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ゲームにキャラクターボイスが付くことにより得たもの、そして失ったもの

 最近ではゲームのキャラクターにボイスが入るのは当たり前になってきました。RPGやシミュレーションとかだと一定のところしか入っていないのもありますが、アドベンチャーゲーム、とりわけギャルゲーでは声が入るのがほぼ当たり前になってきましたね。さて、今日はこのアドベンチャーゲーム(とりわけギャルゲー)のボイスを中心にしてのお話となります。
 キャラクターボイスが付くようになった一番の原因は、そうしないと売り上げ的にきつくなるからってのがあります(よっぽどのネームバリューを持っているものなら違いますが)。
 さて、ゲームに「キャラクターボイス」が導入されて得たものはまずその演出。つまり声があることで、華やかさが楽しさがぐっと引き立つようになったということ。しかし、それ以上に得ているものもあります。
 そのひとつとして、文字では表せない表現の使い分け。例えば「えっ?」とか「あっ…」といったような感嘆の言葉、これ、文字では一種類ですが、声で表現すると実に何十種類もあるのです。たとえば不安そうな「えっ.?」であったり、ちょっと驚きの「えっ?」、それにいぶかしがるような「えっ?」等、全部読みは違うのです。ちなみに声がないものではそれの感情をいちいち前後関係で表現していたのですよね。でも文章が悪いと、勘違いが起きたりということもありましたが、声だと明確となるでしょう。
 それに、本心で言っている台詞と、無理をして言っている台詞でも明確な違いを出せます。例えば主人公が他の女の子のデートに誘われたとき「いいじゃない、行ってきなよ」ってのも、前者と後者では文字は同じでも、読み方は全然違うでしょうし。余談ですが、これの読み分けをできるかどうかが、プロとアマチュアの声優さんの違いのひとつだと思ってます。
 
 さて、得たものがある以上、実は声を導入して失ったものもあると思います。それは「キャラクターの数」と「最終変更の余地」。
 ゲームを作るのは予算があります。そしてそれの一部をボイスに宛てるわけですが、当然、その予算は限られています。となると、その予算によって出せるキャラクターの数(ギャルゲーならヒロインその他女の子の数)が決まってしまうわけなのですよね。
 声がないと、絵さえあればかなり多くのキャラクターを出すことが出来ました。しかし声がある場合、(男ならともかく)そのキャラだけそのキャラだけ抜けているのも不自然ですので、それ以外のキャラ、とりわけ脇役的なキャラを最初から出せなくなっているのですよね。まあ超裏技として、同じ声優さんに別ボイスで読んでもらうという方法もありますけど、それも多用できないので限界がどうしても出てしまうのです。
 そしてもうひとつ、ボイスというのは収録が終わったらよほどのことがない限り撮り直しはききません。ですので、撮ったらそのままシナリオを使うことになります。しかし、最終的にボイスをはめた時、どうしても変更したい部分というのが出てきてしまうとします。しかし地の文ならなんとかなるにせよ、ボイスの当たっている部分に関しては修正は効かないのです。あるとしても削るくらい。ですので、使うかどうかわからないものまで保険として多めに収録することもあるそうです。まあ本当は、全部スクリプトを組んでからボイスを入れるのが理想なのですが、実際はそういうわけには時間的に無理な場合も多いでしょうし、仮にそうしてもボイスと場面の違和感があって変更したい部分もあるでしょうしね。
 そんなわけで、ゲームには声のつくことで得たものと同時に失ったものもあると思うのですね。小説やマンガとゲームとの違いはよく語られますが、自分で操作出来る(選択肢による)ことによる分岐(マルチエンディング)の他には、この「登場人物の制約」があると個人的に思っています。
 こう考えると、声がある、ないというのは一見素材の過不足に見えますけど、実はそうではなくて、表現方法の違いだと思うのですよね。
 実は、キャラクターボイスがある場合とない場合では、テキストの書き方が違うと思うのですね。というのは、前述の通りボイスがない場合は、「えっ…」とか「あっ…」という表現は声で判別できないので、それをどんなふうに言ったか、というのをそのボイス以外の部分で表現しなければいけません。すなわち「地の文」がその分多くなりがちです。文字として起こせば小説に近くなる感じでしょうか(もちろん絵表現とかもあるので、イコール小説ではないでしょうが)。しかし、ボイスがある場合も同じ文面であったら、その地の文が逆に「いちいちそんなこと言わんでも(声を聞けば)わかる」というように、冗長に鳴ってしまう場合もあります。よってそこを削ってスリム化したほうがよいでしょう。いってみれば、小説ではなくてドラマの脚本のような感じ。
 よく、声のないゲームを出して、あとから声ありとして売るパターンがありますが、おそらくは細かいところでそういった文章の調整も行われているのではないでしょうか(未確認ですが)。
 こう考えると、また「声がない」ことによって制約を払ったゲームがもっといろいろ出てきてもいいんじゃないか、ということも考えます。まあ、費用と時間はかかるにせよ、両方兼ね備えることが出来れば完璧なのですけどね。

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