ全体も著しく低下しているとは言えないはずです。実際、着うたフルは100万単位でダウンロードされている曲は最近でもあるようですし、iTunes Store等のDLサービスによる売り上げも数を伸ばしていると思われます。
ここで言えることは、CDのセールスランキングというものは今までと違って、市場の一部でのランキングしか表さなくなっているのではないか、ということです。実際、着うたランキングやiTunesランキングなんてのはありますしね。
ここからが本題。ならば、これからこういった音楽市場全体での売り上げ比較を行う際には、どこを参考にすればいいのか。その答えは「(今のところ)どこにもない」のではと思います。というのは、現在の市場はあまりにもその販売方法が多様化しすぎてしまっているから。
音楽の販売方法が昔のCD販売メインならば、今までのオリコンのようにだいたい正確な統計をとる方法はありました。そしてそれが長い間の指標となってきました。しかし、今ある着うたやDL販売ではまだその方法が構築されていないように思えます。というのは、着うたとひとくちで言っても、配信サイトが無数にあります。それはドワンゴだったり、music.jpだったり。さらにiTunesもありますね。
それらのサイトでも、一応売り上げのランキングは発表されてはいます。ですが、正確なダウンロード数を発表しているサイトはほとんどありません(皆無かも)。出ていてせいぜい今週とか今月のランキングくらいです。しかしこれでは違う週、違う月による比較は出来ません。
ならば、これら着うた、DLサイトにCDを加えた全部の数字を足したものをオリコンなり何なりが各社にデータを渡してもらって統計をとれば、正確な順位が出るじゃないか、と思われる方も多いでしょう。しかし、それは現状では完全なものを出すのは困難だと思われます。というのは、おそらくどの着うたサイトもDLサイトもその数字を出したがらないと予想されるからです。
前述のように、現在、着うたサイトもDLサイトも複数あります。しかし、そこでDL数を出すということは、曲の順位を比べる以前にそのサイトの順位までを格付けしてしまう可能性があるのです。例えばサイトAで1万DLがあったのに、サイトBで5000しかDLがなかったら、BはAに負けているということを発表してしまうことになりますよね。たとえ一般に非公開だとしても、その情報は会社の外に漏らすわけにはなかなかいかないでしょう。おそらくある商品における正確なDL数、販売数両方を把握できているのは、その曲を出したパブリッシャーくらいではないかと思います(もしくはJASRACも?)。
かといって個別のパブリッシャーに聞いても、ランキングを上にするために過大申告される可能性は大いにあるでしょう。
では、このように売り上げでの正確なランキングが不可能になった現在、ほかに人気を格付けする方法で有力なもの(リクエストとか)があるのかというと、どれも売り上げには説得力の面で劣るように思われます。となると、もう統一的な音楽のランク付けというのは不可能になった現在、音楽の総合的な人気を測るという点では、ランキング自体があまり意味をなさなくなっている可能性は高いのではないでしょうか。
たしかに今後携帯着うたのみがかつてのCDくらいに発展して、どこかの携帯サイトが1強になれば、そのランキングがランキングとして強力な基準となる可能性はありますが、今のところはその見込みはなさそうです(iTunesはDLのみでは1強の傾向はありますが、いかんせん参入しているアーティストがまだまだ少ないですし)。
となると、今後もう音楽の売り上げランキング、ひいては音楽の人気比較というものが意味を持たなくなってくるのではないでしょうか。そして場所ごとにちがう1位が映画の『全米第1位』みたいに濫立したりして。
でも私は別にいいんですけどね。何位だろうが自分が好きな曲を聞ければ。いや、案外現在でもランキング結果はあまり関係なく、好きな曲だけを聴く、という人がすでに大半になっているのかもしれません。
さて、これは音楽以上の話ですが、同じランキングが意味をなさなくなるということがこれからゲーム市場にも起こりえる可能性もあるかもしれません。