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無許諾コンテンツDL違法化問題と法律の有名無実化の危険

こんなニュースが。

■“YouTubeなども” ネットでの「無許諾の音楽・映像」入手、自宅での個人利用でも違法に…“iPod課金”も検討 ※リンク切れ

たしかに私も違法にネットにあがっているものの対策は必要だとは思います(一応私もコンテンツ提供側に関係している人間なですし、作ったものがアップロードされて売り上げを圧迫すると食ってけなくなるし)。
ただ、今発表されている内容を見た限りでは、これを厳密適用するとその気がなくても踏み込んでしまった、何の意思もない人も罪人にしてしまうってことです。(法律の構成要件ではその違法DLをする意思が必要ってことになるかもしれませんが、それを証明する手段があるのかどうかは疑問です)

こういったことは、技術上可能なんですよね、それ。例えば「○○庁ホームページ入り口」と書かれているまったく関係ないURLを踏み、全然別のサイトに飛ばされそこでいきなりDLが始まってしまう、ってなことは、セキュリティレベルが低ければ全然可能です。いや、セキュリティが高くても、画像や音楽が流れただけで適用ならアウトでしょう。
まるで、海外に行ったときのうわさ話にあるような、警官ともめて賄賂を渡さなかったばっかりに、ポケットに麻薬入りの袋を入れられて、次の瞬間麻薬違法所持で逮捕されるみたいな話ですね。
つか、今の時点で報道されている範囲での話ですが、この法律、誰でも罪人にしてしまう可能性が高いのですよね。極論、これを制定した委員会の人も、ネットを使えばアウトということもあり得ます。
それに私が思うに、このままだと実は最初に意図していたはずの「違法コンテンツ対策」までも有名無実化してしまう気がするのです。
実はこの国の……というか、ほぼ歴史上の法律のほとんどは、文言通り厳密適用すると、社会に支障をきたします。例えばゴミ捨て場からものを拾って自宅で使うという地球に優しいリサイクル、これを法律の文面通り超厳密に適用すると占有離脱物横領罪(刑法254条)というのに引っかかる可能性があるのです。ただ、超厳密に言い出したら路上のゴミをひろうのでさえ違法になります。ですので違法性がある場合を除いて(今だと古紙を勝手に集積場から持って行ってしまうとかね)逮捕などされないことが多いと思います。
まあただ、12年前のオウム事件時に、これを使った別件逮捕って手段があったのですけどね。まああれは事件の規模の重大さ故の特殊事例だったとは思いますが。
ただ、それでも当時法学部生だったのですがこれについての授業ってのがあったりと、法律家方面では是非について話題になりました。
他にも、条文を適用すればそうだけど、有名無実化しているものってのはたくさんあります。
あと余談ですが、これで六法全書のあちこちを見ていたのですが、軽犯罪法1条22項において「こじきをし、又はこじきをさせた者」っていうことで、「こじき」は法律用語なんですな。だけどマスコミでは放送自粛用語となっているんだなあ……
そんなふうに、あまりにも適用範囲が広くて処理が出来ない、且つそれの緊急性が薄い場合有名無実化するとしたら、このDLの例もそうなってしまうのではないでしょうか。何せ、厳密適用すればネットユーザーのほとんどが犯罪予備軍になってしまうのですから。
となると、本来著作権者の権利を守るためのものだった法律が、その著作権者までも苦しめてしまう可能性もあり得るのではないかと思うのです。それは、流通を阻害するとかの問題もありますが、それ以上に前者の例で多くの人が開き直ってしまった場合どうなるのか、ということです。最悪の場合、今まで違法になっていてやる人がいなかったアップロードさえも、「どうせいダウンしても違法なら、アップしても……」と同じコトをやる人が逆に増えはしないかと。
そしてある時、逮捕者が出ると前者みたいに「なんでこんな有名無実化した法律で逮捕をするんだ! これは公権力の横暴(ry」と騒ぎになると。
そしてなんか、政府や議員のサイトでうっかりフリーではない画像やフォントが使われていたり、政府系の文章で歌詞が引用されていただけで祭りになりそうな気がします。現実的に、そんな細かいところまでフォローできるはずないですからねえ……
果ては、現在一応違法と決められているところまで、暗黙的合法にされてしまう可能性も否定できないということです。現在は法律がないことでそうなりかけていますが、逆に法律の制定を間違えると、そうなることもあり得るということです。
つか、まず狙うのはその意思が明確な違法アップロード(例えばゲームソフトとかアプリケーション)を規制することから確実にだと思うのですけどね。イタチごっこになるのは覚悟の上で、技術の発展と共にあわせてそこだけに適用する法律を作っていかないと、結局自己矛盾で有名無実化するのでは?というのが私の考えです。
ちなみに話題になっているYouTubeなどの動画配信サイトコンテンツについては、明らかなクロからグレー、そしてシロが混在しているので、一概には言えないと思います(正直アニメそのままとかCDそのままアップロードってのは著作権者から訴えられれば完全アウトだと思います)。ただ、この法律だとほとんどをクロにしてしまう可能性が高いのですよね。
しかしいつも思うんですけど何である問題に対して法律を適用しようとする時、やけに範囲を拡大して本来の主旨とは違うものを入れようとして、結局グダグダになるか問題をはらんでしまう事例があまりにも多すぎる気がします。最近もPSE法というのがありましたね。まあれも安全的な主旨はいいとして、あまりにも周辺考慮が足りなかったというか。
私も法律のプロではないのでたいしたことは言えませんが、どうもこういうところの人って法律の基本が素人の私よりもわかっていないような気がしてなりません。

法というものは一方的な武器ではなくて「諸刃の剣」なのですから。

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