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何故、PCゲーム市場はPC普及に比例して拡大しなかったのか

かつて、それこそWindowsなんてものがまだ隆盛を誇る前の時代で、NECのPC-○○シリーズやFM-TOWNSが隆盛を誇っていた時代、パソコンはスペックが今の何百分の1、ことによると何千分の分の1だったにもかかわらず、値段は今よりも高価で最低でも1台20万以上するものでした。(MSXはちょっと違うけど)
その値段故か一般家庭には今みたいに普及せず、パソコンは一部の人の贅沢な品、という風潮がありました。
しかし、そんな時代にもパソコンゲームなるものは存在しました。それはPC-88や98で、アドベンチャーからアクション、シューティング、そしてRPGと様々なものがリリースされ、今でも語られる名作として残っています。特に日本ファルコムの『イース』や『ソーサリアン』などは超有名ですね。他にも当時の有力メーカーや名作を挙げればきりがありません。
さて、そういったパソコンソフトは一応広まりを見せたものの、やはり台数的な面ではファミコン以降は家庭用ゲーム専用機にはかなわず、そちらほどの大きな市場となることはありませんでした。
そしてDOS/V機へと時代が移り変わり現在、パソコンゲームの市場というものは、コンシューマーに比べるとかなり小さいものになってしまいました。というか、昔のとかコンシューマゲームの移植を除いてはほとんど美少女ゲームのシェアになっていますね。
(余談ですが最近はDOS/V機とかAT互換機なんて言葉を全然使わなくなったなあ……あとNXシリーズっていつのまにかなくなったし)
さて、ここで出てくる疑問は、何故、パソコンゲーム市場はここまでパソコンが普及した現在においても、コンシューマ市場のように大きなものにはならなかったのか、というものです。
もちろん今でも日本ファルコムの『イース・オリジン』ようなソフトや洋ゲーなどが数多く出ており一定の市場はあるのですけど、パソコンの普及率に比例するくらいPCゲーム人口は増えているというわけでもないみたいですね。(ネットゲーを入れると、ある程度は増えるとは思いますけど)
今日はちょっとそこについて考えてみました。
一番の要因は、「市場がゲームの歴史的にそういう流れで固定してしまったから」のように思えます。つまり、すでに一般的な消費者の大多数の認識では、「ゲームはゲーム機でするもの」という一般的な認識が、たとえパソコンが5万程度で手に入り、多くの家庭にあるような状態になってもそれを「ゲーム機」として見ることのできるユーザーは、その普及数ほどはいなかったのではないでしょうか。(もしかしたらPCゲーム=美少女ゲームとして見ている人もいるかも?)
ちなみにアメリカでは日本よりはPCゲームが盛んみたいですが、それは「ゲームをPCでやる」というのに対しての抵抗感が日本よりも少ないからかもしれません。
また、パソコンでは設定やインストールなどの作業が必要というのも挙げられると思います。
たしかにパソコンに詳しい人間ならば、インストールは造作もないことですが、世の中にはたとえパソコンを持っていてもインストールでさえ一苦労という人が存在します。それも意外と多く。そういう人たちにとっては、ソフトを入れればすぐゲームというコンシューマ機から、わざわざパソコンゲームをする可能性は低いでしょう。
ちなみに同じ理由で、コンシューマでもHDDのへのインストールが必要なものというのは、ライトユーザーには受けにくいと思っています。
さて、前述のものは主にユーザーサイドの「買わない」故の市場が発展しなかった理由ですが、もう片方には、メーカーがゲームをそれほど「リリースしない」故に市場が大きくならなかったというのがあると思います。それは前述の理由によりユーザーが多くならないことが大きな理由ですが、他にもまだ理由ががあると思います。それが「ハードの非統一問題」。
実は私は昔デバッグのバイトをしていたことがあるのですが、そこではコンシューマゲームの他にパソコンのゲームもデバッグしました。
で、コンシューマゲームの場合、そのゲーム機のデバッグ機1種類だけですればOKでした。
それは当然ユーザーもそのゲームのハードと同じものしか持っていないのですから。
しかしながら、パソコンゲームをデバッグするときは、1つのパソコンだけでデバッグしただけではダメでした。というのはパソコンソフトのデバッグでは、「機種固有」というバグが出てくることがあるのですよ。原因はそれに使われているパーツとの相性だったり、それにプリインストールされているソフトとの相性だったり色々ですが。あと一番多かったのは、やはりOSのバージョン違いによるエラーでしたね。特にMeには……
そんなわけで、会社中から色々なメーカーのパソコンをかき集めて、場合によっては別の仕事用のを貸してもらったりしてテストをしてました。
このようにパソコンのソフトを出す場合、ユーザー側ではハードが何種類も出来てしまうわけで、それらに対応する必要があるのです。しかしこれだけテストしても完全には対応できません。それこそ一度使ったパソコンなら、状態が全く同じなんてことはまずあり得ないのですから。
そしてバグではなくても、メモリやグラボの性能が違うだけで、ゲームの操作感覚が違うわけですので、開発者が想定していたものと異なる可能性だってあるわけです。
ちなみに自作パソコンがサポート対象外というのは、それを加えると通り数が万ではきかなくなってしまうので、「そこまでの可能性に対してとても対応できないから」というのが主な理由だったりすると思います。
現在出ているパソコンゲームでレトロな復刻が多いのは、古いゲームならそういったスペック問題をある程度クリアできるからかもしれません。(少なくともグラボ性能やメモリはそんな必要ないし)
更に美少女ゲームの場合は、現在ほとんどの製品がアドベンチャーで、そういったものだと形式が表示画面+ウインドウ+α(動画とか)と必要な動作がだいたい決まっており、機種が違っても大きく異なる可能性が少ないため、パソコンでも安心して出せるのでしょう。(もちろん演出とか動作とかで例外はありますが)
そんなわけで、たとえコンシューマでは出せるゲームでもパソコンソフトとして出てこないのは、こんなふうに「相手側の環境が(コンシューマゲーム機と違って)想定できない」からというのも有力だと思うのです。
まあそれでもこれから先、もしかしたらそういった問題を極力無くす取り組みがOSなどで成されれば、PCでもコンシューマと同じようなソフトがどんどん出るかもしれません。(まあそれをやったらハードが売れなくなる=現在のビジネスモデルであるハード会社としての取り分がなくなるから、やるとしてもOSを売るためにマイクロソフトがするくらいかなあ)
さて、コンシューマーゲーム機では、これらのようなユーザー毎のハード環境の差異はないので安心してどのユーザーにも同じ環境を想定してゲームが作れる……はずでした。しかし、昔はともかく今考えてみると、どうやらそうでもなさそうです。
長くなったので、それはまた次回に。

 

★追記(4/10)

考えてみると「そのユーザーにも出来るようにスペックを抑えたタイプ」と、「もう一部のユーザーだけと割り切って、高スペックが必要なゲーム」の2種類に分けられるような気がしました。前者が復刻ゲームシリーズみたいなもの、後者が3Dシューティングみたいなものですね。

美少女ゲームの場合は、スペック的な面から見ると前者ですね。「美少女ゲームにはゲーム性的に発展しているものが少ない」という声がありますが、そういう事情故、多くのユーザーになってもらうためにはあまり大きく変化できないという事情もあると思います。(もちろん例外もありますけど)

 

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