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『CARNIVAL』主題歌に見るアンバランスの効果

 もう発売から約7年が経ちますが、『CARNIVAL』という知る人ぞ知る18禁エロゲーがあります。さて、このゲームの内容、非常に深いものがあるのですが、それについてはすでにいくつものエロゲー系ブログで語られているのでここでは割愛することにします(ちなみにソフト自体も一時期プレミアがついていたようですが、現在はダウンロード版が発売されているようなので、18歳以上の人はやってみるのもよいかと)。

 

 で、このゲームのOPムービー、実は一部(ニコニコとか)で「OP詐欺」と言われています。lこう書くと、OPだけ豪華で作品はダメのように聞こえますが、前述のようにゲームは高い評価を受けています。何故そう言われるのかというと、あまりにもOPから受ける印象と実際の作風が違うので。

 ムービーを見ると、どのような明るい作品が始まるのだろうと思われるでしょうが、実際は相当シリアスな展開になってゆきます。特に児童虐待描写が出て来るのですが、ここでは胸が潰れそうになるくらい(余談ですが、個人的にこの作品を「幼なじみ作品の裏の最高レベル作品」と思っています。その裏の意味はエロという意味ではなくね)。……って、おっと、作品のことについて語らないつもりなのについ。ともかく、内容の暗さに反してあまりに明るいのですよね。

 

 さて、ここからが本題。これはオープニングの絵でそう見えるのですが、絵を見ずに曲だけ聴いても、そこまで暗い感じとは思わないでしょう。曲単体でもロック調のノリの良い曲で、わりと明るめに聞こえるのではないでしょうか。しかし、実はこの歌、歌詞をじっくり見ると決して明るいイメージではないことに気づきます。

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 かなり、暗さを暗喩するようなものが多く含まれています。しかし、実際曲にして聴くと、音調が非常に明るいので、そう思えない人も多いのではないでしょうか。ちなみに『CARNIVAL』にはもうひとつ、作品ムービーがあるのですが、これも画面はかなり暗いのですが、音楽から受ける印象は、暗くないのではないかと。

 言ってみれば、これはゲームの内容とオープニングがあっていないだけではなく、音楽の曲調と歌詞もあっていないのですよね。となると、これは失敗(音楽の発注ミスとか、作詞の制作ミスとか)か、という疑問がわいてきます。しかし、私はこれはわざとではないか、と考えます。
 このゲーム、言い方が難しいのですが、「安定していない」のですよね。これは出来が悪いという意味ではなく、話の進行が落ち着かない、という意味(これでも当を得ているとは思いませんが)。一応ギャルゲーアドベンチャーとしてきちんと話が進行しますが、書く登場人物が精神的に非常に深い者を抱えていて、プレイヤーの心をグラグラさせる感じなんですね。その、不安定な感じをオープニングでも演出したのではないか、と思うのです。つまり歌詞と音調をアンバランスにさせることによって、歌詞の意味に気づいた人間が音楽を聴くと、非常に落ち着かなくなる感じ。それがゲームを生かすために使われたのではないかと。これは偶然なのか、意図してのものなのかはわかりませんが、結果として非常にインパクトの残る曲になったと考えます。
 ちなみにゲーム中に使われるBGMも(milktubというのもあり)、ロック調のものが多く、かなり異質な感じがしますが、それが作品を効果的に「揺らしている」感じがします。

 でも最近は(私がエロゲーを近年殆どやってないというのもありますが)あまりこういうとがったOPを見なくなったなと。2000年代前半では、こういった実験的なオープニング曲はわりとあった気がするのですけどね。例えば『ジサツのための101の方法』の主題歌『ヒカリ』とか(機会があったらそのうち語らせてもらおうかと)。もちろん最近の曲が悪いとかつまらないというわけではありませんが、そういうとがりまくった曲も聴きたいなと。

 ちなみに『CARNIVAL』の曲はNANAさんが歌っているのですが、NANAさんのベストアルバムに収録されています(ほかにも収録されているCDはあるのだけど、どれもプレミアつきすぎ)。

 NANA/NANA

 

 で、最後に愚痴的追記。最近よく言われている表現規制ですが、懸念していることのひとつは、こういった児童虐待の悲惨さを伝えるための作品でさえ、表面的には児童を性的暴力に晒す某社が含まれるものですから、規制されてしまうという危険性を孕んでいると思うのですよね(しかもエロゲーという性質上特に)。何も描写で描かれる表現はそれを肯定するものばかりではなく、その行為を否定する感情をプレイヤーや読み手に与えるためのものもあるのですから。戦争映画が戦争を、暴力映画が暴力を否定するために作られることがあるように。

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