スポンサーリンク

1990年代末あたりでのPCゲーム音楽における現在への影響

 こんなエントリーがありました。

 ■リアルアイドルマスターやってたけど質問ある? 働くモノニュース : 人生VIP職人ブログwww

 まとめブログではよくある業界人への質問シリーズですが、ここでちょっと印象に残ったことが。

45 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/17(土) 17:09:41.66 ID:MuU4s2S9O
I’veという主にエロゲ専門の音楽製作集団があるんだが、
インディーズの頃はブランドで曲買ってたな
エロゲはやらないけど曲は知ってた

>>45
アイブやエレガはとてもいい部分を狙ったブランドだと思います。
特にアイブはそれまで汚れ仕事でしかなかったアダルトゲームの作曲を
ブランドまで昇華させた功績は大きいと思います。
わたしも好きですよ。

 この部分。たしかに納得したので、もうちょっと突っ込んで書いてみようと思います。

 
 PC18禁ゲーム、いわゆるエロゲ-自体は1980年代からあり、それには音楽もついていました。しかしそれの音楽に注目されたっていうのは、かなり後と思われます。
 これは理由があり、当時パソコンのサウンドボードは必須ではなく、音を聴きたい人のオプション的な扱いだったのですよね。これは今のようにWEBなりで鳴らすのではなく、ハードの音源で鳴らしていたため(当時はスペック表にサウンドボードの細かい推奨も書いてあった)。よって、注目されるにはちょっと状況が悪かったと。
 さらにコンシューマ、アーケードも含めて、ゲームの音楽に注目する人がまだごく少数派だったというのもあるでしょう(まあBGM系は今でも似たようなものかもしれませんが)。
 ちなみに当時はプログラマが作曲を担当していることもわりとあったようです(このあたり大昔のコンシューマの歴史と同じかも)。

 たしかに90年代真ん中あたりから『EVE』の梅本竜氏など、ゲーム音楽好きの人に人気があった作曲者というのはいましたが、それはただでさえ狭かったPCゲームユーザーでも、かなり限られた範囲の人でした。というか、今考えるとこのあたりのPCエロゲ-ゲーム音楽ファンは、一般PCゲームのファン、つまり古代祐三さんや崎元仁さんとかが好きな人や、コンシューマのゲーム音楽ファンと重なっているようにも思えます。なんというか、ゲーム音楽ファンの中のPCユーザーが、その対象だったのかと。

 しかし、Win95?Win98時代あたりでその変化が起きます。まず、Win時代になるとゲームの音源がCD-DAに変化してゆき、ハードの制約が緩くなります。そして多くの人に聴かれるようになります。
 そこで登場したのが、「Leaf」のLVNSシリーズ3作。これらはゲームの内容と同時に音楽も高く評価され、だんだんと注目を浴びてきます。さらに『ONE』が発売され、ここでも音楽が注目を集めてゆきます。そしてそれら以外でもアリスソフトの『アトラク=ナクア』等、いろいろなゲームにおいて、その音楽的な価値が見直されることとなるのです。

 このあたりでの主な影響を列挙してみます。

★主題歌&オープニングがディフォルトにになる
 97?98年当時のゲームって、オープニングがないほうが多数派だったのですよ。せいぜい一枚絵表示とか、数秒で終わるものとか。オープニングってより、タイトル画面の延長みたいなものですね(『雫』『痕』や『ONE』にもなかった)。
 しかし、『ToHeart』以来、その注目性が高くなり、どんどんボーカル入りのオープニング主題歌が多くなります(当時はスクリプトでの絵表示)。
 ちなみにもうちょっと経つと、オープニングムービーがディフォルトになってゆきます。

★二次創作音楽の隆盛
 この当時、これらのゲームの音楽に惹かれたユーザーは、DTMでそれらの作品の二次創作を行い、同人音楽として発表したり、または自分のサイトでmidiとして公開していたりしました。
 これは、これらのブランドの多くが、趣味の範囲内でなら二次創作を容認していたことも影響しているでしょう(当時midi事件とかいろいろあって著作権意識にはどの作曲者も敏感だった)。
 ちなみに人気があったのは、Leaf,Key(Tactics)の他に、アリスソフト(とりわけ『アトラク=ナクア』)などですかね。
 その中から、現在プロとなってゲーム音楽の作曲をしている人も多数存在します。

★作曲者への注目
 今まではごく一部しか注目してなかったような作曲スタッフに注目が集まるようになります。特に人気の2ブランドで活躍した折戸伸治氏の影響は大きかったように思えます。

 このような変化が起きてきますが、極めつけがその主題歌の音楽的注目度が上がっていったこと。その中心となったのが「I’ve」なのです。
 最初のリンク先でも書いてありますが、この当時、エロゲーの主題歌の仕事というのはあくまで裏稼業的な側面が強く、バイトとか匿名的なものが多かったですが、このI’veの人気が非常に出たことにより、このエロゲーの主題歌というものが逆に歌い手としてそれなりに知名度を上げるものとなったのです。そして今では数々の歌い手存在するようになりました。中にはメジャーデビューしたら、アニメなど他のジャンルでの歌い手も増えています。

 もちろん社会的にこのような音楽が広まり、隠す必要がなくなっていったという変化もありますが、最初にその道を大きく切り開いたI’veの功績は大きいと思うのです。

 ちなみにこれを書いている時、ゲーム音楽のBGM的歴史とボーカル的歴史の違いについても思い浮かんだのですが、それはまとまったら本家かこっちのどっちかで書きます。

タイトルとURLをコピーしました