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セカンドライフの経済は破綻する性質を持っているのか?

何かとその周辺の方が話題の『セカンドライフ』ですが、先日、銀行が破綻したそうです。

『Second Life』の銀行破綻:「無法空間」での規制とは « WIRED.jp

しかしこれを見て、いくつかの疑問が湧いてきました。

そもそも、銀行が破綻するというのはもし現実社会なら大事件です。しかし、記事を見る限りは監督、透明性、説明責任の強化を求める声はありますが、実際に銀行の営業停止に関して運営元であるリンデンラボが動いた形跡はありません。

もしこれが現実なら、破綻する前に国がそれを阻止するはずです。なぜなら破綻したら、いや、実際に破綻しなくても「○○銀行が危ない」という噂が流れただけで、取り付け騒ぎに発展した上に、その動きが他の銀行にも波及して経済的な大混乱が起きることは間違いないからです。だから10年前くらいに破綻した銀行も、国が受け皿になって国民の血税を使用してまで再生させたのですね。

さて、セカンドライフ内でも同じようにこの銀行破綻によって、銀行への信用はかなり下がるはずです。しかし何故それならば同じようにこの銀行破綻に対してリンデンラボは何も介入しないのでしょうか。

考えられることはいくつもありますが、まず一番は「銀行と名乗っているけどこれ、銀行じゃないでしょ」ということ。

 

銀行というのは経済の根幹となり、信用低下は経済の混乱につながるわけですから、現実では数々の法律によって規制がかけられたり、お上によって統制がとられたりしています。しかし、このセカンドライフ内の銀行はそのような法律の統制下になく、金を集めて高い利回りを約束していたということです。だけどこれ、現実に置き換えると銀行じゃなくて投資信託会社ですよね。しかも活動実態がよくわからないのに預金に対して60%の利回りを約束って、現実だったらまず投資詐欺と思ってよいでしょう。

つまりこれは「銀行の破綻」なんてものじゃなくて、「投資詐欺」なんじゃないかと(あくまで現時点での推定ですが)。しかし破綻したからといって、それを律する法律も、債権処理をする方法もないと。

 

そんなことを考えているうち、『現実と同じ経済活動が行える』というのを売りのひとつにしているセカンドライフは、全然現実には及ばないのではないかというふうに思えてきました。そして突き詰めてゆくと、このセカンドライフの経済というのは、破綻を前提に出来ているのではないかとも思えてきました。以下にその理由を書きます。

まず、セカンドライフでは現実の金と仮装通貨(リンデンドル、以下L$)の交換が出来る、すなわちリアルマネートレード(RMT)が出来るのが主な特徴です(日本円では直接は不可能みたいですが)。そして現実のようにL$のレートも変化しています。ですがこれ、中央銀行の担い手がL$だとするとそこですでにL$の価値が上がることはないように思えます。

もし、L$の価値が今より上がってしまったら、もし現金への引き替えを求められた時、それだけ現実のお金(ドル)を用意しなければいけませんが、一会社の経営的に考えればこれはしたくないでしょう。もし価値が上がって、L$の購入時より価値が上がったら、総じてL$売りになるはずです。となるとリンデンラボには大打撃ですし、その時点で、いやその前からL$相場は上がらないはずです。というか、経済を混乱させない範囲でなければ、L$の価値が下がった方がリンデンラボは特なんですよね。

というわけで、セカンドライフの経済というのは、貨幣価値が下がることが前提の世界なのではないでしょうか。貨幣価値が上がる可能性がないってことはそのまま価値低下に繋がり、連鎖的にインフレになる可能性が高いってことで、そのまま物価上昇につながり、経済が混乱する可能性が高いのではないかと。

現実では中央銀行(日本では日銀)はこんな損得は考えずに、自国経済の安定のためなら、資金(税金)を適宜、可能範囲内で投入します。というかそういうための中央銀行ですし。

 

となると、セカンドライフの経済というのは、このようにインフレ→経済破綻が将来的に起こる可能性が高いしくみとなっていると思うのですね。更に言えば偽札(不正操作)もあるみたいですし。

それでも現在のところ、たいして問題になっていないで、正常に経済が動いているのは何故か。それは簡単で、「経済活動に積極的に参加している人がほとんどいないから」ではないでしょうか。現実世界ならば、衣食住が必須ですので自給自足でもない限りは必ずそれらの物品を購入するという経済活動が必要になります。しかしセカンドライフではそのような行為は必要ありません。ただ歩き回って一銭も使わなくても生活できます。(それが面白いかどうかは置いておくとして)故に、前述の銀行破綻にしても、現実ならば生活と密接な関係にある銀行も、セカンドライフでは銀行使用者自体がごくごく一部であったために騒ぎにならなかったのではないかと。

つまりセカンドライフの経済圏ってのは現実の経済圏には及びもつかない、せいぜい学園祭の入り口で各模擬店とかで使える食券を買うシステム(なつかしいなあ……)かフリーマーケットレベル、譲歩しても地域限定通貨程度のものなんですよね。そもそも経済の根幹となる銀行の周辺自体が整備されていないのですから、そうなるのも当然でしょう。

 

ま、そもそのセカンドライフも遊びなので、それが普通だとは思います。『現実と同じ経済活動が行える』ってのは、「現実の学園祭」くらいに思っておいた方がよいでしょうね。そんなわけで、経済的な破綻の心配は当分ないと思います。まあ将来的に人口が増えれば話は変わってきますが、そこまで人が集まるかどうかは非常に疑問ですけど。

さて、今回はじめて『セカンドライフ』について触れてみたわけですが、なかなかこういった視点で見るのは面白いですね。

 

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