このようなものがあります。心臓の弱い方は閲覧を控えたほうがよいかもしれないですが。
■【閲覧注意】渡辺浩弐『2013年のゲーム・キッズ』第一回 謎と旅する女 Illustration/竹 | 最前線
■『2013年のゲーム・キッズ』渡辺浩弐 Illustration/竹 | 最前線 – フィクション・コミック・Webエンターテイメント
『~年のゲームキッズ』シリーズといえば、ご存じの方も多いでしょう。かつてゲーム雑誌『ファミ通』等に連載された渡辺浩弐氏のSF小説で、そのデジタルホラーとでも言うべき独特の世界で織りなす1ページ分のショートストーリーは、根強いファンを生み出し、いまだに語り継がれています。今回の上のリンク先のものも、これらの小説を知っている人なら「ああ、ゲームキッズらしいなあ」と思ったのではないでしょうか。ちなみに自分はそれに加えて、どことなく90年代の脅かし系サイトを思い出しました。
このシリーズ、たしかにデジタルが主な題材ではあるのですが、ゲーム雑誌の連載としては割と異質、と思われる方もいるでしょう。しかも、ファミ通と言えば今のものしか知らない人にとっては、こういうゲームと外れた、しかもコアな系統は扱わない雑誌のように思っている人も多いのではないかと。
ですが、このシリーズが連載されていた1990年代というのは、ファミ通、および前身のファミコン通信というのは、ゲーム雑誌全体においても、かなり革新的なほうだったと思われます。そして、それが故に私も毎週、もしかするとゲーム情報より楽しみしていて、買って読んでいたと思います。
個人的に思い出すそんなところをいくつか。
レビューで3点
今なお続くファミ通のレビュー、現在は点数のインフレかだいたい少し名前の知れたソフトはだいたいどのレビュワーも同じで、且つ7点8点揃いが多くてつまらないなんて意見を聞くこともありますが、当時は相当ばらつきがあったり、平気で5点4点がついていたりもしました。
特に厳しかったのは、TACOXさんというレビュワーで、4点、そして伝説の3点までたたき出したことで有名でした。でも、これがかえってレビューのおもしろさや信頼性をあげていました。
でも、3点なんてのを載せるのはその会社との問題もありますし、たやすいことではないのに、それをそのまま載せていた当時のファミ通もすごいなと。今後出る事はあるのかなあ……。
余談ですが、他紙では『セガサターンマガジン』において、池袋サラ氏が「2点」を出したことがあります。そしてそのソフトの名前は……『デスクリムゾン』(レビュー見出しは「これマジで出すんですか?」)。
■参考
『あんたっちゃぶる』『おとなのしくみ』
ファミ通では様々なマンガが連載されてきましたが、1990年代を代表する大きなものは鈴木みそさんの『あんたっちゃぶる』『おとなのしくみ』という業界ルポマンガでしょう。
当時インターネットもない世界ですから、ゲーム業界のことを知るのは雑誌程度しかありません。そういったところに入りこむルポを『バックアップ活用テクニック(後のゲームラボ)』ではなく、ファミ通がやっているところが驚きでした。今ではネットで入るような情報科もしれませんが、当時としてはメチャクチャ踏み込んでいるもので、作者コメントいわく、クレームがいくつも来て、某社とも本格的にモメたとのこと。
この時、鈴木みそ氏をファミ通に連れてきて、初代担当編集だったのが、浜村通信氏、後ファミ通編集長を経て現在のエンターブレイン社長だったりします。
衝撃の特集
特集もインタビューとか平凡なものではなく、かなり鋭いものがありました。
たとえば、前述の渡辺浩弐氏が渡辺効時というペンネームで書いてた『時効』というもので、文字通りゲーム業界のちょっと前に起きたヤバメの時効話の特集とか。あと『クソゲーのしくみ』という特集で、クソゲーはどうして生まれるのか、というのも解説していましたね(どっかにバックナンバーあるはずなので、見つけたら)。
これも今見るとネットの情報など先んじてるものがありますが、このあたり、特集を目的に買っていたことも何度もあります。インターネットのない時代、出版社がこう言う特集をするのはやはり大きかったのです。
コーナーのおもしろさ
当時のゲーム雑誌の読者コーナーは、その雑誌の性質を示すものが多かったですが、ファミ通は『ゲーム帝国』『ファミ通町内会』で不条理且つ大笑いできる独特のセンスの投稿が多く、コンビニで立ち読みしてても笑えるものでした。
投稿者の質ももちろんなんですけど、受け答えする編集者の人のセンスもかなりなものだったと思います。
まとめ
ほかにもありますが、とりあえずこのへんで。
ここではファミ通のことばかり書いていますが、90年代はけっこうこんなふうに攻めている雑誌がわりとあったのですよね。例えばソフトバンク系の『セガサターンマガジン』とかも、前述のデスクリムゾン2点とか読者レースとか、デザエモンで孫社長をラスボスにしてるシューティング作っていたりとか。ザプレでも『網走経験値』ってパロディシール作って怒られてたなあ。あと徳間書店のプレイステーションマガジンでは、旧スクウェアとのケンカや素材拒否の状況を誌上で書いてたりとか。
ところが、どうも2000年代に入ると、それらの革新的なものが見当たらなくなってきたように思うのですよね。それは何故かというのを考えると、メーカーと雑誌社の関係が固定してしまい危険な橋を渡らなくなった、個性のある情報はインターネットにいろいろあるため、たとえやっても目新しさがなくなった等の理由が考えられます。まあ単に自分がトシをとっただけかもしれないのですが。
まあこうして見ると、やっぱりファミ通他ゲーム雑誌というのに熱中して育ち、自分のゲーム知識やゲーム観を構成するの大きな役割を果たしてきたと思うのですよね。
これから先、雑誌か、それとも媒体が変わってネットや電子書籍になるかもしれませんが、ゲームが好きな人に影響を与え続けるようなものであってほしいと思います。ゲームをけなして語るとかデマとかそういうものではなく、真っ正面にゲームやその環境のおもしろさを助けるものとして。
ファミ通町内会<ファミ通町内会> (ファミ通Books)
※2012年11月9日に書いたブログエントリーを、2014年12月09日に加筆修正しました。