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ゲームにおけるリピート生産の幻想

SFCから次世代機への移行期、PS、SS陣営からCD媒体の利点として様々なものがアピールされ、それがよくゲーム雑誌などに載っていました。一番大きなものは「大容量化」と「ソフトが安価になる」というところだったでしょう。

さらに「即時のリピート生産が可能になる」というものも挙げられていました。

 

たしかにROM媒体の時代、初回に作った数が需要に追いつかなくて追加発注を受けても、そこから製造するのに時間がかかるので、結局リピート発注に応えて再出荷するあたりでは商機を逃してしまい、店の不良在庫(ワゴン行き)となる現象が存在していました。しかし、即時の再生産が可能なCD媒体では、リピート発注に即対応出来、商機を逃さないうちに出荷できるという、小売店にとってはかなりメリットのあるものでした。

実はこれ、メーカーにとっても再注文を見越して初回発注からどれだけ多めにソフトを作っておくかに悩まされてないで済む、という利点がありました。初回発注数からもし全然売れなければ、余計に作った分は余剰在庫(それを保管しておく倉庫代もかかる)、少なければ機会損失となるからですが、リピートがすぐできれば、それらのリスクは軽減されるからです。

ちなみにそれまでは金曜発売が慣例だったソフトの発売日を木曜にしたのは、木曜に品が切れてその日に店がリピート注文をしたら土曜までには届くので、重要な商機である発売後の土日を逃さなくてすむから、という説明がされていたというのを記憶しています。

 
たしかにROM媒体に比べて、CDをリピート生産するほうがはるかに早いですが、現実は前述のように完璧にはいきませんでした。というのは、ソフト本体がいくら高速に生産できても、パッケージ(の紙)やマニュアルはやはり印刷に時間がかかるので、その分待っているか、もしくはあらかじめ作っておかなければならなかったのです。たかが紙とはいえ、これらも万単位で作ればかなりの金額がかかりますので、作りすぎるわけにもいかないので結局リピートに枷がかかることになります。

さらに現在よくあるように、普通のPケースではない特殊な箱だったり、特典のグッズがつく場合、それの分生産に時間がかかります。当然それらもリピートの枷となります。(故に、初回限定というのは、販促以外でメーカーにも一応言い分があるのですね)

それでもROMよりも早く増産することが出来るCD媒体、完璧とは言わないまでもある程度のリピート対応は出来るはずでした。

 

しかしながら、現在そういったリピート生産が頻繁に行われている、と言われれば、おそらく答えは「NO」ではないでしょうか。

さすがに全てのデータはないので確証は持てませんが、再注文されてものをすぐに生産して、そのまま次の日に出荷というようなシステムはごく少数のような気がするのです。

とはいっても、もちろんリピート注文→再出荷という流れ自体は頻繁にあります。しかしそれはあらかじめ初回に多めに作っておいた枚数を倉庫から出しているといったような、ROM時代に行われていたものと同じ性質のものが多いように思えるのです。それが証拠に追加発注で「初回限定版」が来るという話をかなり聞きます。さらには「初回限定版」しかないソフトなんてのもわりと見ますし。

ちなみにこのストックがなくなれば、理想通りならばリピート生産が行われれるはずですがそうはならず「在庫なし(生産終了)」となってしまったことってありませんか?(これは店の人がわかると思いますが)

 

何故そうなってしまったのか、というのを考えてみたのですが、そもそも最初に提案されていたリピートシステム自体、あの時代の背景で考慮されていたものではなかったのではないかと思うのです。

SFC~PS初期の頃、どんなソフトでも万単位で売れるのは珍しくありませんでした。それ故に、リピートというのもおそらく「30万売れるソフトを15万しか出荷しなかった。故に15万リピート」みたいに、万単位の数を増産することを想定したものであったのではないでしょうか。CDでも再生産するためにはそれなりのコストがかかります。そもそもラインを確保しておかなければ、プレス出来ませんし。

 

しかし、リピートがあっても有る一定の枚数に満たない場合、利益が原価を割ってしまいます。例えば「リピートが1000枚来た」くらいなら、そのまま「生産終了」としてしまうところもあるのではないでしょうか。(1000枚という数字はかなりいいかげんです)

もちろん多めに作ってさらなるリピートに備える場合も多いでしょうが。(まあ500枚くらいなら、初回にあらかじめ検品対応分とかで余分に作っているでしょうけど)

しかし現在、昔ならばリピート分くらいでしかなかった数万単位でも売れればヒット作となってしまいます。となるとそんな縮小した市場ではリピート枚数はもっと小さくなるので、結局前述のように最初に多めに作っておいたほうがコストがかからずにすむのではないかと。まあ予想をはるかに超える売り上げがあった場合は別ですが、現在そんなソフトが何本あるかは微妙です。

まあ最近でも初回の供給不足でリピートが行われていたらしい例があるのですけどね。それがNintendoDSの『FINAL FANTASY III』。まあソフトがCDではなくてフラッシュメモリですので、リピートするまでにかなり時間かかってしまったという皮肉な現象が起きてしまいましたが。

 

そんなわけで、現在ではリピート生産ってものはゲーム販売の一連の流れにおける工程ではなく、例外的な処理になっているのではないでしょうかと思うわけです。

まあプラスに取れば、リピート発注ってのは需要と発注の読み違いから起こるものですから、それがデータの集積と経験によってなくなってきた、と見ることも出来ますけどね。

さて今回、何を言いたかったのかというと「いつまでも商品が(新品)市場にあると思うな」ってことです。それはゲームだけには限らず。

というのも、今日のエントリーはゲームサントラのことを書いていて派生したものだったのですよ。それについてはまたまとまり次第。

 

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